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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第2話 推しのアイドル

第2話も話は全然進みません。

(主人公の推しのアイドルが判明するだけです)

『――今日のお店コーナーです。本日は東京の八反田公園の近くに最近できたばかりの居酒屋・虹さんを紹介いたします。こちら、Sousyoそうしょうグループの系列店でして……』


 CMが終わり、アナウンサーが紹介を始めた。


 へー、こんなところに居酒屋があるなんて気づかなかったな。


 思い出すのもおぞましい、成神なるかみ商事系列じゃないなら、話のタネに行ってみるのも悪くない。


 あれ??

 でも、成神グループ提供のニュースで、なんでSousyoグループのお店の紹介をしているんだろう……

 成神グループと、Sousyoグループは仲が悪かったはずなのに。


『今日はなんと、女性アイドルグループ“和code(わこうど)”の“不思議野ふしぎの 邦乃くにのちゃん”と中継がつながっています!! 現場の邦乃ちゃーん!!』


 私の疑問をよそに、淡々と説明を続けるアナウンサー。


 ん??

 今、邦乃ちゃんって言った??


 和がコンセプトの最近人気急上昇中の5人組アイドルグループ“和code”の邦乃ちゃんだよね!?


 SNSで告知していたっけ??

 あ、いや、サプライズ登場だから告知できなかったのか。


 私の押しアイドルがサプライズ出演するのならば、これは観るという選択肢以外ありえない。

 良かった、番組をかえなくて。


 マニキュア塗りながら視聴を続けよう。


『はーい!! 自称5オクターブ声が出せるメインボーカル担当、“和code”の“葡萄えび色”担当の不思議野邦乃です!! 今日は『居酒屋・虹』さんにお邪魔しています!!』


 自身のキャッチコピーで自己紹介した後に、イメージカラーの“えび色”の浴衣風ドレスと和傘でを決めポーズをとる邦乃ちゃん。


 かわいい!!

 公式ホームページでは年齢を発表していないが、見た目は私と同じくらいだから、23歳前後だろう。

 同世代が頑張っていると、ますます応援したくなっちゃうよね。


『このお店は――』


 邦乃ちゃんは、カメラ目線でよどみなくすらすらとお店の紹介をし始める。

 自分のキャラを押し出しつつも、視聴者が知りたいと思う情報を正確に伝えるアナウンス力を持ち合わせていないとできない芸当だ。


『――春野菜のシーザーサラダは少し濃い目の味付けで、お米やお酒が欲しくなる味となっております』

 本当にデビュー2年目とは思えない!


『――絶対に来てくださいね』


 邦乃ちゃんが紹介するなら絶対に行きます!!


『ありがとうございました、邦乃ちゃん!! 続いては、特集、企業スパイについてです――』

 邦乃ちゃんのコーナーも終わったことだし、食器を洗い、歯を磨きでもしますか……

 …………

 ……

 おっと、もうこんな時間。

 はやく出社しないと。


 私はリモコンでテレビを消すと、私は開けていた窓を閉めてから、そのまま玄関に向かった。

 玄関に置いた全身鏡で身だしなみをチェックする。


 しわがつきにくい清潔感のある白いブラウスに、ひざ元まで隠れた黒いタイトスカートにストッキング。

 もちろん、ブラウスもスカートも嶺敷商事の関連会社が売り出しているものだ。


 社員証はポケットに入っているから、大丈夫。


 シンプルなデザインの腕時計を左手に巻きつけて、少しだけ高級感がある見た目の黒いビジネストートバッグを持つと、新調したパンプスを履いた。


 おっと、念のためにお茶も用意しておかないと……


 私は冷蔵庫からペットボトルの緑茶(500ml)を取り出すと、ホルダーに入れてからトートバッグにしまいこんだ。

 よし、これでお仕事の準備は完璧だ。


 私は勢いよく玄関のドアを開けた。

 えっと鍵は……


 鍵を出そうとトートバッグを探るが、ジーという鍵がしまりかける音。


 あれ??

 鍵が閉まりかけている??


 あ、そういえば、鍵を持ったまま外に出ると、オートロックがかかるって説明されていたんだった。

 素晴らしい世の中になったよね。


 このまま少し待てば、鍵は完全にかかるはずだ。

 ジーという音の後に、カチャリと無機質な機械音が響き渡った。


 その後、静寂が訪れる。

 どうやら、鍵は完全にしまったようだ。


 よし、これで安心して会社に行ける!!


 私は、無意識にドアノブを握って、ドアを開けようとするが、ドアは開かない。

 その後、私はなぜか、家の鍵を取り出していた。


 今から出社するのに、何で家の鍵を取り出したの、私??

 忘れ物でもしただろうか??


 いや、忘れ物はしていない。

 それならどうして??


 無意識の自分の行動に疑問符を持ちながらも、自分が今、何をしようとしていたかを思い出す。


 ……もしかして、私、部屋に誰かがいることを期待していた??

 いやいや、そんなことあるわけが……


 今日の出来事を思い返す。


 朝ごはん、独りで食べるのが嫌。

 部屋にいても、誰とも会話ができないのが嫌!


 会話ができないからといって、それっぽい理屈をこねて、テレビをつけて孤独を紛らわそうとする自分が嫌っ!


 朝のテンションが低いからなんとか高く保とうと無理をする自分が本当に嫌っ!!

 結局のところ、私は独りが嫌なのだ。


 もしかしたら、私の前世は寂しいと死んでしまうウサギだったのかもしれない。


 ウサギか……

 飼おうかな、この社宅で……


 人気のあるネザーランドドワーフにするか、ホーランドロップにするか……

 ああ、飼いたい!!


 でも、引っ越しをしたばかりでお金がない!!

 どこかに捨てウサギでもいないかしら……


 ……いるわけないよね、こんな大都会に捨てウサギだなんて。


 神様お願い!!

 断定占いの運命の出会いがあるというなら、私を捨てウサギと遭わせてください!!


 最期まで面倒見ますので!!

 いや、ダメよ、そもそも、社宅はペット禁止なのよ。


 それに、独身女性がペットを飼い出したら、婚期が遅くなるってテレビに出ている芸人さんが忠告していたじゃない!!


 婚期は逃したくない。


 たとえ寂しくても、もっとしっかりしないと!!

 自分の両ほほを両手でパチンと叩いた。


 まずはこんなところで突っ立っていないで、出勤、出勤!!

 たまたま止まっていたエレベーターへ何の気なしに乗り込む。


 もちろん、エレベーターの中には誰もいない。

 1階のボタンを押してから、閉めるのボタンを押す。


『ドアが閉まります』という機械音声の後、一瞬だけ静寂に包まれた。


 また、独りぼっちだ……

 なぜ、私は孤独を感じるエレベーターに一人で乗ってしまったのだろう。


 まずい、このままだと、うじうじと悪いことを考えてしまう。

 私は大きく首を横に振った。


 しっかりしろ!!

 支社での秘書の仕事を評価されて、入社2年目という異例の速さで東京本社の秘書に抜擢されたんだぞ!!


 気を取り直しすんだ、自分。

 そうだ、気分を上げるために音楽でも聞こう。


 1階につくまでの間、スマホで最新のトレンド曲をチェックする。

 お、『和code』の新曲『桜と吹雪』がダウンロードするのを忘れていた。


 最近は引っ越しでばたばたしていたからな。

 これはヘビーローテーションして聴かなくては。


 ラッキー。

 もしも、階段を使っていたら、ダウンロードできなかった。


 よかった、エレベーターを使って。

 これこそ運命だ!!


 ん??

 運命??


 朝の断定占いの運命の出会いって、この曲との出会いじゃないよね??

 よくよく考えてみると、断定占いでは、『運命の出会い』があると言われただけで、『運命の人との出会い』があるとは言われていない。


 つまり、運命の出会いとは、『和code』の新曲『桜と吹雪』のこと??


 私の疑問に呼応するかのように『チン』と、エレベーターは1階に到着したベルが鳴る。


 エレベーターから出ると、ワイヤレスイヤホンを耳につけて、たった今ダウンロードしたばかりの音楽を流す。


 さすがは邦乃ちゃんだ。

 Aメロを聞いただけなのに、5オクターブが耳に響きますわ。


 ……って、しまった。

 秘書課は会社の顔。


 もし、音楽を聴きながら出社しているところを誰かに見られたら、会社の品格を落としかねない。

 社宅から出る前にすぐさまワイヤレスイヤホンをカバンの中へ入れた。


 超高層オフィスビルが立ち並ぶ会社へといざ、出陣!!

 葉桜になりかけている河川敷へと歩き出す。


 もちろん、運命の人を探しながら。

まとめ

加奈は“和code(わこうど)”の“不思議野ふしぎの 邦乃くにのちゃん”を推している。

加奈は寂しがり屋。

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