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禿頭戦線-HKS-〜前髪至上主義への反逆〜  作者: qp46


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第三話 黒髪戦線ーKGSー

 秀人は理解が追いついていなかった。


 


「つまり……光山さんの娘?」


「違います」


「いや今“おとうさ”って」


「違います」


「食い気味だな」


 


 光山 真白(みつやま ましろ)は顔を真っ赤にしながら秀人を睨む。


 


「というか鬼頭さん、なんでこんな怪しい組織に居るんですか」


「それ俺も昨日から思ってる」


「失礼だな真白」


 


 リーダーこと光山 光三郎みつやまこうざぶろうが静かに腕を組む。


 


「HKSは崇高な理念のもと集った革命組織だ」


「頭皮しか見えてないけど」


「表面的な判断はやめろ」


「今の会話でそのセリフ出せるの強いな」


 


 真白は深くため息を吐いた。


 


「……とにかく、今はそれどころじゃないんです」


「何かあったのか?」


 


 その瞬間、部屋の空気が少し変わる。


 


 真白はタブレットを机へ置いた。


 


「見てください、これ」


 


 画面にはSNSが映っていた。


 


【#ハゲを隠すな】

【#頭皮解放宣言】

【#HKS】


 


 そして。


 


【#黒髪しか勝たん】


 


 そのタグだけ異常な勢いで伸びていた。


 


「……なんだこれ」


 


 毛利が険しい顔になる。


 


「来ましたか」


「知ってんの?」


 


 テルさんが低く呟く。


 


「黒髪戦線――KGS」


 


 部屋がざわつく。


 


「まさかもう動いていたとは……」


「奴ら、最近勢力伸ばしてるらしいな」


「若者支持率が高すぎる」


「いや普通に強敵じゃねぇか」


 


 秀人だけが置いていかれていた。


 


「待て待て待て、なんだよKGSって」


 


 光山は静かに目を閉じる。


 


「黒髪戦線-KGS-」


 


 その声には明確な敵意が混じっていた。


 


「“黒髪こそ正義”を掲げる、我々の対抗勢力だ」


「そんな世界観だったの!?」


 


 真白がタブレットを操作する。


 


 そこに映ったのは、黒髪イケメン達の集合写真だった。


 


 全員、髪が多い。


 


 腹が立つほど。


 


「うわ、フサフサだ」


「しかも自然な束感」


「センターパートまでいるぞ」


「強すぎる……」


 


 HKS側の空気が沈む。


 


 秀人は思わず言った。


 


「いやお前らそんなダメージ受ける?」


 


 光山が静かに拳を握る。


 


「奴らは危険だ」


「ただのイケメン集団じゃねぇの?」


「違う」


 


 光山は画面を指差した。


 


【“清潔感は髪から”】


 


 その言葉に、部屋の空気が凍る。


 


「……っ!!」


「許せねぇ……!!」


「また髪か!!」


「結局そこなのかよ!!」


 


 秀人は少し黙る。


 


 だが、分かってしまった。


 


 清潔感。


 


 結局、何を言っても最後はそこへ行き着く。


 


 髪があるだけで爽やか。


 髪があるだけで若く見える。


 髪があるだけで“普通”側に立てる。


 


 秀人は何度も感じてきた。


 


「……で、そのKGSがどうしたんだよ」


 


 真白が画面を切り替える。


 


【公開討論会開催】

【テーマ:本当に魅力的なのは黒髪か、それ以外か】


 


 沈黙。


 


「いや地獄みたいな討論会だな」


 


 毛利が真顔で立ち上がる。


 


「ついに来たか……」


「時代が動くぞ……」


「頭皮の夜明けだ……」


「いやテンションどうなってんだよ」


 


 光山はゆっくり立ち上がる。


 


「逃げるわけにはいかない」


 


 その目は本気だった。


 


「ここで負ければ、“ハゲはいじっていい”という時代は終わらない」


 


 部屋の空気が熱を帯びる。


 


「立ち上がれ同志達」


「「「おおっ!!」」」


 


 秀人だけが置いていかれていた。


 


「いや待て、なんでそんな少年漫画みたいになってんだ」


 


 その時だった。


 


 真白が秀人を指差す。


 


「鬼頭さん」


「……え?」


 


「討論会、出てください」


 


 沈黙。


 


「……は?」


 


 真白は真顔だった。


 


「HKSの若手代表として」


 


 秀人の顔から血の気が引く。


 


「いやいやいやいや!! 無理無理無理!!」


 


 だが光山は静かに頷いた。


 


「適任だ」


「どこがだよ!!」


「君は“まだ隠している側”だからだ」


 


 その言葉に、秀人は少しだけ黙る。


 


 光山は続ける。


 


「だからこそ届く言葉がある」


 


 部屋が静かになる。


 


「ハゲを笑われ続けた側の言葉がな」


 


 秀人は反論しようとして――止まった。


 


 会社で笑われた時のこと。


 鏡を見るたび落ち込むこと。


 風が怖いこと。


 写真が嫌いになったこと。


 


 全部、思い出してしまった。


 


「……俺、別に革命とか興味ねぇし」


「だが傷ついてはいた」


 


 図星だった。


 


 秀人は舌打ちする。


 


「……めんどくせぇ」


 


 その時。


 


 真白が小さく笑った。


 


「でも鬼頭さん、ちょっとだけ変わりましたよ」


「……は?」


 


「昨日より、頭隠してないです」


 


 秀人は思わず固まる。


 


 気づけば確かに、さっきから何度も頭を押さえるのを忘れていた。


 


 部屋の全員が静かに笑う。


 


 光山がゆっくり頷いた。


 


「始まったな」


「何がだよ」


「革命が」


「だからスケールでかいんだよ!」

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