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トルバドーれ! ライナーノーツ  作者: 袴田八峰


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31.テルミン


■31.テルミン■


 【リリース】:第三十七幕四席


 【作詞】:ポメロ

 

 【作曲】:ポメロ


 【V.】:ポメロ


 【熱情の名前】:揺れ動く心


 【熱情の形状】:静止することを知らぬ狂った天秤

 

 【内容】:


   ことは辻に突如としてライデンステーションが発生し、

   狂騒の如く楽器のビリビリ化が為された時分まで遡る。


   とある楽器職人がいた。


   弦楽器や打鍵楽器の電子化では後れを取った職人であったが、

   持ち前の開発者精神から執念の木管楽器ビリビリ化を成し遂げ、

   一躍有名となった彼であるが、

   一通りの楽器がビリビリ化されてしまえば都の空気は覚め、

   楽器はなんでもビリビリ化するムーブメントは唐突に終息した。


   が、職人はこの時、工房に籠っていた。

   生産の為ではない。

   開発の為にである。


   職人は野心を抱いていたのだ。

   ビリビリを利用することでしか奏で得ぬ、

   新たな楽器をこの手で創造するのだと。


   そこからは苦難の道だった。

   木管ビリビリ化で得た収益を溶かし、

   伝統木管楽器職人としての生産をないがしろにし、

   暮らしぶりは日に日に傾き、

   信頼できる者や愛する者たちにも自ら背を向けた。


   意固地な老人。

   ビリビリに取り付かれた哀れな男。


   そうした市井の噂がひそやかに浸透し。

   そうした市井の噂すらもやがて忘れ去られ。


   ある、珍しく雪が降り積もった晩。

   彼の手入れがされていない工房は、その雪の重量に潰された。

   翌日、枯れ木のように痩せ衰えた老人が、

   梁に潰された状態で発見された。

   もの言わぬ躯となって。


   その胸に。

   梁から己が身を挺して守るように抱かれていたのが

   二本のアンテナの生えた立方体のビリビリ機構であり――


   幾年月を経て時の六歌仙・演奏に再発見されることになる。



 【歌詞抜粋】:


   ♪―― 自分の事は分かってる

   

   ♪―― 決めた場所から動かない

   

   ♪―― でもね。でもでも。でもなんだ。

   

   ♪―― 君の笑顔とあなたの憂い

   

   ♪―― どっちの隣か選べない



 ユーメ:

  あのねー?

  私、楽器以外なーんにも興味ない、

  気にすることなんてない女の子だって思われてるけど……

  ちょっとは自分の見た目とかも気にするんだよー?

  そろそろ三十路も見えちゃってるし、

  いいひといないかな、とかも、ね?


  これ、誰にも言ってない話なんだけどね?

  私ってお肉がつきやすい体質なんだー。

  それも、お腹とかほっぺとかじゃなくて、

  下半身にばっかりついちゃうの。


  お風呂とか入る時、鏡に全身が映るでしょ?

  そういうときいっつも思うんだー。

  バランス悪い体つきしてるな、って。


  私がオーバーニットばっかり来てるのはその為でね?

  体のラインを誤魔化せるからなんだー。

  って、何年かは誤魔化せてたんだけど。


  六歌仙になってからお金がいっぱい入るから、

  美味しいものいっぱい食べるようになっちゃって。

  そしたら……

  お尻周りが、ね。

  なんか古代の人が土器に表した豊穣の女神みたくなっちゃって。

  えーん。

  どうしよう?

  こんなのちょっと動きに角度つけちゃったら、

  おっきなお尻だってまるわかりだよー!?


  あーあ。

  どっかにいないかなぁ?

  私のお尻見ても気にしないで、

  楽器ばかり触っててもあきれない。

  そんな素敵な人が。


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