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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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33/62

第32話 酔い

32話は少ししか進みません。

理論君が加奈をおぶって、加奈の部屋まで送るお話です。

 さて、エレベーターが1階に着くまでの時間で理論君がどうして『こっちの話』と言ったかを考えてみよう。


 理論君は夕食をおごったお礼に見ず知らずの助けてくれた女の家まで送ろうとしている。


 その女の身元は謎。

 理論君は警戒せざるを得ない。


 なぜなら、私の正体が、美人局つつもたせかもしれないし、家には屈強な男が待ち構えている可能性だってある。


 もしも、私が悪い人間で、美人局やら、屈強な男が待つ家に連れ込まれたなら、理論君はピンチになるだろう。


 だが、連れてこられた場所は超一流会社の社宅。

 なるほど、理論君からしてみたら、トラブルに巻き込まれる可能性が低いということだ。


 だから、『願ったりかなったり』という言葉が出てきたんだ。


 ん??

 それって、つまり、理論君は私のことを悪い女だと思っているってこと??


「ねえ、理論君、あなたは私のことどう思っているの??」

「それは……その……」


 なんとも言い辛そうにする理論君。


「まさかとは思うけど、私のことを悪い人間だなんて思っていないでしょうね??」

 よせばいいのに、酔いが回っているせいか、そう訊いてしまっていた。


「思っていませんよ。興味はありますが」

「興味があるってどういうこと??」


 興味があるって、褒め言葉だよね??

 男性に褒められたのなんて、何年ぶりだろう。


 思い出すことが難しいほどに久方ぶりだ。

 もしかして、理論君、私に惚れているのか??


「何でもないです。今の言葉は忘れてください」

 いや、忘れろと言われても、忘れられないんですけど。


「もしかして、理論君、私のことが好きなの??」


 私、モテ期に入っちゃった??

 今日は月がキレイですね……なんて言われるのか??


「恋愛感情はありません」


 背中におぶわれているので、顔こそ見えないが、とてもきっぱりとした言葉だった。

 十中八九……というより、100%ウソではないだろう。

 私に恋愛感情はないんかい!!


「恋愛感情はないけど、私に興味があるってどういうこと??」

 真剣な口調で私は訊ねた。


「どういうことでしょう??」

 質問を質問で返してくる理論君。


 私を混乱させて楽しんでいるのか??

 分からない。


 分からないが、一つだけ確信したことがある。

 今しがた私の真剣な質問に質問で返した。


 つまりは私の真剣さな質問に対して、ないがしろに返答したのだ。

 ないがしろな返答をする人とは距離をおきたい。


 理論君とはもうここで『さようなら』をしよう。


「理論君、ここまででいいわ。あとは自分で帰れるから」

 私はエレベーターを待つ理論君に声をかける。


「もうすぐエレベーターが来ます。家の中まで送りますよ」


 やはり、私の家の中まであがりこむ作戦だったか。

 そうはいかないんだから。


「もう酔いがさめたから大丈夫よ!!」

 私は理論君の背中から降りる。


 降りた瞬間、ふらついて、壁に激突しようとした。

 私の二の腕を掴み、私と壁との衝突を寸前で防ぐ理論君。


「ほら、酔っているんですから、無理はしないほうがいいですって」


 顔と顔がくっつきそうになるほどの近距離で理論君は言ってきた。

 ボンと顔が熱くなる。


『1階です』

 エレベーターの機械音声が到着を告げた。


「もう、私は酔っていないから!!」

「本当ですか?? 顔が真っ赤ですよ」


 うう、顔が赤いのバレてる。


「顔が真っ赤なのは、酔っているからじゃなくて理論君の顔が近かったからで……」

 もごもごとしゃべってしまっていた。


「え?? 声が小さくて聞こえないんですけど」

「あ、いや、酔っているからに決まっているでしょ」


 理論君の顔が近すぎて顔が赤くなったなんて本当のことを言えない私は結局、酔っていることにしてしまっていた。


「やっぱり酔っているんじゃないですか。さあ、行きますよ」

 理論君は私をおんぶしなおして到着したエレベーターの中に乗りこむ。


「そうだ、鍵はありますか??」


 エレベーターの中なのに、準備が良いな、理論君。

 気が利くタイプね。


「バッグの中にあるわ」

「取り出してもいいですか??」


 酔っ払い相手なのに、律儀に許可をとってくる理論君。


「どうぞ」

「失礼します」


 理論君は持っていた私のバッグの中から家の鍵を取り出した。


「これですね」

 確認してくる理論君。


「シリンダー状の鍵じゃなくてタグ状の電子キーだって、よくわかったね。理論君って鍵に詳しいの??」

 シリンダー鍵ではないから、一見すると鍵に見えない鍵なのだ。


「鍵には詳しくないですが、これくらいは分かりますよ」

 へえ、詳しくないのに分かるんだ。

 理論君は勘が良いのかもしれない。


 エレベーターが止まったので、3階の踊り場に出る。


「何号室ですか??」

「308号室よ」


 私の部屋番号がばれてしまったが、自分の脚で歩けそうにないから、致し方ない。

 疑問に思っていると、隣の309号室の明かりがついていた。


「ちょっと、理論君、309号室に行って!!」


「え?? 308号室じゃなくていいんですか??」

「いいのよ。309号室の人に引っ越しのあいさつがしたいの!!」


 引っ越しのごあいさつ用のタオルはいつでもカバンにいれてある。

 つまり、準備はできているのだ。


 準備ができているならば、挨拶はいつやるか??

 今でしょ!!


「やめたほうがいいですよ。ほら、加奈さん、酔っていますし」

「でも、いつ行ってもいなかったのよ。今行かないと、次はいつお部屋にいるか分からないじゃない!!」


 せめて隣人が男か女かは知りたいのよ。


「もうすぐ0時ですよ。こんな夜遅くに、酒に酔った加奈さんがあいさつに行くほうが失礼ですよ。明かりは点いていますが、寝ているかもしれませんし」


「確かにそうね」


 確かに、深夜に訪問なんかしたら、非常識のレッテルを貼られてしまうだろう。


 引っ越しのあいさつをしにいく常識人だと伝えたいのに、夜中に訪問する非常識人だと思われたら、本末転倒だ。

まとめ

理論君、加奈を部屋まで送ろうとする。

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