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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第55話 金髪筋肉男

55話はお話が進みます。

加奈が部屋に入ってびっくりするお話です。

「一目でこのTシャツの価値が分かるとは、すげえな、あんた」

「いやあ、それほどでもないですよ」


「あんたも“大きな翁”か??」


 さすが古参ファンだ。

 “和code”はファンのことを“大きな翁”と呼称していることも知っている。


「そうなんですよ。貴方もですよね??」

「もちろんだ!!」


 そう言いながら、筋肉ムキムキ金髪はサングラスをとった。


 若い。

 見た目は10代だ。


「あんたは誰推しだ??」

「もちろん、不思議野邦乃ちゃんよ!!」


「同志よ」

 がっしりと握手を交わす。


「ところで貴方はロビーで何をしているの??」

「それは……」


 言い淀む筋肉ムキムキ金髪。

 あ、わかったぞ。


 この子、理論君の知り合いなんだ。

 朝、理論君が私を驚かせるって言っていたのは、きっと、古参の不思議野邦乃ちゃんファンを呼んだからだろう。


 この子がロビーに立っていたのは、おそらく、理論君が眠りこけていて、インターホンを押しても中に入れないからだろう。

 起こすべきかどうか悩んでいたのかもしれない。


「もしかして、あなた、308号室に行きたいの??」

「その通りだ」


 目を丸くしてうなずく金髪男。

 やっぱりそうだ。


 彼は理論君の友達なんだ。


「それなら、308号室のインターホンを押せばいいのに」

 念のために確認をする。


「さすがにそれは気が引ける」


 確かに、一度インターホンを押したのに、反応がなかったということは理論君は寝ている可能性が高いもんね。

 寝ている理論君を起こすのは気がひけるよね。


「一緒に入る??」

「できるのか??」


「当然」

 私はロビー兼玄関のカギを取り出し、自動ドアを開けた。


「同志よ!!」

「何でそんなに感動しているの?? さ、入って」


 私はロビーのロック付き自動ドアを開けて、二人でエレベーターに乗る。


「新曲の『桜と吹雪』は聴いたか??」

「もちろんよ」


「どうだった??」

「サビの邦乃ちゃんのソロのパートが最高に良かったわ」


 男はスマホを取り出して、曲をかけた。


「うむ、5オクターブ出せる邦乃ちゃんならではの良さだ」


 エレベーター内でも、しんと静まり返るでもなく、ファントークは続く。


「この前のコンサートの生写真だぜ、どうよ??」

「カメコ席のチケットをとれたんですか??」


「ああ、滅茶苦茶大変だったがな」


 エレベーターを出て、男と会話しながら308号室に入る。


 部屋に入る前、スマホのカメラで男は写真を撮った。

 どうして写真を撮るんだ??


 私は不思議に思いながら、オートロックを開ける。


「超おかえりなさい」


 ドアを開けると、そこには制服姿の不思議野邦乃ちゃんが立っていた。

 何だ、不思議野邦乃ちゃんか……


 ……ん??

 不思議野邦乃ちゃん??


 一度私は玄関のドアを閉めて、部屋番号を確認する。

 308号室。


 自分の家だと確認。

 もう一度玄関を開けた。


「超おかえりなさい、加奈さん」


 不思議野邦乃ちゃんが私の名前を呼んだ??


「これは夢??」

「夢とか超ウケるんですけど」


 邦野ちゃんはキャッキャッと笑う。


「えー!? 何で不思議野邦乃ちゃんが私の家にいるの??」

「理論とこれからのことについて話し合っていました」


『これからのこと』ってつまり将来のこと??

 まさか、結婚とかの話じゃないよね??


 急に、理論君と邦乃ちゃんが結婚なんてことになったら、卒倒するんですけど。


 いや、待て待て。

 落ち着け、加奈。


 理論君はこれから理論君のお母さんからどうやって逃げるかについて話すと言っていたじゃないか。

 結婚なんてするわけがない。


『見通しは立てられた??』……と聞こうとしたその瞬間、背後から何か嫌な気配を感じた。

「これからのことだと?? まさか、邦乃ちゃんは俺たちファンを裏切って、どこの馬の骨とも知れない男と結婚しようというのか??」


「常日頃から邦乃は理論と結婚したいとは言っているけど……って、あんた誰??」

「俺は邦乃ちゃんファンナンバー007だ!!」


 筋肉男の怒声が響き渡った刹那、背中と脇に何かが当たったと思ったら、ぎゅっと固定された。


 え??

 何??

 どういう状況??


 自分の体を見ると、脇から太い腕が出てきている。

 うん、羽交い絞めにされているね。

 筋肉マッチョの男に。


「何で私、羽交い絞めにされているの??」

「お前はちょっと黙ってろ!!」


 筋肉マッチョは私の質問にはこたえずに、右の首に冷たいものを押し当てて来た。

 右下に目線だけを送ると、そこにはナイフ。


 何でナイフが私の首元にあるの??

 理解が追いつかない。


 ただ一つ確かなことは、私が人質になっているということだけだ。

 それならば、大声をあげるか??


 いや、その必要はない。

 目の前にいる邦乃ちゃんには、すでに私が人質だと伝わっている。


 それに、今、大声をあげて犯人を刺激すれば、逆上した犯人が私の頸動脈を切ってしまう可能性が高い。

 ここは犯人をできる限り刺激しないようにしなければ。


 私は邦野ちゃんにアイコンタクトをとる。

 微動だにしない邦乃ちゃん。


 良かった、アイコンタクトが伝わった。


「きゃーーー!!」

 突然、大きな悲鳴を上げる邦乃ちゃん。

 アイコンタクトが伝わっていない……


「超どういうことか分からないし」

 状況が飲み込めず、大声をあげるタイミングを逃しただけかい!!


「騒ぐんじゃない!!」


 ナイフをぐいぐいと私の肌に当てながら、邦乃ちゃんに命令する筋肉マッチョ。

 本当に頸動脈が切れてしまう。


「そうそう、落ち着いてください」

 私も邦乃ちゃんをなだめる。

 

 邦野ちゃんに落ち着いてもらわないと、私のクビが飛ぶんだよ。

まとめ

何故か不思議野邦乃ちゃんが加奈の部屋にいる。

加奈、筋肉男の人質になる。

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