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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第7話 会社の中心で助けを叫ぶ

7話 話はほとんど進みません。

セキュリティゲートでのいざこざです。

「あの、トッシー先輩、どこの世界に男女が肩を組みながら入社する会社があるんですか??」

「む、それもそうだな。肩組むのはやめようか??」


「そうしましょう」

 私達はすぐさま、肩を組むのをやめて、セキュリティゲートへと向かう。


「えっと社員証は……」

 独り言ちながら、ズボンのポケットに手を入れて社員証を探す先輩。


「社員証を取り出さなくても、社員証を身に着けさえしていれば、そのまま入れますよ」

「え? 身に着けさえすればそのまま入れるのか??」


「知らなかったんですか?? 部長なのに??」

「モチロン、シッテイタサ!!」


 まっすぐな目で、片言で話すトッシー先輩。

 あ、これ、知らなかったな……


「トッシー先輩、本当にここの社員なんですよね?? もしも、見栄を張ってウソをついているなら、今ここで白状した方がいいですよ。ここの警備員は部外者に対して容赦がありませんから」


「まだ疑っているのか?? 俺はここの社員でしかも部長なんだぞ!!」


 セキュリティゲートの隣に仲良く立っている警備のおじさんと警備ロボットに目を向けた。


「それなら、セキュリティゲートを通り抜けてください。私みたいに」

 私は社員証を出すことなく、微笑みながらゲートを抜けてから先輩に話しかける。


「本当だったのか……」


 感心しているところをみると本当にこの社員かどうかさえ怪しい。

 トッシー先輩一向にゲートをくぐろうとはしないし。


「やっぱり知らなかったんですね」

「そうだ、そうだ、思い出した!! そういえば、今年度から社員証をかざさなくても良くなったって言っていたことを!!」


 思い出したかのように、ぽんと手を叩くトッシー先輩。


「今年度ですか?? 少なくとも私が去年本社に1か月間研修に来た時にはもうすでに導入されていましたけど」

 あまりにも露骨なウソだったので、トッシー先輩の揚げ足をとる。


「お前、来たことあったんだね、本社」

「ええ、9月に研修で1か月間」


「そうか、そうか、研修か。そのころの俺は本社に毎日通っていたけどな」

「……あれ?? 去年、先輩は本社にいたんですか??」


「もちろんさ。なぜなら、エリートだからな」

 ずれてもいない眼鏡を持ち上げて、決めポーズをとるトッシー先輩。


「それなら、どうして会わなかったんでしょうか??」

 同じ会社に居たのだから、顔を合わせてもいいはずなのに……


「去年の9月なら、俺も研修で1か月間、支社に出向いていたからね。ほら、支社の人が本社に来ると、支社の人数が減っちゃうだろ?? だからその補充要因としてね」


 また見え透いた嘘を。

 確かに、新人を研修で本社に呼ぶわけだから、支社の人員が手薄になることは確かだ。


 だがしかし、支社は補充要因なしで会社がうまく回るかをテストもしている。

 つまりは支社に補充要因など出さないのが通例なのだ。


「へー、そうなんですね」

「なんだ、その言い方。まるで俺がウソをついているみたいじゃないか」


「そんなこと思っていませんよ。ちなみに、どこの支社ですか??」

「シーシャ支社だったかな??」


「そんな水たばこみたいな名前の支社はありませんけど」

「えっと、どこだったかな……」


 やはり、答えられないところをみると、補充要因というのはウソなのだろう。


「去年のことなのに憶えてないんですか??」

「ほら、俺って、過去を振り返らない主義だから」


 白い歯を見せながら、ダークな笑顔でサムズアップするトッシー先輩。

 うまくごまかせたと思っているのだろうか。


「ところで先輩、ゲートの前で雑談していると、後がつっかえますので、はやく入ってきてください!!」

「あ、いや、それは……」


 私が入社しろと促しているのに、トッシー先輩の足は一向に進もうとしない。

 本当にわが社の社員ではないのでは??


「まさか、本当はこの会社の社員じゃないとか言いませんよね?? もしもうちの社員でないなら、今この場で正直に申告した方がいいですよ??」


 もしも、わが社の社員でないなら、部外者の可能性が高い。

 部外者がセキュリティゲートを通ろうとしているなら、マニュアル通り、警備員と連携して、トッシー先輩を追い出してもらわないと。


 いや、不法侵入なのだ。

 警備員の注意なんて生ぬるい。


 警察官にも注意してもらおう。

 高校の先輩とはいえ、もしも部外者が許可なくわが社に入るならば、れっきとした犯罪なのだから。


 念のためにスマホを取り出し、110番だけ押しておく。

 後は緑の丸ボタンを押すだけでいつでも警察につながるぞ。


「おい、スマホ取り出して、どこに連絡する気だよ??」

「えっと……実家にいるお母さんです!!」


 現行犯を刺激しないように、完璧なウソをつく。

 これでトッシー先輩も怪しまないだろう。


「何で今、親に連絡するんだよ??」

「何かあったら、連絡しろって耳にタコができるほど言われていますので」


「何かってなんだよ!!」


 もちろん『高校の時に出会って付き合った先輩が8年後ウソをついて私の会社までつきまとってきた』ことだよ……とは言えない。


 逆上したトッシー先輩がゲートを壊すかもしれないし。


「何かっていうのはですね、急にホームシックになったんですよ。そう、突然!!」

「絶対ウソだろ」


「本当ですって!! ラブストーリーもホームシックも突然にやってくるものなんですって!!」

「今、ちらっと110番の番号が見えたんだが……」


 目ざといトッシー先輩は嫌いだよ。


「110番?? そんなわけありませんよ!! 何を言っているんですか!!」

「それならスマホの画面を見せてみろ!!」


 抵抗する私にお構いなく、先輩はセキュリティゲートをくぐり、スマホを奪取しようとしてきた。


「人のスマホを力ずくで覗き見るなんて最低ですよ!!」

「人のことを疑って、110番するほうが最低だと思うが、どうなんだ??」


 それは先輩がセキュリティゲートをくぐろうとしないからでしょうが!!


「みなさん!! 部外者が私のスマホをとろうとしています!! 助けてください、私を助けてください!!」


 私は会社の中心で助けを叫ぶ。


「何だって!? 不審者?? ちょっとお話いいですか??」

 驚いた警備員がこちらに小走りをしてくる。


「待て待て、警報を鳴らさずにセキュリティゲートを通っただろ、俺」

「あっ!!」


 そう言われてみれば……

 それじゃあ……


「トッシー先輩、本当にここの社員でいらっしゃるんですか??」

「だから、そうだって」


 私の背筋は間違いなく凍っていた。

まとめ

トッシー先輩は会社のセキュリティゲートをくぐることができる。

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