第38話 万年筆
38話は少ししか進みません。
加奈が会社へ行くお話です。
隣で理論君が寝ているので、テレビをつけて、ワイヤレスイヤホンで音を聞く。
『つぎは、24位から30位の発表です。29位は5月のB型、今日は少しだけ幸せなことが起こります、断定!! 26位は9月生まれの……』
断定占い、全部の順位を読み上げてくれるわけではないんだ。
それもそうか。
1~12月×血液型4種類のパターンの48通りもあるのだ。
全てを読み上げていたら、時間がかかりすぎてしまう。
仕方なしに6月A型があるかどうか目で追った。
24位から30位までにはいなさそうだ。
もしかしたら、もう発表されたかもしれないな……
『続きまして31位から37位です!!31位は……』
お、あった。
今日の48位中32位か……
半分より下か。
『今日は気分が乗らない上に、勘違いしてしまいます!! 断定!!』
確かに、二日酔いですでに気分は乗っていない。
あとは勘違いしてしまうかもしれないのか……
いや、もうした。
とんでもない勘違い。
『今から寝ようと思っています??』とささやいてきた理論君の顔が思い出される。
うん、思い出すだけでも恥ずかしい。
頭がガンガンと響くのは、二日酔いだけのせいではないだろう。
こういう時は心機一転だ。
私は自分で頭を横に振る。
振った直後、ズキズキしていた頭がさらに痛くなった。
何故、私は二日酔いで頭が痛いことを忘れて首なんてふったんだ。
なおさらズキズキ痛むじゃないか。
ズキズキする頭を抱えながら、玄関へと足を進ませる。
なんとか歩けるようだ。
這いつくばるほど気持ち悪くなることはないだろうが、歩くたびに頭が痛むので、時間がかかりそうだ。
早めに職場へと向かおう。
玄関から外に出ると、陽気な日の光に包まれていた。
さわやかな朝のはずなのに、頭がズキズキするから台無しだ。
オートロックのジー、カシャリという音も、今日は頭に響く。
その場から逃げ去るように、エレベーターへと向かう。
1歩歩くごとに、脳へと響く頭痛。
脳に痛みを伝えさせないために、ゆっくりと歩く。
エレベーターまで、たかだか20メートルほどの距離を何分もかけて移動しなければならなかった。
もう少しでエレベーターに乗り込めるというところで、何かが落ちていることに気が付いた。
しゃがみこんで確かめる。
そこには黒色の万年筆が落ちていた。
今まで見たことのない万年筆だ。
手に取ってみるとずっしりと重い。
素材がプラスチックじゃないところを見ると、もしかしたら、高級な万年筆なのかもしれないな。
わが社で扱っている万年筆か??
全体を見回すが、わが社のロゴは見当たらず、代わりに『Riron』という文字が彫られていた。
理論君の万年筆に違いない。
よし、持って帰ろう。
私は胸ポケットに差し込み、家に帰ろうと立ち上がった。
立ち上がった瞬間、頭痛が私を襲う。
これはダメだ。
家まで帰れそうにない。
理論君には悪いけど、帰社したあとに理論君に万年筆を返そう。
即断した私はそのまま会社へと向かうためにバス停へと向かった。
…………
……
バスから降りると、コンビニに寄り、割引されていない非常食用のゼリーと二日酔いに効くウコンドリンクを買う。
うう、コンビニって高いよね。
近くのドラッグストアで買えば10%は値引きされているのに。
うう、コンビニ商品を買うだけで、高価だと思ってしまうのは、私が貧乏性だからだろうか……
ゼリーだけバッグの中へとしまいこんだ後、二日酔い解消ドリンクはすぐにごくりと飲み込む。
よし、これでお昼頃までには、二日酔いもすっきりするはずだ。
空き缶をバッグに入れると、私はバス停へと向かった。
時間は8時50分。
なんとかたどり着けた。
早番じゃなくて良かったよ。
早番だったら、会社の上役のお出向かえもしないといけなかったからな……
グロッキー状態で上役をお出迎えして、『君、体調悪いのかね』と気づかれたら、秘書課なのに、自分の体調管理もできない無能の烙印を押されてしまうからね。
ああ、本当に良かったよ。
胸をなでおろしながら秘書課に入ると、挨拶をして、自分の席に着いた。
「おはよう」
小山さんが秘書課の扉の前で全員に挨拶の声。
「「「「おはようございます」」」」
その場にいた全員が挨拶を返す。
『金子さん、9時15分から30分まで時間あるかしら??』
小山課長が席に着くと、私にチャットが入る。
『もちろんです』
すぐさまチャットを返した。
小山課長と話せる機会なんてめったにない。
急ぎの仕事はないから、少しくらいなら大丈夫だろう。
仮に急ぎの仕事があったとしても、小山課長と会話ができるなら、後回しにするけどね。
『隣の会議室をとったので、9時15分に来てください。スケジュールには、引継ぎで予定を入れました』
『承知しました』
チャットで文字に残したくない秘密の話なのだろう。
時間通りに向かった。
「座ってちょうだい」
「失礼します」
「昨日は大変だったわね」
「そうですね、まさか、空から男性が落ちてくるとは思いませんでした」
「空から落ちて来た男性?? なんのこと??」
「こっちの話なので忘れてください」
しまった。
二日酔いがひどいとはいえ、このミスはまずい。
理論君のことを小山さんが知っているわけないじゃないか。
まとめ
加奈、理論君の万年筆を拾って会社へ行く。
加奈、小山課長と会議室で話し合う。




