第34話 青と赤
2026/6/8 題名を訂正しました。
本文は変えてないです
34話は少ししか進みません。
加奈が顔を青くしたり赤くしたりするお話です。
「痛っ!!」
私は声を上げてしまう。
「大丈夫ですか??」
私の叫びの後、すぐにキッチンへと続く扉が開いた。
「理論君?」
「そうです、理論です。おはようございます」
「おはよう……って、何で理論君がいるの!?」
理論君は泥棒ですでに立ち去ったんじゃなかったのか??
「何で目玉が飛び出るほど驚いているですか??」
「あ、いや、これは、人の気配がしなかったのに、急に扉が開いたからよ」
「加奈さんがぐっすり寝ているのに、起こすようなことはしたくなかたので!!」
「なるほど、だから、気配がなかったということか……」
「そういうことですね。ところで、もう起きますか??」
「起きたいのだけれど、まだ頭が痛くて……」
「まずは水を飲んで落ち着いてください」
どうやら、この理論君、気が利く類の人間のようだ。
私は差し出されたコップに入った水をゴクリゴクリと飲み込む。
「どうですか??」
理論君が訊ねてきた。
「少しだけ頭痛が和らいだ気がするわ。これなら起き上がれそうね」
「それは良かった」
コップを回収して、ニコリと笑顔になる理論君は私の手と背中をとって、上半身だけ起き上がらせてくれた。
「さて、これからどうします??」
微笑みながら私に訊ねてくる理論君。
その笑顔には何かふくみがあるみたいだ。
「どうって??」
「ご飯にしますか?? お風呂にしますか?? それとも……」
このフレーズって、昭和の新婚夫婦の旦那が帰ってきた時の会話のテンプレだよね??
確か、ご飯にしますか、お風呂にしますか……の続きを想像して、顔が熱くなる。
目の前の理論君の顔が近づいてきた。
自然に目と目があってしまう。
じっと見つめ合うこと数秒、理論君は私のほっぺを手のひらで優しく包み込んだ。
このままだと、ファーストキスが理論君に奪われてしまう。
それもいいか……じゃない!!
相手は18歳。
平成ならまだ、未成年!!
今は令和だから、成人年齢なんだけど。
18歳で年上女性に迫ってくるってどうなのよ!?
そうよ、そこよ、私が言いたいのは!!
年上の大人のお姉さんとして、しっかりと注意をしないと。
「あのね、理論君……」
私が諭そうとすると、理論君が口を開いた。
「……それとも、やっぱり化粧落としですか??」
「え??」
すっとんきょうな声を出してしまう。
「いえ、加奈さん、昨日は化粧を落とさずに寝ていますよね??」
そう言いながら、理論君は私のほっぺを触った指を見せて来た。
「化粧を落とさずに寝てしまうと、肌に悪いんですよね?? クレンジングの場所を教えていただければ持ってきますよ」
そうよ。
理論君は私に恋愛感情がないといっていたわ。
それなのに、私ったらとんでもない勘違いをしてしまった。
穴があったら入りたい。
私は理論君から視線を逸らす。
「あれ?? 二日酔いの時って青ざめるって言いますが、加奈さん、顔が真っ赤ですね。もしかして……」
私との距離を詰めようとする理論君。
のけぞりながら、理論君との距離をとろうとするのだが、理論君が近づいてくるので、一向に離れない。
まずい、私がいやらしい勘違いをしていたことに感づいたか??
心臓のドキドキが止まらない。
「熱があるんですね?? 春とはいえ、まだ寒いですもんね。数時間も玄関で寝てしまったら、風邪もひきますよね」
確認しながら、理論君はおでこをくっつけて熱を測ろうとする。
この男、自然に女性を意識させてしまうナチュラルキラーなのか??
「風邪なんかひいていないわよ」
「それなら青隈・赤隈の練習ですか??」
「そうそう、悪い人は青で隈取り、正義の味方は赤く隈取りしないとね……って、どうして私が1人で歌舞伎の練習をしなければいけないのよ!!」
歌舞伎の1人舞台なんて聞いたことない。
「新しいエンタメを世に出すのかと思ったのですが違うのですか??」
「化粧もせずに顔色変えて、何が1人歌舞伎よ!!」
分かりづらいわ!!
大きな声でツッコミをいれたせいで、二日酔いがぶり返してきた。
このままだと、理論君の綺麗なお顔に居の中の全てを吐いてしまいそうだ。
それだけは断固阻止しないと。
「理論君、ちょっと離れて!!」
私が肩を押すと、理論君思い切り吹っ飛び、壁に頭をぶつけた。
「痛たたたた」
両手で頭を押さえながら痛がる理論君。
「ごめん、まさかこんなにも吹っ飛ぶなんて思わなくて」
「いいえ、大丈夫ですよ。加奈さんがボクを吹き飛ばすほど元気だということは確認できましたから」
にっこりと笑う理論君。
私が元気なのではなく、理論君がヘロヘロすぎるんだよ。
もちろん、そんな本音を言うことなどできずに、返答に困ってしまった。
ああ、いろいろな意味で頭が痛い。
私は起こしていた上体をごろんと横にした。
「寝るのならお手伝いしますよ」
そう言いながら私に顔を近づけてくる理論君。
「化粧落とし??」
「それもありますが、安眠できるおまじないです」
そう言いながら理論君はまたしても顔を近づけてくる。
まさか、おやすみのキスか??
とりあえず、理論君と距離をとらなくてはと思い、私は寝返りを打つ。
がんっ!!
寝返りが激しすぎて、頭を思い切りうってしまった。
二日酔いの痛さに外傷的痛みがまじりあい、頭の痛みはマックスだ。
「すごい音がしましたけど、大丈夫ですか??」
理論君の甘い声で私の耳元でささやかれると、お耳が幸せに包まれた。
大丈夫と声に出したいのだが、頭の痛さと耳の心地よさでうまく声に出せない私は口をパクパクさせる。
「ああ、分かっていますよ。何も言わなくていいです。言いたいことは分かっているので」
そう言いながら、またも理論君はゆっくりと近づいてきた。
ダメ、近づかないで!!
目をつぶった瞬間、両耳の後ろを何かで押される感覚。
「耳の後ろの安眠のツボを押すと、よく眠れるんですよ!!」
説明しながら理論君は私の両耳の後ろをぐいぐいと押してくる。
あ、そういうこと。
冷静な私にあるまじき、なんという勘違い。
『寝るお手伝い』は、私が『眠る手伝い』に決まっているではないか。
それをファーストキスの危機とか、何て勘違いをしているんだ。
恥ずかしい!!
自ら穴を掘って入りたい!!
心臓がバクバクと脈打ち、顔が爆発しそうなくらい熱くなっていた。
あまりにも血圧が高くなったせいか、心臓が痛い。
いっそ、この心臓を包丁で一思いに刺して!!
まとめ
加奈、二日酔いのせいで勘違いする。




