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超ひも♡理論君  作者: いたあめ(しろ)


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第16話 和菓子

16話 話はまったく進みません。

トッシー先輩と加奈が廊下に出て、和菓子について話すお話です。

「いただきます」


 包装をとってみると、そこにはまんまるとした白い大福があった。

 懐紙を取り出して、大福についている粉をとってから食べようかとも思ったが、周りを見回すとみんな懐紙を使わずに食べている。


 自社なので、そこまでマナーを気にする必要もないか……


 私はみんなと同じように、包み紙に包んだまま大福を口に少しだけ運んだ。

 柔らかい大福の中に、黒いあんこの甘味、そして、シュワっとした酸味がまるではじける炭酸飲料を飲んだかのように、口の中に広がる。


 この酸味を出している正体はなんだ??

 私は大福を目の前に持ってきて、入っているものを確認した。


 この赤いもの……これは、イチゴだ。

 なるほど、これはただの大福じゃなくてイチゴ大福だったんだ。


 うう、渋い緑茶が欲しくなる味だ。

 あ、そういえば、持ってきていたっけ。


 私は一度イチゴ大福を机の上に置き、トートバッグからお茶を取り出すと、ぐびりとすべて飲み干した。

 うん、やっぱりお茶と合う。


「おいしいでしょ??」

「そうですね。 毎日食べたいくらい、とってもおいしいです!!」


「それは良かった!! 以前お土産に持ってきたぬか漬けくらい、みんな反応が薄かったから、心配になっていたんだ」


 小声で胸をなでおろすトッシー先輩。


 イチゴ大福がぬか漬けと同じくらいの反応ってどういうことだ??

 そもそも、秘書課では、お土産に上司から何かもらえば、必ず喜ぶというのは暗黙のルールだ。


 食べ物であるならば、たとえそれが、どんなに自分の口に合わなくて、吐きそうになったとしても、笑顔を保ちながら『おいしいです、ありがとうございます』と太鼓持ちをしなければならない。


 それなのに、どうして、みんな微妙な反応なんだ??


 トッシー先輩の人気がないから??

 確かに、仕事ができなくて、秘書課にいろいろと頼んでいる上司は人気がなくなる。


 だがしかし、たとえ人気がなかったとしても、秘書課は甘いもの好きが多いから、イチゴ大福を持ってきたならば、ぬか漬けよりは喜びそうなものだけど……


 周りを見回すと、明らかにみんな青ざめた顔をしている。

 明らかに場の空気がおかしい。


 そこで一つの予想にたどり着いた。

 ……まさか……いや、まさかね……


 いや、お調子者のトッシー先輩ならあり得るのか……


「食べたことのないお菓子ですけど、うちの会社の新商品ですか??」

「いや、家の近くの和菓子屋さんのだよ。会社の全員にこのおいしさを宣伝したいくらい、このお菓子の虜になっちゃっていて、ここ最近は毎日食べているんだ」


「なんていう和菓子屋さんですか??」

「さあ、なんて名前だったかな??」


 憶えていないんかい!!


 すぐさま、個包装を見る。

 お店の名前は書いていなさそうだ。


「すみません、その箱を見せてもらっていいですか??」

「構わんよ!!」


 トッシー先輩は、ぽいと箱を投げて来た。

 箱の裏に貼ってあるシールを見る。


 そこには、まちがいなく『若赤和菓子店』と書いてあった。

 私は全身がカチコチに凍り付いてしまう。


 まずい、まずい、まずい。

 ライバルグループの和菓子をおいしいと評価してしまった。


「それで、なんて名前のお菓子屋さんだったんだ??」


 私は凍り漬けになってしまい、答えることができない。

 おのれ、成神グループ!!


 いや、待て待て。

 成神グループを若赤グループが買収するとニュースで発表したのは今日じゃないか。


 悪いのは成神グループじゃない。

 悪いのは、ニュースを知らなかったトッシー先輩だ!!


 一流会社に勤めている社会人なのに、ニュースも見ないなんてけしからん。


「おい、金子、どうしたの、急に黙って」

「……瀬尾部長、話したいことがあります、ちょっと」


 怒りでバクバクと脈打つ心臓の熱を利用して、凍った体を少しずつ溶かしながら、私はトッシー先輩だけに聞こえる声で、秘書室から連れ出そうと試みた。


「どうした??」

「四の五の言わずに来てください」


 私はトッシー先輩の手を取り、無理矢理に秘書室からトッシー先輩を連れ出す。


「あまりにもイチゴ大福がおいしかったんで、そのおいしさに感動して、俺に愛の告白をするのか??」


 食べ物につられて何でトッシー先輩に愛の告白をしなければならないんだ!!

 私は食べ物でつられる子どもか!!


「違います。告白ではありますが、愛の告白ではないです」

「どういうこと??」


「告白は告白でも罪の告白です」

「罪の告白だと?? おいおい、何かやらかしたんだよ??」


「やらかしたのは、あなたです、トッシー先輩」

 私はトッシー先輩のことを指さしてしまっていた。


「俺が?? 何をやったっていうんだ??」

「落ち着いて聞いてください、トッシー先輩」


「俺はいつでもクールだぜ!!」

 先輩は前髪をかきあげ、決めポーズをとる。


「それならクールな先輩、よく聞いてください。このイチゴ大福、本日、成神グループに買収された若赤グループのお菓子ですよ」

「へー、それがどうしたの??」


 平然としているトッシー先輩。

 この男、ここまで言っても分からないのか??


「それがどうしたのじゃないですよ。成神グループと言えば、わが社といつも首位の売り上げを競い合っている永遠のライバルじゃないですか」


「えっと、それって、もしかして……」

「そうです、トッシー先輩は、ライバル会社のお菓子を社内でおいしいと宣伝していたんですよ」


「…………え?? ウソ??」

 固まるトッシー先輩。

 自称クールは伊達じゃない。


 クールすぎて氷漬けになってしまったか……


「ウソじゃありません、本当です。これが上層部にバレたら、下手したらクビですよ」

「ウソだ!! ウソだと言え!!」


 氷状態から抜け出し、私の胸倉をつかんで、命令するトッシー先輩。

 その表情は明らかに焦っていた。


 クールな先輩は、いまいずこ。


「私がここでウソだと言っても、先輩が他社の……いえ、ライバル会社のイチゴ大福を配った事実は変わりませんよ??」

「オーマイガー!!」

 頭を抱え、叫ぶトッシー先輩。


「がんばってください、トッシー先輩」


 私はポンとトッシー先輩の肩を一度だけ叩いて励ました。

 さて、触らぬ神にたたりなし。

 私は自分の仕事に戻りますか……

まとめ

廊下に出たトッシー先輩に、お菓子はライバル会社のものだと伝える。

加奈、秘書課に戻ろうとする。

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