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第16話 困った山賊さんたち

 これまでの旅路を振り返ってみましょう。

 レンくんとランちゃんは壊滅した村に立ち寄り、村長さんを救助。その途中でやってきたタルムさんの言葉に従って山賊さんたちのアジトへ向かう。

 そして、ゴブリンに襲われてる最中の山賊さんのアジトを助けて……まぁ、なんやかんやで山賊さんたちを捕まえて街へ向かっている途中なわけなんですけどね。

 うぅん、私としては今回のことは二人にとって中々良い経験になったと思うのですよ。

 私の目論見通り、最初の相手はゴブリンになったわけですし。

 強敵との戦いも経験できたわけですし。

 二人も荒事に対する心構えが少し付いたと思うんですよ。

 だから、よかったと思うんです。

 二人は成長できた。

 ええ、それはまぁ良かったのですけどね。


「うわああああああっ!旦那ぁあああああっ!助けてくれぇええええっ!」


「っ!分かったっ!今行っ……? あのヨナバさん、これ、ただの蝶々だけど」


「え?おぉ、ビビったぁ……いきなり視界に入ってきたから叫んじまったぜ~。助かったぜ、旦那」


「えと……僕、何もしてないけど」

 

 釈然としない様子で元の位置に戻っていく。

 山賊さんたちが並ぶ最後尾ですね。

 ちなみに一番前にはランちゃんが居て、また面倒くさそうに溜息を吐いています。

 どうも、山賊さんたちアジトで襲われたのが大きな心の傷になってしまったみたいで、ちょっとのことで怯えるようになってしまったみたいなんですよね……

 そんなわけでさっきから何度か前と後ろで位置を入れ替えて、引率をしながら進んでるわけです。

 さっきまではランちゃんが最後尾に居て、何かがあった時には対処してレンくんが前で引率をしていたわけです。

 何回も叫ばれるから二人ともずっと同じ役回りだと疲れてしまうんでしょうね。こうして交代を繰り返して、頑張っているというわけです。


「……まったく、あんたたち情けないわね。山賊やってたんじゃないの? もうちょっと頑張れないの?」


「そうは言いますがね、姐さんっ!俺たち、もう怖いのは懲り懲りなんですわっ!」


「そうそ~う! 罪を償って堅気になって平穏無事に暮らすんですぜっ!」


「戦いとかそんな……野蛮なことはあっしたちに期待しないでくだせぇ。お花でも見てる方がよっぽど性に合ってますぜ」


「あんたたちね……」


 頭痛を堪えるように頭を抱える。

 後ろではレンくんも苦笑いをしていますよ。

 ふぅむ、アジトでのときのことと比べれば随分と穏やかな人達になりましたね。

 誰も彼も、人の痛みなどを気に留めずに武器を振るうことを厭わないような顔つきだったというのに。

 今となっては、虫ですら驚く有様ですからね。

 でも、まぁ、やはり山賊ではあるみたいで根っこの部分はどうにも変わっていないみたいなんですよねぇ


「ふぃ~、汗かいちまいましたわい。旦那っ、姐さん!ここいらで休憩して水浴びといきましょうやっ!」


「おっ、いいな~!ちょうど腹も減ってきた頃ですし、飯もどうですかい?俺ら大人しく待ってますんで、何か取ってきてくだせぇ」


「おっ!俺、鳥肉が食いてぇっす!」


 やいのやいのと食べ物の要求が始まりましたよ。

 うぅん、何とも図々しい。

 このあたりはやはり変わっていない様子ですね。

 心の底は山賊のままです。


「チッ……おい、てめぇらっ!俺たちが要求できる立場だと思ってんのかっ!?俺たちは犯罪者として連行されてんだぞっ!ちっとは自覚を持てっ!」


「え~、でも頭~?あっしらだって立派な人間なんすよ~?捕まえられて好きに動くことが出来ない以上は捕まえてる側にお願いすんのは当たり前じゃねぇですか~」


「そうそう、俺らはそうだったよね。攫った子供たちが甘いものが食べたいって言うから頑張ったもんだよなぁ?」


「ああ、まったくだ。同じことをしてもバチはあたんねぇよなぁ?」


「……そうね。でも受け入れるかどうかは別よね」


「「「そんなぁ、姐さ~ん!」」」


 縋るような声を無視してランちゃんが前へと進んでいく。

 さっきからずっとこの調子ではありますからね。

 いい加減慣れたんでしょう。

 レンくんも苦笑いするだけで何も言いません。

 何かが襲って来れば大声で助けを求め、疲れたりお腹が減ったら休憩や食事をせがんで……なんともまぁ自由気ままな方たちですよ。

 人を連れ歩くのも大変だということを学ぶには良い機会だとでも思っておけばよいのでしょうかね?


「あ、はは、ほらもうちょっとだから頑張って。少し開けたところに出たら休憩にするから」


「おぅ……かたじけねぇな、旦那。俺が女だったら惚れてたぜぇ」


「あぁ、うん……そう」


 ついでに調子のいいことも言いますからね。

 かなり反応に困ってる様子ではありますね。

 頑張って、レンくん。


 ゴブゴブゴブッ!


「っ!ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!ゴブリン!」


「な、なんだって~!?い、いやだぁ、俺は、俺はっ!」


「あわ、あわわわわわわわわっ」


 ちょっと離れた位置にゴブリンが現れました。

 数匹、ですね。

 ここまで来るのにはそこそこ時間がかかる距離ではありますね。

 ですが、声が聞こえただけで山賊さんたちは恐慌状態に陥りました。

 無理もない、とは言えますがね。

 ちょっと前にゴブリンに殺されかけたのですからね。

 紐で一直線に繋がれているというのに、個々人が思い思いに逃げ出そうとして場が混乱に陥る。

 その状態でも前に居るランちゃんは特に取り乱すことなく、ゴブリンたちの方へその手を向けました。


「邪魔よ」


 風の刃がまっすぐに飛んでいく。

 それだけでゴブリンの声が途絶えて、姿が見えなくなりました。

 今の一撃で全て両断したんですね。

 スタンピードでもない限りゴブリンの脅威というのはそれほどでもないので特におかしくもない光景ではありますね。


「お、おおおおおおおっ!流石は姐さんだっ!ゴブリンを一瞬で倒しちまいやがったぜ」


「ヒュ~!凄いぜっ!救世の女神っ!姐さんはゴブリンを一撃で屠る至高の女神さんだぜっ!」


「ありがてぇ、ありがてぇ……」


「あっそ」


 つまらなそうに言って歩みを再開するランちゃんでした。

 こんなことで褒められても、ねぇ……というのが透けて見える顔でしたね。

 

「……街で引き渡すまでこれが続くわけね」


 小さな声で嫌そうに呟いて、ランちゃんが肩を落としてしまいました。

 

 これも経験のうちですよ、ファイト


 頑張れ~、ランちゃん。と心の中でエールを送って私も皆さんの後を付いていく。

 大変そうですけど、うん、よい機会ではあると思うんですよね。

 人を護衛して移動をする経験でも積ませることにしましょう。

 この山は魔物も弱いですし、経験を積むには程よいと思うんですよね。


 ふむふむ……空から何かが近づいてきますね。


 鳥型の魔物です。

 それも群れを成して行動するタイプの、危険な魔物です。

 これは少し数を減らすことにして、と。

 空中に居る魔物に、魔法を直撃させてニ、三匹程度にまで減らす。

 これなら危険も少ないことでしょうね。

 見守ることに徹することにしましょう。

 こんなに安全に護衛の経験を積める機会なんてそうはありませんからね。

 私もいい機会だと思ったので、さっきからあまり魔物に干渉をしてはいないのですよ。

 その証拠に、道中でゴブリンに出会うし。

 ウルフが辺りを囲んできたこともありました。

 そのことごとくをレンくんとランちゃんが対処してきたわけです。

 この調子で街まで行けるといいですね、二人とも。 


「っ、うわああああああっ!魔物だぁああああっ!だ、旦那ああああっ!」


「あ、うん、任せて」


 抜剣。

 跳躍と同時に剣を振りかぶり、上空から襲い掛かろうとしてきた魔物を両断して着地する。

 護衛は問題なく出来ているみたいでした。

 花丸を上げてやりたいところですね。

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