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トルバドーれ! ライナーノーツ  作者: 袴田八峰


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32.届いて


■32.届いて■


 【リリース】:第三十八幕五席


 【作詞】:なし

 

 【作曲】:ポメロ


 【V.】:ポメロ


 【熱情の名前】:言葉で定義してはリノに届かない


 【熱情の形状】:そんなものに惑わされずにリノを想わないと

 

 【内容】:


   歌とは何か?

   その根源を問うことと、ポメロがこの時取ったアプローチは

   ほぼ同位である。


   『言葉では伝わらないなにかを伝えること』


   それは超越存在とのチャネリングかもしれない。

   

   好きだ、愛してるだけでは伝えきれない

   もどかしさを埋めるパーツかもしれない。


   別言語を使う存在と心を通わせる手段かもしれない。


   まだ名前の与えられていない感情や概念を、

   共有する工夫かもしれない。


   ポメロは音楽を扱う「表現者」だった。

   リノは音楽という「存在」だった。


   故にこの巡り合わせは奇跡であり、

   故にこの結果は必然であった。




 ※以降のコメントパートは、

 言語外のイメージを翻訳しているため、

 不快なノイズが出る場合がございますので

 ご了承された方のみスクロールしてください












 リノ:

  お父さんが泣いてる。

  私が上手に歌えなかったから泣かせた。

  ごめんなさい。


  ハルモニアが困ってる。

  私が上手に歌えなかったから困らせた。

  ごめんなさい。


  みんなが叫んでる。

  私が怖がらせて、怒らせて、絶望させて、泣かせた。

  私が怖い歌を歌ったから。

  私が優しい歌を歌えなかったから。

  ごめんなさい。

  ごめ■なさい。

  ごめ■な■■。

  ■■■■■■。


  ごめんなさいすら言えなくてごめんなさい。


  わたしはきっと歌だから。

  人間じゃないから。

  人間の真似が下手だから。

  歌《わたし》が傷つけてしまう。

  歌《わたし》が悲しませてしまう。

  歌《わたし》が喜ばせてしまう。

  歌《わたし》が――


  『お前は人の気持ちを操作している

   都合よく、誰かを塗り替えているんだ』


  歌《わたし》が、大事な人たちを変えてしまう。


  もしかして。

  

  わたしが大事なひとたちが、

  わたしのことを大事にしてくれるのは、

  歌《わたし》のせい?


  あなたたちのことを大好きな歌《わたし》だから、

  わたしを愛してくれるようになった?


  『お前の罪はいかほどだ?

   何人変えた? 何人曲げた?』

  

  わたしを大好きになるように、変えてしまった?


  『また罪を重ねたな!

   この惨状、一体どうやって始末をつける気だ!

   答えろ奇跡の歌姫! 答えろクレオパトラ!!』


  始末。

  責任。

  ノイジー・リセットを使えない、

  心安らげる歌すら歌えないわたしにできることって

  なんだろう?


  街に出ない(こきゅうしない)こと?

  歌わない(わたしをやめる)こと?


  きっとそう。

  わたしなんてカーネギーの為には。

  いないほうが、いい。


  でも――

  

  新しい家族の皆は、奏鳴荘の皆は。

  わたしがいなくなったら悲しい想いをしてしまう。

  だから、いなくなっちゃ駄目だ。


  いなくならないで、歌えなくなる(わたしじゃなくなる)方法……


  …………


  …………


  …………そうだ!


 


 語り手おねえさん:

  こうしてリノちゃんは、自ら眠りについたのです……

 

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