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トルバドーれ! ライナーノーツ  作者: 袴田八峰


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21.僕の愛するこの歌が、君の心に響かない


■21.僕の愛するこの歌が、君の心に響かない■


 【リリース】:第二十五幕三席


 【作詞】:ポメロ


 【作曲】:ポメロ


 【V.】:ポメロ


 【源泉】:ブルーズの水たまり


 【内容】:

 

   ポメロ氏の最高傑作は何か?

   そういう企画は何度も立ち上るが、誰もが認める名曲

   という確たる柱は存在しない。


   ジャンル横断者という異名の面目躍如というべきか、

   聴衆のファン層によって意見が大きく分かれるからである。

   それはプロの批評家や記者になる程顕著に表れる。


   だが――

   『淋しくて震える勢』にこの問いを投げかければ、

   まずもって名を挙げられるのがこの曲である。


   『淋しくて震える勢』


   ポメロ氏と愛憎半ばする彼女らが評するにこの曲は、

   「照れてない」「斜に構えてない」ポメロ氏が、

   「ちゃんと自分の心に向き合った真実の失恋」を歌い上げた

   「エモ過ぎてもう無理」なバラードなのだとか。


   いや、これ確かに断絶を歌ってるけど、

   決して恋愛とかそういう浮ついた感情ではなく――


   と、理論的に反駁すると彼女らの袋叩きに合うので、

   同業諸氏は注意されたし。


   


   



 ネオのマネージャー:

  確かにこの歌は珠玉のバラードではあるんですが、

  届かないあの人への剥き出しの未練が、

  ネオ様の俺様イメージと乖離しているので、

  私は元からこの歌を買い取るのは反対でした。


 ネオ:

  未練だ?

  そんなもんとっくに切り捨てた後に待つ諦念と受容こそが主で、

  ウェットな情など踏み越えて来た野ざらしの死骸じゃねえか。

  おめーは本当に聞く耳ねぇな。

   

 ネオのマネージャー:

  え?

  でもネオ様って言えばラブソングの王子様で……


 ネオ:

  ……まあ、マーケティング的に、

  俺様のイメージから遠い歌だってことは認めてやるぜ。

  だがな、『僕たちのひみつきち』。

  あれだって既存のネオから逸脱したテーマだったろ?

   

 ネオのマネージャー:

  そうですけど……

  でも結局、「私の王子様の、私だけが気づいた子供っぽさ」

  って界隈の評価に落ち着いたじゃないですか。


 ネオ:

  ちげーだろ?

  その界隈ってのの外の層……

  普段俺様になんて見向きもしねぇ野郎共の層にまで、

  俺様の歌声が届いた。

  広がったんだよ、世界が。


 ネオのマネージャー:

  ……ネオ様は、もう。

  王子さまでいる事に嫌気が差してしまったのですか?


 ネオ:

  ……そうは言わねぇよ。

  だが、王子様の座に慢心して胡坐をかく気はねぇな。

  俺様はもっとやれるんだ。

  まだ上まで登れるんだ。

  俺様の王子ヅラすら塗りつぶせるような、

  圧倒的な真実の詩情世界。

  それが必要なんだ。



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