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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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52/62

第51話 風呂

51話は少ししか進みません。

お風呂からあがった理論君を加奈が介抱する話です。

「あ、いいの、いいの!! のぼせていないなら。私のことは気にせずに入っていてね」


 早口でまくしたてながら、浴室のドアを閉める私。

 慌てていたとはいえ、堂々と覗きをするなんて、何をしているんだ、私は。


 お風呂に入っていないのに、こちらの方がのぼせそうだ。


 こういう時こそ落ち着くのよ。

 こちらは生存確認のためにお風呂に入ったの。


 理論君の上半身だけしか見えなかったから、セーフよ、セーフ。

 深呼吸を繰り返して、自分の心を落ち着かせる。


 よし、動画サイトでも観ますか。

 私はテレビをつけて、和codeの公式チャンネルからPVを鑑賞した。


「すみません、遅くなってしまい」

 ほてった自分の顔を両手であおいでいると理論君がお風呂から上がってきながら謝ってきた。


「全然気にしなくていいよ。それよりも動ける?? のぼせていない??」


 ふらふらと動く理論君が目につき、心配になる。


「はい、大丈夫です」

「あ、ドライヤーを使うようなら、机の上においておいたから。のどが乾いたら、冷蔵庫に麦茶とスポーツドリンクとミネラルウォーターがあるわ」


「何から何まですみません」

「ああ、そうだ。服を洗うようなら乾燥機付き洗濯機も使っていいからね」


「ありがとうございます」

 理論君が洗濯機に行こうとするが、よろけている。


「理論君、あなた、大丈夫じゃないでしょ??」

「すみません、実はもう体力の限界がきてしまいました」


 活動限界カロリーになってしまったか……


「洗濯は私がしておくから、理論君はまず、ベッドで横になって」

 理論君に肩を貸して、ベッドへと連れて行く。


「すみません」

 申し訳なさそうにする理論君。


「いいのよ。ところで、飲み物、何を飲む??」

「スポーツドリンクでお願いします」


「了解」


 ほほぅ、理論君のお風呂上りはスポーツドリンク派か……

 ガラス製のコップにスポーツドリンクを注ぐと、理論君に手渡す。


 手渡されたコップをもつ手はぷるぷると震えていた。

 まともにドリンクを飲むことなんかできないだろう。


「飲ませてあげよっか??」

「すみません。お願いします」


 理論君が頭をさげてきたので、私はコップを理論君の口に持ってくると、ゆっくりコップの角度を上げて、少しずつ飲ませた。


 ちびちびと飲み込む理論君。


 まるで赤ちゃんみたい。

 母性心がくすぐられる。


「どう?? 足りる?? 足りなければもう一杯持ってくるけど」

「もういらないです。飲ませていただいてありがとうございました」


 飲む量も少ないな理論君。


 こんなに少なくて理論君の体の水分量は大丈夫なのだろうか??

 理論君の顔を見ると、ぽたりと髪の毛から水の雫が落ちて来た。


「理論君、髪の毛乾いてないよ」

「春なので、自然乾燥で大丈夫です」


 サムズアップをしているが、私には分かる。

 コップが持てないのだ。


 コップよりも重いドライヤーが持てるはずがない。


「春とはいえ、まだ冷えるわ。自然乾燥だと風邪をひいてしまうわ。私が髪を乾かしてあげる!!」

「いや、ご迷惑になりますので、自分でやります」


 理論君はドライヤーの温風を髪に当てようとするのだが、腕がプルプルと震えるので、まったく頭にあてることができない。


「髪に温風が当たっていないわよ、理論君。電気代ばかりかかるから、私がするわ」

「すみません、お願いします」


 私はため息交じりに延長コードにドライヤーをさし、理論君の髪を乾かす。

 理論君の髪、サラサラだ。


 撫でていると、とても気持ちいい。

 こんな毛並みのウサギがいたら飼いたいな……


 ウサギじゃなくて、いっそのこと、理論君を飼おうか……


 ……って、ダメよ、ダメダメ!!

 理論君はペットじゃないんだから。


「落ち着いたら、歯磨きをしてね。スポーツドリンク飲んだ後は虫歯になりやすいから。なんなら、私が磨いてあげようか??」

「いえ、そこまでしてもらえません」


「でも、歯ブラシを持つ手が震えているわよ」

「こっちの方が、よく磨けるんです」


「なるほど、筋力がないとプルプルと動くから、電動歯ブラシのように細かい振動が伝わって歯をよく磨けるのか……って、そんなわけないわよね!!」

「いいえ、そんなわけがあるんです。この磨き方だと歯垢が残らないんです」


 さすがに、歯磨きをやってもらうのには抵抗があるんだな、理論君。

 歯磨きを自分以外の誰かにゆだねるなんてこと、子どもの教育番組でしか見ないもんね。


「そっか、そうなんだね。それなら、気が済むまで歯を磨いて。そして、歯磨きが終わったら私に教えて。理論君の歯磨きが終わった後、お風呂に入るから」


 洗面所は脱衣所の隣だから、一緒に使ったら、理論君に裸を見せることになってしまう。

 それだけは嫌だ。


「加奈さんが先にお風呂に入ってください。僕は先にトイレに行って、加奈さんがお風呂に入っている間に歯を磨きますから」


 理論君は私を待たすのが申し訳ないと思ったようだ。


「活動限界カロリーのせいで動けないのでは??」

「いえ、先ほどスポーツドリンクを飲んだので、ゆっくりなら動けるはずです」


 理論君は重い腰をあげると、ゆっくりと歩き始めた。


「分かったわ」


 私が部屋を出て、脱衣所に向かうと、トイレに向かっているだろう理論君の歩く音。

 自然と、服を脱ごうとした手が止まってしまう。


 扉越しに会ったばかりの男性がいる……

 私が理論君のお風呂をのぞいてしまった仕返しに、理論君が私のことをのぞきに来たりしないだろうか??


 大丈夫、理論君は私に興味がないの。

 興味がないなら、のぞきなどするはずがない。


 だけれども、隣に理論君が確かにいるのだ。

 胸がドキドキしてしまう。


 もう、意識しすぎよ。

 落ち着いて。


 ゆっくり深呼吸して、心音を正常に戻すのよ、金子加奈。

 ひー、ひー、ふー。

 ひー、ひー、ふー。


 深呼吸のつもりが、まさかのラマーズ法。

 何をやっているの、私。


 ……と思っていたら、少し落ち着いたわ。


 ラマーズ法でも、冷静さって取り戻せるのね。

 ナイス、私。


 よし、このままいつもと同じように服を脱いで、いつも通りにお風呂に入ればいいのよ。

 服を脱いで脱衣所のところにある洗濯機に入れる。


 私はすぐさま服を脱いで洗濯カゴに服を入れると、まだ慣れていない浴室の扉をあけた。

 浴室は温かい湯気に包まれている。


 これだよ、これ。

 これこそ、人のぬくもりだ。


 いや、ひとのぬくもりじゃないけど。

 独り暮らしの時は、必ず一番風呂で、寒い浴室に入っていた。


 でも、今は違う。

 こんなにも独りじゃないって素晴らしいことなんだな。

まとめ

加奈、理論君を介抱する。

加奈、お風呂に入って、独りじゃないことを実感する。

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