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第15話 捕縛行列


 これはまた随分と大所帯になってしまいましたね。


 レンくんとランちゃん、山を下っていく二人を見つめながら付いていく。

 状況は私のところを旅立ったときから変わりません。

 レンくんとランちゃんが旅をして、その後ろを私が見守りながら歩いていく。

 ですが、旅立ったころにはレンくんとランちゃんの二人だけだったのが今はもう二十人以上になっていました。


「はぁ、はぁ、お~い、頭~。俺よ、疲れたんだけど~」


「そうだぜ~、休もうぜ~。腹減ったしよ~」


「そうだそうだ~!」


「うるせぇ!捕まった分際で図々しく要求してんじゃねぇぞ!お前ら!」


 口々に上がる不満の声にタルムさんが声を張り上げる。

 その両手は拘束された上で、ロープで全員が一括りにされていました。

 そのロープの端は、レンくんの元にあります。

 山賊団の方々がレンくんとランちゃんに拘束されたのは、アジトで巨大ゴブリンを倒した後での出来事でしたが……それから、私が見てない間に色々と話があったようなのですよ。


「あはは……あの、本当に休みたいならちょっとは考えるけど」


「っ、いやいやいや!助けてもらった上にそんなふうに気を遣ってもらうわけにはいかねぇっ!不満は言うが、旦那は俺たちを引っ張ってってくれりゃいいんだっ!」


「おうともっ!俺たちゃ、あんたらが居なかったらあそこでとっくに死んでたからなっ!これからは心を入れ替えて人の役に立つからよっ!」


「そうともよっ!まず差し当たっては、俺たちを街に差し出してもらって旦那と姐さんには金を受け取ってもらわねぇとなっ!俺たちを存分に役立ててくだせぇ!」


「……ふぅ、鬱陶しいわね」


 ランちゃんが面倒くさそうに呟いて目を逸らしました。

 これはもう、対応をレンくんに任せて自分は完全放置で行くつもりのようですね。

 それにレンくんが困ったような笑みを浮かべた後に、山賊さんの方を見る。

 少なくとも、今言われたことはこの場に居る山賊さんたちの中では統一されてる意見のようでした。

 皆さんがいい笑顔で頷いて、レンくんが引きつった笑みを浮かべている。

 本当、可笑しなことになっていますね。


「まぁ、そういうわけだ。お前たちにもそれなりの手間だとは思うけど、よろしく頼む。俺たちはもう戦いなんて懲り懲りだからな」


「……タルムさん」


 レンくんが困ったような声を上げていますが、タルムさんの意志は固いようです。

 彼自身は、山賊を隠れ蓑に色々とやっていただけの人ですからね。

 何もあなたがそこまでしなくても、とレンくんはそう思ってるだろうことは私には透けて見えるようです。

 でも、タルムさん自身は償いがしたいのでしょうね。

 彼自身は悪いことをしたと思っている、清算したい。償いたい。

 意志の強い、綺麗な目をしていました。

 まぁ、よいのではないでしょうかね?

 そりゃ、外側から見たら大したことのないことなんてよくあるものです。

 でも、本人にとってはけじめを付けなければ前に進めないことなんてことはあるわけですからね。

 レンくんもその内に、そういうことが分かるようになるといいですけど。

 ランちゃんは……どうも今のところは最初から理解をする気すらなさそうですから難しそうですね。


「……お腹空いたわね」


「なら俺たちが取ってきましょうか!?姐さんッ!」


「俺たち、姐さんと旦那のためなら何でも働きやすぜっ!」


 ポツリと洩れてしまった呟きを拾って、猛烈な勢いで言葉が返ってきたのにランちゃんが憂鬱そうに溜息を吐いてしまいました。

 ランちゃんは、この通り人見知り……というか、興味がない方たちにはこのような態度を取りますからね。

 でも、優しい子なのは私には分かっているんですよ?


「あんたたち、何を集めてくる気よ?」


「そりゃもちろん木の実や葉っぱっ!」


「キノコも多少は見分けがつきやすっ!」


「根っこでもええですかい!?」


「……で、その途中で魔物にでも襲われたらどうするのよ?」


「「「「もちろん、旦那と姐さんに守ってもらいますっ!」」」」


 口を揃えて言われたそれに、ランちゃんがまた深い溜息を吐く。

 迷いのない言葉でした。

 ランちゃんの反応も、無理もないのでしょうね。

 働くと言ったのに、真っ先にこれですから。

 ここの方たちは、あのゴブリンの襲撃時に逃げずに洞窟に残り、殆どが瀕死の重傷を負った方たちでした。

 それをランちゃんが治して回ったわけですが。


……私も多少は治しましたけど、最低限ですからね。ランちゃんが全員治したってことでいいでしょう。


 それで、そのあとにレンくんとランちゃんに拘束をされたわけですけどね。

 彼らはその時の戦いで魔物が怖くなってしまったみたいなのですよね。

 アジトを襲われたときの恐怖、自分が死ぬと直感しズタボロになるまでゴブリンに刃物を突き入れられ身体が冷たくなっていった、その寂寥感。

 そのせいで、彼らはもう戦いは懲り懲りになってしまったそうなのですよ。

 レンくんとランちゃんに助けてもらった恩もある。

 そのため、こうして大所帯で移動をすることになったわけですが、ね。


「だ、旦那―――!姐さーーん!ひぐ、ゴブ、ゴブリンだぁーーー!」


「ひぇっ!」


「うわゎっ、は、はやくっ!」


「あ~、はいはい」


 大げさに呼ばれ、その方向にランちゃんが風魔法を放ちゴブリンを真っ二つにする。

 突如上がる歓声、大袈裟なほどの感謝の声。

 それに辟易とした様子でランちゃんが頭を抱えてしまいました。


「……さっさと街に行きましょ」


「あ、はは、そうだね。うん、僕もそう思う」


 ランちゃんの呟きにレンくんも控えめに同意をする。

 こうやって、魔物を撃退するにつれて山賊さんたちの好感度がうなぎ上りになっていくわけですけど……それがどうも慣れないみたいなんですよね。

 まぁ、たかだかゴブリンやウルフを倒す程度なので二人の困惑ももっともなわけなのですが。

 平和になりましたね……

 一件落着、とそんな雰囲気を感じますよ。

 うんうんと頷きながら歩いていく。

 レンくんの方からボソッとヒソヒソ声でタルムさんに話しかけるのが聞こえました。


「ねぇ、タルムさん。この後、どうするつもり?」


「……捕まって罪を償うさ。それから、釈放されたら村に戻ろうと思う。壊れた村を直すのは俺がやらなきゃダメな気がするからさ……村長の、親父の助けにもなりたいし。あいつらも巻き込めたらいいが……まぁ、頑張って説得してみるさ」


 タルムさんの目が後ろへ向く。

 ロープで一繋ぎにされている、元自分の部下たちへ。

 それにレンくんは小さく「そっか」と零したあと、もう一つ質問を重ねました。


「……子供たちは?」


「村に残した。村長に任せてある。村のために残ってくれた方がよかったからな……あいつらも、村に居たいって言ってくれたしな」


「…………そっか」


「ああ……俺が守る、なんてあの時に格好つけた割には締まらないけどな。あいつらはもう自由だ、親父が何とかしてくれるさ。それに、戻ってきたら謝らないといけないからな」


「それは……」


「バッカじゃないの?あんたのせいじゃないじゃない」


 急に話に割り込むランちゃんに二人が目を白黒させていますね。

 ふふ、ランちゃんったら相変わらず口が悪いですね。

 でも、言いたいことは私には分かっちゃいます。

 なにせ、私はレンくんとランちゃんの先生ですからね。


「自分たちが村に居たいって言ったんでしょ?なら自分たちの選択よ」


「ラン……そうは言うけどさ、タルムさんの気持ちも僕は分かるよ。だって」


「言ったことに責任を持ちたいとかそういうことでしょ? 下らないわね、わたしには分からないわね。全ては自分たちの選択、悪いのはゴブリン。それで終わりよ」


「……まぁ、一理はあるな。悪いのは俺だとも思うし、あいつらに償いをしたいとは思うが……それを押し付けるのは、あいつらの選択を貶すことになる。あいつらは、立派に自分の道を選んだんだからな」


 しんみりとしたふうに呟くタルムさんに、ランちゃんが不服そうに軽く鼻を鳴らす。

 何言ってんのよ、なんて言葉が顔から透けて見えるようでした。

 昔からそうなのですよね。

 ランちゃんはとにかく思い悩まずにスパッと切り替えをしてしまう。

 それに対してレンくんはその正反対。

 結果だけを見て、もう終わったことだからとランちゃんのように思ったりはせずにいつまでも悩んで、難しい表情を浮かべて、色々なことまで考えてしまうんです。


「終わり……かな?終わらないと思うよ、だって、皆はこれから先も生きてくんだよ? だったら、気持ちの決着も着けずに、どう思ってるかも考えずに前に進んだら……次に何かあった時にどうするのさ」


「そのときはその時に考えたらいいじゃない? 頭はちゃんとくっついてるんだから」


「……そういうもんかなぁ」


「そういうものよ、終わったことでいつまでも悩んでたって仕方ないじゃない」


 言い切って何ともなさそうな顔で歩いていくランちゃんと、納得出来てない顔で足取り重く隣を歩くレンくん。

 見れば見るほど正反対ですね。

 でも、だからこそ私は実は安心をしているんです。

 考え込むレンくんと、考え込まないランちゃん。

 正反対だからこそ互いに成長をして歩んでいけると思っているんです。

 頑張ってくださいね、レンくん、ランちゃん。

 私はまだしばらくの間あなたたちを見守っていますからね。

 笑顔で頷きながら後ろを歩く。

 二人の成長がとても楽しみでした。


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