第53話 お金
52話は少ししか進みません。
加奈と理論君の朝ごはんの風景です。
ピピピピピ……
スマホのアラーム音が遠くの方から聴こえてくる。
結局、あまり眠れなかった。
スマホをベッドの近くに置かなかったんだっけ??
あ、そっか。
理論君を起こすと悪いと思って、キッチンにアラームをセットしたんだった。
まずは起きてアラームを止めなけなければ。
隣で寝ている理論君を起こさないように静かに布団から抜け出す。
窓を開けるかどうか悩んだが、理論君がいるのだ。
まだ開けないほうがいいだろう。
抜き足差し足忍び足でキッチンに向かい、アラームを止めると、『和code』の公式SNSから通知が来ていたのですぐさまチェックした。
『大きな翁様にご連絡です。本日17時30分頃より、ツインテレビ様にて和codeが全員生中継で出演して楽しいゲームをする予定ですので、お時間ある方はご覧ください♡』
17時30分にツインテレビですね。
リアルタイムで観させていただきます!!
そのまま洗面所まで移動し、顔を洗う。
眠気がとれたら、朝ごはんの準備だ。
昨日の冷蔵庫に入れておいた、すきやきを温めよう。
さて、理論君は、何時に起きるのだろうか??
一緒にご飯を食べないなら、理論君の分だけ、冷蔵庫に戻した方が良さそうだけど……
一緒にご飯を食べる前提で動こう。
もしも一緒じゃないなら、また粗熱をとって、冷蔵庫で冷やせばいいだけなのだから。
すき焼きをレンジでチンしている間に、ご飯を盛り、麦茶も用意する。
ご飯と麦茶を用意している間に、レンジがすき焼きを温め終えたので、すきやきをレンジから取り出して、机の上に置いた。
「おはようございます」
朝ごはんの準備が整うと同時に、パジャマ姿の理論君が起きて来た。
「あら、今日は早起きね。寝ていなくていいの??」
時刻は7時。
0時に寝たとして、7時間しか寝ていない計算だ。
体力は回復したのだろうか??
「今日は大丈夫そうです」
手を首に当て、体をポキポキならしながら理論君はこたえてくれた。
「それは良かった。ちょっと待ってね。今、理論君のごはんの準備をするから」
私は茶碗に理論君の朝ごはんを準備すると、理論君に差し出した。
「ありがとうございます」
理論君は私と向かい合いながらご飯を食べ始める。
「理論君、テレビつけてもいいかしら??」
「どうぞ」
理論君に許可をもらったので、私はすぐさまテレビをつけた。
『今日の断定占い47位は6月A型のあなた!!』
ちょうど私の占い結果だ。
タイミング良いな、私。
結果はびりから2番目で悪いけど。
『ウソはすべて見透かされてしまいます!! 絶対にウソはつかないこと!! 断定!!』
「よし、今日は絶対にウソはつかないでおこう」
「加奈さんって占い信じるんですか??」
私の独り言に反応する理論君。
「そうね、占いは信じないほうだったけど、この断定占いを見て、信じることにしたわ。理論君は??」
「僕は絶対に信じません。特にこの断定占いは」
占いは好き嫌いはっきりと分かれるよね。
そっか、理論君は信じないタイプか。
「もし、理論君を不快にさせるなら、明日から観ないほうがいいかな?? 断定占い」
「あ、すみません。観たくないからやめろというつもりで言ったんじゃないんです。未来は自分の力で切り拓くものだと信じていることを伝えたかっただけで」
「すごいね、理論君は」
「すごい?? 僕が??」
眉をひそめる理論君。
「そうだよ。なかなか、その年齢で占いに頼らずに未来は自分の力で切り拓くものだなんてこと言えないよ」
「そうでしょうか??」
「そうだよ、誇っていいよ」
「僕はただ、お釈迦様の手の上の孫悟空にはなりたくないだけです!!」
理論君は力強く言い切る。
「頼もしいな、理論君は」
「頼もしいですか??」
「うん、そうだよ。だって、その強い意志があるなら、きっとやりたいことも見つかると思うから」
「そうですよね。きっとやりたいことが見つかりますよね」
どうやら、理論君は励まされたことが自信になったようだ。
良かった、理論君が前向きになってくれて。
「あ、そうだ、理論君。体調が良いのなら、理論君に2万円を渡しておくわね」
財布の中から2万円を取り出し、念のために記番号をメモに控えてから、ウサギのイラスト付きポチ袋を理論君に手渡す。
「2万円ですって?? 理由もなく、こんな大金、受け取れません。今日のお昼代の千円もまだ残っていますし」
確かに、2万円という大金、理由もなく受け取れないだろう。
だがしかし、理由があるのだよ、理論君。
「理由があるから渡しているの。あなたはこの2万円を受け取るべきなのよ」
「理由ってなんですか??」
「それはね、服が1着しかないということよ!!」
「別に困りませんよ」
「不衛生よ、理論君。春だから夏ほど汗をかかないとはいえ、洗濯はしないといけないわ。少なくとも替えの服は買わないと!!」
男性の服ならば、安いものなら2万あれば全身コーデできるはずだ。
ここにどれくらいの期間いるかは分からないけど、すぐに出て行くとしても、出て行った先で服には困るだろう。
「確かに着替えは必要ですが、不用意に街に出たくはないんです」
「それは知っているわ」
「知っているなら、どうして2万円を僕に渡すんですか??」
「理論君の友達に服を買ってもらうためよ」
「えっと、友達って、今日呼ぶ人のことですか?? でも何で??」
「本当は私が買ってもいいんだけど、誰かに見られたら、どうして男性物の下着を買っているか追及されてしまうでしょ??」
「まあ、そうですね」
「うまくかわすことができなければ、理論君を部屋に置いていることがバレてしまうかもしれないわ」
「それはまずいです」
「だから、ここにくる理論君の友達に理論君の服を買って欲しいの。だから2万円を受け取りなさい」
私は無理やり理論君の拳に2万円をねじ込もうとした。
「ちょっと待ってください。新しく買うんじゃなくて、友達の服を借りればいいじゃないですか。そうすれば、この2万円は必要ないです、すぐにメールします」
理論君はパソコンを取り出し、メールを打とうとする。
「メールストップ、理論君。友達と服のサイズは合うの??」
理論君は細身とはいえ、180cm以上ある。
友達も同じくらいの身長ならいいが、サイズが合わないとも言い切れない。
「う」
言葉につまる理論君。
友人とやらは180cmも身長がないらしい。
まとめ
理論君は占いを信じない。
加奈は理論君にお金を渡そうとする。




