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トルバドーれ! ライナーノーツ  作者: 袴田八峰


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12.俺で塗れ!

■12.俺で塗れ!■


 【リリース】:第十一幕三席


 【作詞】:ポメロ


 【作曲】:ポメロ


 【V.】:ポメロ


 【熱情の名前】:主客一体


 【熱情の形状】:荒れ狂う炎


 【内容】:

 

  楽曲ジャンルとしてはまごう事無きスラッシュではあるのだが、

  歌詞の方向性としてはまごう事無きヒップホップという、

  爆弾を投げつけて斬りかかるような悪いトコ取り欲張りセット。


  観客に認められるために媚びた創作を排した割には、

  きっちり十三番舞台のニーズに合致するように仕上がっているのは、

  ポメロの類稀なる吸収力の賜物であり、また、

  後に「ジャンル横断者」と評される才能の芽吹きを感じさせる。


  本作のリードギターは、伝統的なスラッシュメタルの

  速度による破壊ではなく、ボーカルの支配欲を音楽的に補完する

  容赦のない侵略として機能している。


  イントロから終始鳴り響くリフは高速ダウンピッキング。

  しかしその音色は、執拗さと鋭利さを以て聞き手を踏みしだく。


  特筆すべきは間奏のギターソロ。

  一般的なスラッシュに見られるカオティックなアーミングをあえて封印。

  バロック音楽を思わせる冷徹なスケールで、

  境界線を一歩ずつ引き、領土を確定させていくかのような、

  理性的かつ暴力的なフレーズを展開する。

  ボーカルが提示する支配のグランドデザインを、

  正確無比なピッキングで補強する役割を果たしていると言えよう。


  暴れるための音楽ではなく、聴き手をひれ伏させるための音楽。

  リードギターが逃げ場を無くすように包囲網を狭め、

  ボーカルがその中心に自らの旗を突き立てる。

  音楽的暴力と精神的支配が完璧に同居した、

  極めて危険なマスターピースであると評せよう。





 メルダック:

  なんだい、振られて捨てられた女に、

  前の男の凄いとこ語らせようってか?

  ア、ナメてんのか?

  蹴り転がされたいか? オ?


  ……まあいいさ。

  アーシのツバメは鳥籠に収まるスケールの男じゃなかった。

  空を支配する猛禽の王、その雛だった。


  この曲が生まれたきっかけはね、アーシのお願いにあるのさ。

  てめえの野心を見せろ。

  そこから滴り落ちるアータ汁を啜らせろ。

  十三番《じごく》デビューの目玉曲、生み出せってな。


  で、出て来たのがこの『俺で塗れ!』さ。

  普段、僕って一人称のなよっとしたボーヤがさ。

  瞳に炎を、声に確信を宿らせて。

  憚ること無く臆面も無く、堂々のライム&シャウトさ。

  

  挑発なんかじゃないよ。

  従えっていうんだ。


  じゃあ興行主のアーシとしては、

  カレをこう紹介するしかないじゃないのさ。


  「聞いているでしょう?

   アーシが若いツバメを飼ってるって噂。

   童子趣味に目覚めたとか。

   ……そうよ、目覚めたわ!

   だってアーシをこんなに感じさせてくれるオスなんて、

   他にいないもの!」


  「このカレったらひどいの。

   ギターに夢中でアーシを放置プレイ!

   でも朗報よ。

   その放置の間に、カレったら飛びっきりのを書き上げたの。

   ……トぶわよ」

   

  「さあ羽ばたけアーシのツバメ!

   熱情の魔物!

   あどけない顔をした秩序の破壊者!

   アータの野心を見せてやれ!」


  「――――――ポメロ!!!」

  



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