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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第60話 後始末

60話は筋肉男の後始末をするお話です。

 理論君の持っていたスマホをのぞきこむと、そこにはテレビの中にいる邦乃ちゃんとベル君のツーショットがあった。


 二人は本当にそっくりだな……なんて感心している場合じゃない。


「このツーショットどうするの??」

「こうするんです」


 なんと、理論君はツーショットの何枚かを筋肉男のSNS『トイッター』にアップした。


「もしかして……」

「そうです。邦乃が生放送と現実で同時存在するわけがないですよね?? つまり、この写真はフェイクだとみんな思えば、さっきの写真もフェイクに違いない……と思うはずです」


「ファンはベル君の存在を知っているんじゃない??」

「いや、ありえないです。古参のファンでも邦乃のプライベートは知らなかったんですから。たいていの人間はフェイク写真だと思います」


 確かにそうだ。

 私でさえベル君のことは知らなかった。


 先ほどの写真の次にこの写真を見れば、どちらもフェイク写真だと思うだろう……というより、思ってくれ!!


 私の願いが通じたのか、理論君が写真をアップロードした後、通知音の数が少なくなる。


「作戦成功のようです」


 なんて機転を利かすんだ、理論君。

 尊敬するんですけど。


「でも、フェイク写真じゃないと判断する人もいるわよね??」

「そうですね。大多数の人はフェイク写真だと思いますが、一定数の人はコラージュ写真じゃないと見抜くでしょうね」


「もしも、本当の写真だと判断した人が、写真の情報から撮影場所を特定する“特定厨”と呼ばれる輩だったら、邦乃ちゃんの学校にファンが押し寄せて来るんじゃない??」

「それはないです」


「どうしてそう言い切れるの??」

「邦乃はベルと同じ通信制の学校で、年に数回しか登校しないんですよ」


「年に数回の登校だったとしても、制服で学校が特定されるんじゃない??」

「いいえ、制服から学校が特定される可能性は皆無です」


「どうしてそう言い切れるの??」

「なぜなら、邦乃の制服は僕が作ったオリジナルですから」


「確かに都内でみたことない制服だなとは思っていたけど、なるほど、オリジナルだからか」


 私はベル君の着ている制服をまじまじと見る。

 素人が作ったとは思えないほどの素晴らしいクオリティーだ。


「ですので、学校を特定される心配はないのです」

「良かった。当面の問題は……」


「この男をどうするのかですよね??」

 理論君が私の言葉を先読みする。


「どうしようか??」

 さすがに伸びているこの巨体を燃えるゴミとしてゴミに出すわけにもいかない。


「とりあえず、起こしましょうか」

「起こすなら、まずはナイフをどうにかしないと」


 また人質に取られたらたまったもんじゃない。


「それなら、僕が責任をもって預かりましょう」

 理論君は金髪筋肉男のナイフを後ろポケットにしまい込む。


「それでは起こしますね」

「体力大丈夫なの、理論君??」


「体力はないですが、はったりで何とかしてみせます」


 そう言うと、理論君は寝ていた男の上半身を持ち上げ、男の背中に理論君のひざを当てると、思い切り男の背中を両手で引っ張った。


「あれ?? ここはどこだ??」


 無理矢理理論君に起こされた金髪筋肉男。

 どうやら記憶が混濁しているみたいだ。


「ここがどこかは問題じゃないんだよ」

 理論君は男に話しかける。


「お前は誰だ??」

「僕が誰かも問題じゃない。問題なのは、君が今、不法侵入しているということだ」


「不法侵入だと??」

「お姉さん、この男が部屋に入るのを許可した??」


 急に私に話を振ってくる理論君。


「していないわ」


「それなら不法侵入だ」

「そうね、不法侵入ね」


 理論君に同意して深くうなずく。


「待ってくれ!! 俺とお前は邦乃ちゃんの同志だろ?? そうだよな??」

「私の首もとにナイフを突きつけた人は同志ではありません」


「ふん、そんな態度をしていられるのも今だけだ。こっちには邦乃ちゃんがこの部屋に入った証拠写真を拡散しんだぞ」

「そんなものなど拡散してない!!」


 理論君が言い切る。


「俺が気絶している間に写真を消したのか??」

「消さなくてもあんなフェイク写真、誰も信じないから」


 理論君はシニカルに笑って見せた。


「フェイク写真だと?? いや、違うな!! あれは本物の写真だ。今頃、拡散しているはずだ!! 最悪、炎上しているかもな!!」

「拡散も炎上もしていない」


「なんだと??」

「うまく鎮火させたからな」


「ウソだ!!」

「ウソだと思うなら、確かめてみろ!!」


 理論君は筋肉マッチョのスマホを投げつけた。


「本当だ。フェイク写真だと叩かれている」

「分かったら、とっとと家に帰りな!! このストーカー野郎!!」


「ストーカーじゃない!!」

「不法侵入しているんだから、悪質なストーカーだろ!!」


「そうだ、そうだ!! 邦乃に言いつけてやるからな!!」

「邦乃ちゃんに言いつけるだって?? お前らの口を塞ぐしかないな!!」


「懲りないね。返り討ちにあったばかりなのに」

「ぐっ……」


「いい加減、立場が分かれよな。お前は僕より弱いから腕っぷしでは勝てない」

「くっそー」


「分かったなら、もうここには近寄るな!!」

「覚えておけよ!!」


 金髪筋肉男はすたこらさっさと立ち去った。


「覚えるわけないだろ!! 誰がこんなことに脳のメモリーを使うか!!」

「これで万事解決ね、理論君」


「そうでもないんですよね」

「え?? 男も立ち去り一件落着よね?? 何が解決していないというの??」


 私の質問に理論君がこちらをじっと見てきた。


「え?? 私、何かした??」

「何かしたわけではないですが、撮影場所を特定する特定厨は、ねちっこい人が多いですから、悪質な邦乃のファンがこの部屋にやってきて、何かやらかすかもしれません」


「げ」

 まずい、まずい、まずい、まずい。


「この社宅には優秀なコンシェルジュがいるんですよね?? 正直に事情を話したらいいんじゃないですか?? 防犯カメラと合わせれば、悪質ファン防止になりますよね??」

「ごめんなさい、理論君。コンシェルジュがいるというのはウソなの」


「ウソですか??」

「うん、そう」


「そうなんですね……コンシェルジュがいないとなると、いざという時に守ってもらえませんね」


 コンシェルジュがいないとはいえ、社宅の前は人通りが多いし、防犯カメラもあるから普通なら押し入るなんてことはしないだろう。


 理論君が言うように、普通じゃない人が、なんらかの方法で押し入ってきた時の不安がある。

 会社に正直に事情を話すか??


 いや、本社に来てからまだ1か月も経っていない。

 正直に話せば、トラブルメーカーの称号を獲得して、地方へと逆戻りだろう。


 それならば、どうする??

 この社宅を出て、マンションを借りるか??


 そうすれば、私が襲われるということはなくなる。


 ……いや、待て。

 私は襲われる心配はなくなるが、私が社宅を出て行けば、他の社員が私の部屋に住むことになるだろう。


 悪質なファンは私がこの社宅を出たとは知らない。

 知らなければ私の後の人が襲われる可能性が高い。


 もしも、私の後に住む人が襲われれば、前に住んでいた私に問題があったとばれてしまう。

 原因が私だとバレれば、最悪、クビだ。


 つまりは、社宅から出るという選択肢は選べない。

 それならば、誰かボディガードを雇うか??


 いや、ダメだ。

 ボディガードが部屋を出入りしていることなど、すぐに社宅の誰かにバレてしまう。


 バレてしまったら、どうしてボディガードを雇っているのか訊ねられるだろう。

 正直に言えば左遷されるかクビになってしまう。


 結局、ボディガードを雇うことは現実的ではないのだ。

 そもそも、ボディガードなんて雇うお金もないし。


 そうだ、家族をこの寮に住ませればいいんだ。

 いや、待て待て待て。


 父は病弱で護衛には向かないし、母はキャリアウーマンで仕事人間だから、私の護衛なんて頼めない。

 それなら、ケンカが強いゲンに頼むか??


 ダメだ。

 ここからゲンの通う大学院までは遠い。


 もし仮にこの社宅に住むことになれば、私より家を早く出ることになるだろう。

 修士論文の内容によっては、帰宅も私より遅い時間になるだろうから、護衛は頼めない。


 学校や会社にも行かずに、一日中暇で、私のことを守ってくれるほど腕っぷしの強い人なんて都合よくいるわけがないわよね……

まとめ

筋肉男を起こして撃退。

加奈、悪質なファンがるかもしれないことに頭を悩ます。

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