第49話 理論君はエスパーなのか??
49話は少ししか進みません。
加奈が理論君を気にするだけです。
「すごいですか?? 友達の情報って、全部覚えていませんか??」
『何かやっちゃいましたか、僕』……のテンションで小首をかしげられても……
「覚えていない人のほうが多いんじゃないかな。スマホの電話帳に一回登録しちゃえば、忘れても良い情報だからさ」
「本当に友達の情報はスマホに1度入れてしまえば、忘れても良いものでしょうか??」
真剣な目で訊ねてくる理論君。
「どうなんだろうね??」
確かに、子どもの頃は、住所や好きな食べ物やらを必死に覚えたけど、文明の利器スマホを手にしてからは、覚えることをしなくなったな……
「僕は大切な友達の情報は忘れたくない派です」
「素晴らしい考えだと思うよ」
記憶力が半端ないんだな、理論君。
「ありがとうございます」
うなずきながら、理論君はパソコンを立ち上げる。
本当に友達のアドレスを覚えているのか、理論君のパソコンを覗き見ようとした。
「あの、僕の方をじっと見て、どうかしましたか?? もしかして、顔に何かついてます??」
「いや、そんなことないよ。ちょっと、次に何をするか思い出していただけ。何をするんだったかな?? あ、思い出した!! 食器を洗うんだった!!」
すぐさま席を立ち、大げさにカチャカチャと音を立てて、食器洗いに取り掛かる。
食器を洗いながらも、理論君の背後からパソコンの画面をのぞき込もうとするのだが、理論君の大きな背中がそれをさせてはくれなかった。
こうなったら、食器を洗っているフリをして、画面が覗き見ることができるところまで、気づかれぬように移動しよう。
食器を持ちながら、パソコンの見える位置までそろりそろりと動いてみる。
「あの、何か気になりますか??」
理論君が背中越しに話しかけてきたので、立ち止まった。
「え?? 気になるって何のこと??」
「お皿洗いしながら、僕のことをずっと見ていません??」
「そんなことないよ」
何で私が見ていると分かったの??
私に背を向けて、ずっとパソコンの画面を見続けているから、どうやったって私が何をしているかはわからないはずだ。
まさか、理論君の背中には第三の目があるのか??
じっと理論君の背中を見る。
「どうしたんですか?? 僕の背中をじっと見て。羽根でも生えていますか??」
だから、なんで分かるんだよ、理論君。
理論君はエスパーなのか??
「違うよ、皿洗いをしようと思ったんだけど、理論君の背中が大きくて見惚れていただけ。やっぱり男の人の背中の大きさは違うよね」
「そうなんですね。本当は加奈さん、僕に皿洗いをさせたくてじっと見ているのかと思いました」
理論君はこちらを一瞥さえせずに、パソコンのキーを叩きながらこたえた。
「皿洗いは私がしたいのよ」
「したいんですか?? 皿洗い」
「もちろんよ。皿洗いにはストレスを軽減させる効果があるのよ」
早口で健康番組から得た情報を理論君に伝える。
「そうなんですね。知りませんでした。さすが、加奈さん。健康に詳しい」
「それほどでもないわよ」
「照れた顔の加奈さんも可愛いですね」
「いや、理論君、私の方を向いていないじゃない。どうやって、私の表情を読み取ったのよ??」
「ああ、それはパソコンを右半分、黒い画面にしているからです」
「黒い画面ですって??」
「そうです。パソコンの黒い画面って、鏡になるんですよ」
「へー、そういうことか」
理論君、君は忍者か何かなの??
「ほら、また手が止まっていますよ。もしでしたら、手伝いましょうか??」
理論君は立ち上がると、食器洗いしている私の方へと向かってくると、背後から抱き着くようにして食器を手に取る理論君。
身長差があるから、私が理論君に包み込まれる形になってしまっている。
これじゃあ、新婚夫婦の皿洗いみたいじゃないか!!
「私が洗うから大丈夫よ。理論君は体力がないんだから座っていて」
「分かりました」
耳元でささやいた理論君は私から離れ、しぶしぶ椅子に腰をかける。
「理論君、友達と連絡とれたの??」
「ええ。これで母も心配しないはずですし、うまくいけば友達の友達を紹介してくれるはずです」
え??
5分もたっていないよね??
どうやってこんなに高速でメールを打ったんだ、理論君は。
打った内容にもよるけど、最低限、メルアドと本文は書かないといけない。
「理論君ってパソコンオタクだったりする??」
「僕がパソコンオタクなわけないですよ。パソコンは趣味じゃないですし」
「そういえば、趣味はないって言っていたよね」
趣味でもないなら、どうやって、こんなに速くパソコン作業を終わらせたのかが分からない。
本当に理論君のお母さんと連絡が取れたのだろうか??
まさか、ウソをついているんじゃなかろうな??
「そうです、僕は無趣味ですから」
理論君はうなずきながら、哀愁を漂わせる。
「無趣味というのも悪くないと思うわ!! これから趣味になるものを探していけばいいんだから!!」
「そうですよね」
うん、ちょっとだけ話題を変えた方が良さそうだ。
「そういえば、明日は理論君、予定はどうなっているの?? 朝早い??」
理論君は18歳ならば、普通に考えれば、大学生か大学受験を失敗した浪人生かだろう。
「朝早くないです。毎日自分の好きなタイミングで起きれますので」
「ははーん」
私は訳知り顔を作ってうなずいた。
やはり、理論君は浪人生なんだな。
そうでなければ自由な時間に起きれるはずがない。
それで、家にいづらくなってしまったのだろう。
「ことわっておきますが、浪人生ではないですからね」
まとめ
加奈、理論君を背後から注視するが、すぐに気づかれる。




