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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第19話 強運

19話 話はまったく進みません。

トッシー先輩が社長と話すだけのお話です。

「そ……それはですね……違うんです……」


 私を巻き込むとは、最低だな、瀬尾 利訓!!

 心の中でキレている場合じゃない。


 はやく言い訳しないと、私までクビになるじゃないか!!


「違うだと?? おいおい、さっきおいしいと言っていただろ?? まさか忘れたのか??」

「差し入れに持ってきて、おいしいと言わせたのは先輩じゃないですか!!」


 毒を食らわば皿までだ。

 こうなったら、すべての罪を先輩にかぶせよう。


「いや、それは……」

 社長は優しい笑顔で、顔を真っ青にするトッシー先輩の肩をポンんと叩いた。


 お、これは、いわゆる一つの肩たたきというやつだ。

 ご愁傷様、先輩。


 無事に再就職をすることをお祈りしています。


「さすがだ、瀬尾部長!! 私はすべてを分かっているよ」


 ん??

 肩たたきじゃない??


 何が『さすが』なの社長??


 もしかして、トッシー先輩には、何か目的があったとか??

 すぐさまトッシー先輩の方を見る。


 ぽかんとするトッシー先輩。

 お前も分かってないんかい!!


「君は、成神グループが若赤グループを買収しようとしている情報をいち早くつかんでいたから、わざわざイチゴ大福を我々に持ってくることで、上層部に警告をしていてくれたんだろう??」

「え??」

 言葉を発したのは私だった。


「つまりは、去年の例の件と同じような手を使ったということだ」


 去年??

 何のことだ??


 去年何かあったのか??

 私はトッシー先輩の顔を見る。


「ああ、去年の例の件ですね」


 トッシー先輩の顔を覗き見ると、そこにはもちろん、ぽかんとしたトッシー先輩の顔があった。

 うん、知ってた。


 トッシー先輩が何も分かっていないことくらい。


「おっと、すまない。去年の例の件は内密だったね」

「ソウデス、ソウデス」


 片言で大げさにうなずくトッシー先輩。

 絶対に分かっていない。


「過去の功績よりも今の功績を大切にするとは、さすがは瀬尾部長」

「今の功績ですか??」


「ああ、若赤グループが買収されることを前もって知っていた君は、成神グループがどれほどクオリティーの高いお菓子に生まれ変わるのか、社員のみんなにアンケートをとって、確認していてくれていたんだろう??」


「…………実は、そうだったんです!!」


 トッシー先輩は、最初、どういうことか分からずにポカンとしていたが、途中から急に方向転換をして、手をグーにして、力強くうなずきはじめた。


「おお、やはり、すごいな!! 瀬尾部長!!」

「『敵を知り己を知らば、百戦危うからず』という言葉がありますが、ライバル社のことを知るために、お菓子を配って感想を集めていたんです!!」


 さっきまで真っ青だった顔は、今や真っ赤な顔になって、ウソの力説をし始める。


「それで、結果はおいしいという人が多かったんだね??」


「そうです。ここにいる金子をはじめ、ライバル会社のお菓子だと伝えずに、内緒でいろいろな人にお菓子を配った結果、うちの製品よりおいしいという意見がたくさんありました。このアンケート結果を商品開発部に伝えて、わが製品をライバル会社のイチゴ大福よりももっとおいしくするべきだと進言するつもりです」


 早口でふんと鼻を鳴らすトッシー先輩。

 よくもまあ、そんなに口から出まかせが言えたものだ。


 さっきまで泥船に乗っていたくせに。


「なかなか言い出せないことを良く言った!! さすが瀬尾部長!!」

「いえいえ、凡庸な平社員が言い出せないことをあえて言うのが部長の仕事!! 当然のことをしたまでです!!」


 調子良すぎ、この人は。


「良く言った、瀬尾部長! その意気でガンガン会社の改革を進めてくれ!!」

 社長はがしっとトッシー先輩の両肩を掴んだ。


「もちろんです!!」

 社長、その男、去年のことなど覚えていませんよ。


「うむ、君に任せれば、今年もわが社は安泰だ!! はっはっはっ!!」

 いや、トッシー先輩にかかれば、豪華客船さえ、泥船になれ果てますよ。


「そうです、俺に任せれば、この会社は安泰です!! はっはっはっ」

 社長の前で一人称に『俺』を使ってしまうトッシー先輩が会社を安泰にできるはずがない。


「社長、視察のお時間ですが、ただいま、緊急対応のあの件が入りました」

 タブレットを操作しながら社長に進言する専属秘書。


「ああ。あの件か……それなら、秘書課の視察は今度にしよう」

「そうです、そうです、秘書課は後に回して、社長はどうぞ緊急対応のあの件について対応をしてください」


「あの件についても把握しているとは、さすがは情報通の瀬尾部長だ!!」


 私には分かる。

 トッシー先輩は社長と話を合わせて、ごますりをしているだけだ。


 全然『あの件』について分かっていない。


「俺は宴会部長ですから、知らない情報なんてないんです!!」


 本当に調子がいいな、この男。

 なぜ、宴会部長だと情報すべてを知っているんだよ??


「そうか。それなら今度も期待しているよ」

「もちろんですとも」


 揉み手をしながら社長の期待に応えようとするトッシー先輩。

 小物感が凄い。


「はい、一件落着!!」


 エレベーターのドアが閉まった瞬間、腕で額の汗を拭きながら独り言ちるトッシー先輩。


 うっわー。

 真っ赤なウソだけで危機的状況をまた乗り越えたよ、この人。

 悪運が強すぎなんだ、トッシー先輩は。


「私を危機的状況に追い込んで、何が一件落着したんですか??」

 すぐさまトッシー先輩をにらみながら優しく訊ねた。


「あ、こんな時間か……俺もそろそろ人事部の視察に戻らないと。社長が視察していたように」


 またも独り言ちながら、左手で右腕のスーツの袖をまくって時間を確認するトッシー先輩。

 あなた、右利きで、時計はいつも左腕にしていますよね??


 そもそも、あなたは宴会部長で、社長じゃないんだから、人事部を視察する権限なんかないですよね??

「じゃあな、金子!!」


 私がつっこもうとすると、トッシー先輩は脱兎のごとく階段へと逃げ出した。


まとめ

トッシー先輩、危機から脱出した後、加奈からも逃げる。

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