第61話 超ひも・理論君
61話は理論君が超ひもと呼ばれる話です。
……って、目の前にいるじゃないか!
理論君!!
「理論君、私と契約して自宅警備員になってよ!!」
「自宅警備員ですか??」
目をぱちくりさせる理論君。
「そう、私の自宅警備員」
「超ウケるし。自宅警備員って、引きこもりとかニートのネットスラングだし!! 何、理論、自宅警備員になるんだし??」
しまった!!
言葉のチョイスを間違えた。
ベル君に笑われてしまうなんて、考えもしなかったよ。
でもさ、ベル君、なんでそこで笑うかな??
笑ったりしたら快く引き受けてもらえないじゃないか。
さっきから感じていたけど、ベル君は空気を読まないタイプなんだね。
空気読めるなら、戦えないのに筋肉男にあおったり、立ち向かったりしないもんね。
「えっと、言葉のチョイスを間違えたわ。理論君には私の家に居候して、私の家の『警備員』になってほしいの。それなりの報酬を出させてもらうつもりだから、引きこもりやニートとは程遠いの」
理論君はあくまで私の家を守るのだから、自宅警備員ではなく、警備員だ。
「ちょっと待ってください。僕じゃなくてもいいじゃないですか。家族とか、知り合いとか。何で僕なんですか??」
「私に腕っぷしが強い家族はいないの」
「知り合いは??」
「腕っぷしが強い知り合いなら、1人だけ心当たりがあるのだけれど、この社宅から遠いから頼みにくいのよ!!」
「ほかに誰かいないんですか??」
「いないの。だから、お願い! 私と契約して警備員になって!! 理論君なら合気道ができるから、戦えるでしょ??」
上目づかいでお願いする。
「確かに合気道はできます。ですが、僕、体力がありませんよ」
「そうね、理論君には体力がない。でも、体力がないと何か問題があるの??」
「具体的に2つ大きな懸念があります」
「言ってみて」
「1つ目、活動限界カロリーの問題です。今日僕は家事を何もしていないので、活動限界カロリーに達していなかったので動けただけです。もしも活動限界カロリーに達していたら動けませんでした」
「それなら、家事は私がすべてすれば問題ないわよね??」
「いいんですか??」
「もちろんよ。はい、1つ目の問題は解決。2つ目は??」
料理に関しては、1人分よりも2人分のほうが作りやすいしね。
「2つ目は、大人数で押しかけられたら、守れないという点です。今日は相手が1人でしたから」
「それも大丈夫よ。1人を倒せれば」
「どういうことです??」
「襲い掛かってきたのが複数でも、1番強そうな人を1人伸してしまった後に、『さあ、死にたい奴からかかってきな』って、挑発すれば、他は逃げていくわよ」
「そうでしょうか??」
「そうよ。だって、理論君に近しい人間でもない限り、理論君に体力がないことなんて知らないでしょ??」
「確かに」
「それなら、次は自分の番だと思った相手は一目散に逃げていくわよ。はい、2つ目の問題も解決ね」
「そうですね」
「それなら改めて言うわ。私と契約して警備員になってよ」
私は右手を差し出し、握手を求めた。
理論君はじっと私の手を見る。
さあ、手を差し出すのだ、理論君。
そして、私と握手するのだ。
握手しさえすればこちらのもの。
「いいんじゃないの、理論」
後押しをしてくれたのはベル君だった。
「理論は理論ママと邦乃から逃げたいんだし」
「まあ、それはそうだな」
「この家に住むことになれば、雲隠れ超成功だし」
「確かに、そうだよな」
ナイス、ベル君。
「そうだし、そうだし。でも、誰かが襲ってくるまでは何もしなくて良い上にお金までもらえるってつまり……」
「ベル君!!」
ベル君が言いたいことを察したので、私は眉間にしわを寄せて、けん制する。
「……あ、いや、何でもないです」
さすがの空気を読めないベル君も、私の怒りには気づいたようだ。
「何だよ、ベル。言い出したことを途中でやめるなんて気になるじゃないか」
「それなら最後に一つだけ言わせてもらうし。誰も加奈さんの家を襲撃しなかった場合、理論は加奈さんの家に同棲している何もしない、『ただのひも男』ってことになるし」
空気が重くなる。
それはそうだ。
『自宅警備員』から『警備員』に格上げしたものの、仕事内容が『ただのひも男』と一緒なのだから。
なんてことを言い出すんだ、ベル君は。
「ちょっと来てもらおうか、ベル君。理論君はちょっと待っていてね」
おいで、おいでと手招きしながらベル君を部屋の隅へと呼ぶ。
私の呼びかけにホイホイついてくるベル君。
うん、絶対に怒られる雰囲気なのに、全然気づいていないね。
やはり、ベル君は空気が読めない人間なのだ。
「理論君が落ち込んじゃったじゃない!! 元を正せば、ベル君が筋肉男にストーカーされたせいなんだからね??」
私はベル君の耳元でささやいた。
「でも、もっと元を正せば理論の家出が原因だし」
「う……」
確かにその通りだ。
「それなら、ウチに責任があるようには思えないし」
「いいえ、あるわ。だって今、理論君は私の申し出に手を差し出そうとしたのよ。でも、今あなたの言葉のせいで、理論君は断ろうとしているのよ」
「う、そう言われたら、ウチが悪い気もするし」
「もしも理論君が嫌がったら、貴方に責任取って、学校をやめて、ここの警備員になってもらうわよ」
「ウチ、理論みたいに強くないし」
「強くなくても時間稼ぎの盾くらいにはなるいでしょ??」
私の言葉に、ベル君はすぐさま踵を返す。
「理論、加奈さんの提案は理論のママにばれずに生活できるチャンスだし!!」
すごい手の平返し。
「母さんから逃げるためとはいえ、『ただのひも男』にはなりたくないな……」
「さっきは『ただのひも男』って言っちゃったけど、そうじゃないし。理論はいざとなったら戦うんだから、『超ひも男』だし!!」
おい、そこは『超ひも』じゃなくて、『超警備員』と呼んだほうが絶対に良かったんだけど。
訂正するか??
いや、ここで訂正しても空気がおかしくなりそうだ。
ここはあえて乗っかるしかない!!
「そうね!! 『超ひも・理論君』ね!!」
「『超ひも・理論君』だって!? 何でそうなるんですか??」
「『超ひも・理論君』加奈さん、ネーミングセンス最高だし!!」
「ウチからもお願いするし。理論、これからは加奈さんの家をきちんと守って欲しいし!!」
「分かりました。契約成立です」
理論君は私の手を握り返す。
こうして、私と理論君の奇妙な共同生活が始まった。
超ひも♡理論君を第61話まで読んでいただきありがとうございました。
お知らせです。
作者が7~9月まで忙しいので、ここで少しお休みします。
いつ再開されるかは未定です。
以下、おまけの後書き兼次回予告です。
「どうも、自称バリバリキャリアウーマンの金子加奈です!! 超ひも♡理論君を読んでいただき、ありがとうございます、さあ、理論君も挨拶を!!」
「ありがとうございます!!」
「……って、理論君じゃない!! 誰だあなたは!?」
「私?? 私ですか?? 私は『いたあめ(しろ)』だ!!」
「誰??」
「超ひも♡理論君の作者です」
「何だ、ただの作者か……って、作者!?」
「そうだよ」
「いい機会だから、私、作者に言いたいことがあるのよ」
「何??」
「何で連載休むのさ!! プロットができていないとか??」
「プロットはできています!! 何なら、他の作品のプロットもできているもん!!」
「プロットはできているのに、どうして書かないのさ!!」
「リアルが忙しくなるからです!! 読者の方、もし存在していたら、ごめんなさい、待っていてください!!」
「それでいつ頃再会なの??」
「リアルが忙しくなくなるまで」
「アバウトすぎ!! 具体的にはいつなの??」
「うーん……7~9月のまでは忙しいのは分かっているんだけど、その先のことは分からないですね」
「10月や11月も忙しければ……」
「再開は難しいですね」
「いつに再開するか、断言してよ!!」
「それなら、断言します!! いつ再開するかは未定ですと!!」
「いつになるか分からないなら、次回予告やってよ」
「分かりました」
(ネタバレが嫌な人は以下見ないことをオススメします)
「えっとね、次回からゲンが出てきます」
「ちょっと待って!! ギャンブルに酒にタバコ好きのゲンが出て来るの??」
「正確にはゲンの視点になる予定です」
「まさか、私、主人公を降板するの??」
「主人公は加奈さんですよ。でも視点だけゲン視点にして、0話~61話にちりばめられている伏線とミスリードを回収していく予定です」
「え? 伏線とミスリードって全部回収されていないの??」
「うん、全然回収されていない!!(きっぱり)」
「そんなにあるの??」
「だいぶあります」
「全部回収できるの??」
「最終話までには全部します!!」
「本当にできるの??」
「『実は超強いのに頭とメンタルが弱いせいで実力が出せないFランク冒険者のバカシン……もといアサシン。勇者パーティーを追放されたので、スローライフをしようとしたら魔王を倒すハメに……って、何でこうなるの?』でも、序盤の伏線とミスリードをきちんと回収した実績がありますから!! ウソだと思うなら、ちょいと読んでー♪」
「さりげに宣伝しないで!!」
「いやいや、宣伝じゃなくて、作者の伏線とミスリードのはりかたの傾向と対策が分かるよ」
「傾向は分かっても、試験じゃないんだから、対策する意味がわからないんだけど」
「さすが、加奈さん!! ツッコミ上手!!」
「いや、作者に褒められてもうれしくない!!」
「それは残念」
「……っていうか、このまま会話を続けていたら、本文より長くなるんじゃない??」
「おっと、それはいけないね。そろそろやめようか。こっちはおまけなのだから」
「「それでは最後までおまけを読んでいただき、ありがとうございました!! またの日までごきげんよう!!」」
(※おまけは連載が再開されたら消される予定です)




