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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第45話 晩ご飯

45話は少ししか進みません。

加奈と理論君が晩ご飯を食べるだけです。

「美人なのに彼氏いないなんてもったいないです」


美人……何、この子、私のことを口説いているの??

いや、この子のノリから察するに、私のことをからかっているのだろう。


それなら、私からも答えづらいことを聞いてやろう。


「そういう理論君だって、イケメンよね。彼女はいないの??」


理論君にいたずらっぽく訊ねる。


「いやだな、いるわけないじゃないですか」

「へー、お互いフリーってわけだ」


「そうですね」

お互い次の言葉が出ずに、静寂が流れ、理論君が私のことをじっと見つめて来た。


「えっと、そんなにじっと見られると恥ずかしいんだけど……」

「すみません。その胸ポケットにあるものが気になって」


胸ポケット??

今、私の目をじっと見ていて、胸ポケットの方なんて見ていなかったよね??


そもそも、私は基本的に胸ポケットには何も入れてないんだよ。

さては理論君、照れ隠しをごまかすために、何も入っていない胸ポケットを話に持ち出したんだな。


それなら、話に乗ってあげるか。

何も入っていないけど。


私は胸ポケットの方へ視線を移す。

そこには万年筆があった。


あ、そういえば、今朝、万年筆を拾ったんだっけ……


「この万年筆、理論君のもの??」

訊ねながら胸ポケットから万年筆を差し出す。


「僕のものです。ありがとうございます」

お礼を言い終えると、理論君は万年筆を私の手から奪うようにポケットの中に入れた。


「どういたしまして」

私が言うと、理論君のおなかがぐーとなった。


「あ、おなかすいているわよね。ご飯作るわ」

「それなら、僕が作ります」


理論君が起き上がろうとしてふらつく。


「いいのよ、私が作るわ。理論君は休んで待っていてね」

「すみません、もう少しだけ眠らせていただきます」


これだけ寝て、まだ寝るんかいっ……とツッコミたくなったが、まだ本調子ではないのだろう。

私の彼氏が押しかけることも想定していたみたいなので、深い睡眠をとれなかった可能性もある。


「ご飯ができたら起こしていいの?? それとも、自分から起きるまで待っていたほうが良いのかしら??」

「起こしてください。おなかもすいていますので」


理論君は、私の質問に答えると秒で寝息を立てて眠ってしまった。

いつもより静かに戸を閉めて、テレビのリモコンを手に取る。


テレビをつけてラジオ代わりに食事を作ろうかと思ったが、うるさくしたら理論君が安眠できないと思い、結局リモコンを机の上に置きなおした。


室内はしんと静まり返っていたが、いつもよりもやる気に満ち溢れている。


『よし、やるぞ』と無言で気合を入れてから、ご飯を炊いてから、すきやきの調理に取り掛かった。

もちろん、理論君を起こさないよう、音を極力出さないように。


…………

……


20時。

いつもよりも多めに作ったから少し時間がかかってしまったな。


「起きて、理論君!! すき焼き、できたわよ!!」

「ありがとうございます!!」


私が起こすと理論君は目をこすりながら起き上がった。


「寝起きで悪いんだけど、理論君、まずは私を殴って」

「何でですか??」


私の突然のお願いに困惑する理論君。


「何も聞かずに殴ってほしいのよ!!」

「そういう趣味なんですか??」


「そんな趣味あるわけがないわ!!」

そう、私は暴力を振られて喜ぶような人間ではない。


「それならどうして殴らなければいけないんですか??」

「それは……言いづらいんだけど」


「言い辛くても、理由を告白してくれないと、殴りづらいです」

それもそうだ。


「それは……私は理論君が泥棒じゃないかと疑ったからよ!!」

「それだけですか??」


「それだけよ」

私はしっかりとうなずいた。


「疑っただけで殴れとは、『走れメロス』のメロスとセリヌンティウスですか?? 加奈さんに一方的に助けていただいたのに、そんなことできませんよ」

困った顔をする理論君。


「これは私のけじめなの!! 殴らないとすき焼きを食べさせてあげないんだから!!」

「人質ならぬご飯質ですか??」


「そういうことよ」

「それなら」


理論君はゆっくりとゆっくりと右手のひらを私の左頬に当てた。


「ちょっと理論君、それじゃあ、手のひらを私に当てただけで、全然殴ったことにはならないわ!! 思い切り殴ってほしいのに」

「すみません、寝起きで手に力が入らないですし、きれいなお顔を傷つけたくもないですし」


目を潤ませ、私の頬に手を当てる理論君と数秒間理論君と見つめ合う。

理論君の人間性にドキッとしてしまう私。


ちょっと理論君!!

ここで、私を褒めるのはルール違反じゃないかな??


「これじゃあ、私の気がすまないわ!!」


「加奈さんの『気がすまないという気持ち』を僕に盗ませてください。そうすれば、僕はあなたの心を盗んだ泥棒ですので、加奈さんが殴られることもないですし、ボクは価値のある財物ではなく、形のない加奈さんの気持ちを盗んだんですから、窃盗罪でもないでしょう??」


破顔する理論君。


「ずるいよ……」

「ずるいかもしれませんが、これで一件落着ですね。冷める前に加奈さんのおいしいすき焼きを食べさせてください」


「おいしいかどうかはわかんないよ」

理論君は食べてすらいないのだ。


「心をこめて作ってくれた料理がまずいわけありません。おいしいに決まっています」

もう、仕方ないな、理論君は。


お客様用のお茶碗にご飯をよそい、お椀にすき焼きをよそう。


「理論君は生卵ですき焼きを食べる派??」

「生卵派です」


「了解」

取鉢を重ねて2つ用意してから、上の方の取鉢に生卵を殻付きのまま入れて理論君に手渡した。


「取鉢が2枚あるということは、サルモネラ菌対策ですか??」

「うん、そう。新鮮な卵だけど、念のために」


サルモネラ菌といえば、卵の殻の外側についている菌で、大量に摂取してしまうと、おなかが痛くなる。


「お気遣い、ありがとうございます」


理論君は軽く会釈した後、片手だけで卵を割ると、何も入っていない方のお椀に入れて、しゃかしゃかと箸で卵を溶きはじめた。


その様は料理をしている人の溶き方だ。

本当に料理初心者なのかな??


私にウソをついているのではないだろうか??


私がじっと理論君の手際をじっとみていると、理論君は不思議そうにこちらを見てきたので、とっさに視線を逸らす。


「僕の顔に何かついてますか??」

「あ、いや、今日は食べさせなくていいのかなって思って」


「今日は昨日のようにおなかは空いていないので、大丈夫です」

そう言いながら、理論君はお肉を生卵に通すと、品よく口に持っていった。

まとめ

理論君に彼女はいない。

理論君は優しい。

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