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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第39話 スパイ

39話は少ししか進みません。

加奈が小山課長と会議室でお話する話です。

「金子さんが忘れろと言うのなら忘れるわ」

「ありがとうございます。改めまして、何の話ですか??」


「昨日、瀬尾部長の持ってきたイチゴ大福のことについてよ」

「ああ、大丈夫でしたよ!! ええ、本当に」


 トッシー先輩が社長に告げ口したせいでクビになりそうだったけど。

 なんとか事なきを得たからな。


「良かったわ。ごめんなさい、あのイチゴ大福を褒めた後、瀬尾部長と廊下に出る姿を見て、あなたもスパイなのじゃないかと疑ってしまったわ」


「そんなわけないじゃないですか」

「そうよね。貴女を疑うなんてしたくはなかったのだけど、去年の前例があるからね……」


「去年、スパイがいたんですか??」

「いたのよ。秘書課に」


「本当ですか!?」


 うちの会社は年商2位の会社だ。

 会社にスパイが紛れ込んでいてもおかしくはない。


「本当よ。でも、瀬尾部長がスパイを見抜いてくれたのよ」

 まるで自分の手柄かのように誇らしげな小山課長。


「へえ、瀬尾部長が」

 絶対にありえないんですけど。


「そうなのよ。瀬尾部長、昨日のように突然秘書課にやってきて、京野菜のぬか漬けを持ってきてね」

 そういえばそんなことを言っていたな……


 ん??

 京野菜のぬか漬け??


「そのぬか漬けって……もしかして……」

「成神グループのぬか漬けよ!!」


 やっぱりか!!

 昨日とほぼ同じパターン。


 ライバル会社のぬか漬けを持ってきた時にどんな顔をすればいいか分からないよね。

 愛想笑いすればいいのかな??


「瀬尾部長がそのぬか漬けの感想をみんなにしつこく訊いていたら、秘書課の一人が突然『この漬物は、食べられません』って取り乱して、ぬか漬けを踏みつけたのよ」

「ぬか漬けが嫌いだったとか、ライバル会社のぬか漬けだと気づいたとか、理由があったのではないですか??」


「それなら直接言えばいいじゃない?? 『ぬか漬けが嫌いだから食べたくない』とか、『ライバル会社のぬか漬けだから評価できない』……とか」

「確かにそうですね」


 成神グループのぬか漬けとはいえ、食べ物を踏みつけるとなると、確かに異常だ。


「あまりにも取り乱していたから、私が独自で調べてみたら、その子、成神グループのスパイでわが社の情報を横流ししているみたいだったのよ!!」

「そうだったんですね!!」


 小山課長は具体的な名前は避けたが、わが社のライバル会社といえば、成神グループしかありえない。

 きっと、その人は成神グループのスパイとしてわが社に送り込まれたのだろう。


「確信がなかった私は、社長にだけスパイがいるかもしれないと報告したら、結果は黒だったのよ」


「そのスパイはまだ本社にいらっしゃるんですか??」

「いいえ、今はいないわ」


「スパイだと分かってクビにしたということですか??」

「一身上の都合で自己退職したことにしてあるの。スパイだから辞めたというのは、社長、瀬尾部長、私しか知らない事実なのよ」


「そうなんですね」

 なるほど、会社としても穏便にすませたかったわけか。


「結果的にスパイを見抜いた瀬尾さんは社長の信頼を得て、今年度から部長に昇格したのよ」


「でも、宴会部長ですよね??」

「ここだけの話、宴会部長というのは建前で、裏では会社を守るために暗躍しているという噂よ」


「噂は噂で、本人は無能ですよ」


「え?? 今、何か言った?? 声が小さくて聞こえなかったんだけど」

「あ、いえ、何も言っていません」


 間違いなくトッシー先輩は去年のことなど覚えていなかった。

 事の真相は、ライバル会社のぬか漬けだと気づかずに持ってきたところ、容疑をかけられたと勘違いしたスパイが自滅しただけだ。


 なんという無自覚ラッキー男なんだ、瀬尾部長。


「それにしてもすごいわよね、瀬尾部長。スパイをあぶりだすためにわざわざライバル会社のぬか漬けを持ってくるなんて私にはできないわ」


 あのトッシー先輩が秘書課のスパイをあぶりだすために、わざわざライバル会社のぬか漬けを買ってくるなんてことありえない。


 大方、いつも世話になっている秘書課の人たちに、ゴマすりをしようと思って、出張先で試食した『おいしいぬか漬け』を選んで持ってきただけだろう。


 まさかライバル会社のぬか漬けだったなんて夢にも思わずに。

 昔から無自覚で『あれ?? 俺なんかやっちゃいました??』をやってのける人なのだ。


 もしもこの世界が小説だったら、まじめだけが取り柄で脇役がお似合いの私とは対照的に、トッシー先輩は主人公に抜擢される人だ。


 生まれながらの主人公気質はずるいな、トッシー先輩。

 こうなったら、事実を突きつけてみよう。


「偶然が重なっただけで、トッシー先輩……じゃなかった瀬尾部長の手柄じゃないと思います」


「いいえ。こんなこと偶然でできるわけがないわ。普段は全然仕事できない風だけど、実はスパイをあぶりだす天才で、社長から特命を受けているに違いないわ!! 瀬尾部長の正体は『特命宴会部長・瀬尾利訓』なのよ!!」


 顔を赤らめて、うっとりとする小山課長。


 うん、ないわ。

 絶対にないわ。


 なぜ、小山課長はそんなにもトッシー先輩を買いかぶっているのだろう??

 ま、まさか、小山課長、瀬尾部長に好意を寄せているの??


 あの瀬尾部長に……いやいや、ないない。

 だがしかし、円滑な人間関係を築くために、小山課長の評価を否定しすぎるわけにもいかない。


 ここは我慢して同意しなくては。


「そうなんですね。瀬尾部長はできる人だと認識しておきます」


 絶対に私はそうは思わないけど。

 建前大事!!


「それがいいわ。私は貴女がスパイだとは全然思っていないけど、瀬尾部長は貴女をスパイだと疑っている可能性が高いわ。昨日、ライバル会社のお菓子を褒めてしまったから」

「その心配は無用ですよ」


 なぜなら、トッシー先輩はライバル会社のお菓子だとは全然気づいていませんでしたから。

 それに、ライバル会社のお菓子だと教えたのは私ですから。


「いいえ、油断しちゃいけないわ。貴女は瀬尾部長と距離をおいたほうが良いわ」

「承知しました」


 私のことを心配してくれてのアドバイスというよりは、トッシー先輩と距離を置けと言う風に聞こえるのだけれど、もしかして、私を恋のライバルとでも思っているのだろうか??


「分かっているとは思うけど、スパイが秘書課にいたというのは本当にここだけの話よ。決して誰かに知られてはいけないわ」


 小山課長は人差し指を自分の口に当てて、内緒のポーズをした。


 これは試されている。

 私が本当に守秘義務を守れるかどうか。


 このスパイの話が事実であれ、虚偽であれ、もしも私が誰かにこのことを漏らせば、一気に私の信用が地に堕ちてしまうだろう。

 絶対に話してはいけない案件だ。


「分かりました。今話したことは、墓場まで持っていきます」

 口にチャックをしてから、ジッパーを遠くに投げるパントマイムをした。


「頼んだわよ。それじゃあ、お仕事にもどりましょう」

「分かりました」


 会議室を出て、秘書課の自分の席に戻り、パソコンを起動する。

 小山さんとの会議15分で新着チャットが99件。


 どんだけ連絡が来るんだよ。

 まさかスパイ??

 私はチャットの内容を確認した。

まとめ

去年、会社にスパイがいたが、瀬尾部長のおかげで追放できたらしい。

誰かからチャットが99件届く。

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