謎が残りながらも魔王は行動する
「む…う…」
「あ、気が付いた…!」
カリーノが回復魔法をかけ続けていると、アマンダの目がゆっくりと開かれて目の前のカリーノと目が合う。
「お前は我が城の者ではないな…何者…!?」
見覚えが無い少年に何者か尋ねようとした時、アマンダは女王の間が酷く荒らされている事に気付き、目を見開いた。
「どういう事だ!?妾の城が荒らされている…!お前達もどうした!?」
その場で立ち上がり、暴風によって無惨な光景へと変わり果てた空間を見る中で、親衛隊の兵士達が倒れている姿が見えた。
こうなったのはグレーゴルが乗り移ったアマンダのやった事だが、兵士達に関してはコリンの仕業と少々ややこしい状況だ。
「色々混乱してるみたいだけど、こうなると部外者のあたしらが疑われるパターンじゃね?」
「だろうな、グレーゴルやグランとかいう爽やか野郎はいなくなっちまったし」
今この場に残っているのは城の者を除けば、コリン達しかいない。
アリナもマルシャもこのまま行くと疑いをかけられ、再び刃を向けられる可能性は濃厚だった。
「女王アマンダ、さっきまで僕達と話してたけど覚えてないかなー?」
「妾がお前達と?今初めて会う者と喋った覚えなど無い」
グレーゴルが正体を見せる前、確かにアマンダと喋っていたはずだが、コリンに尋ねられた本人はその記憶が無いらしい。
「ええ?確かに話したよー、エノルム王国がベッラ帝国に侵攻しているのを止めてとか」
「ベッラ帝国に侵攻だと!?何故そのような話になるのだ!」
帝国への侵攻、まるで初耳だという反応を見せた後にアマンダはコリンへと詰め寄る。
「えー…と」
近距離まで迫られ、彼女の纏うドレスの胸元から見える豊かな胸の谷間に、コリンは顔を赤くさせて言葉に詰まってしまう。
「はいはい説明引き継ぎまーす。此処でおねショタ見るの美味しいけど」
アリナとしては放置して、じっくり静観したいシチュエーションだったが、流石に周囲の状況がそれどころじゃないと分かっており、名残惜しみながらもコリンを引き離しアマンダとの距離を開けておく。
「ベッラ帝国を滅ぼせと命令した覚えなど無い!何故妾がそんな指示を出したのだ…!?」
暴風で荒らされた女王の間、その玉座に座ってアマンダはアリナから話を聞いて信じられんと叫ぶ。
「えっと、女王様…何処から覚えてないんですか?」
記憶がぷっつり途切れてるような感じに、カリーノから最後の記憶についての質問が飛ぶ。
「妾が覚えている最後か…そういえば、妾がバルコニーに出て町を眺めていて戻ろうとした時…何者かの気配がしたので振り返った、そこに黒いフードの人物が確か立っていた気が…」
アマンダの話を聞いてコリン達は、その人物がグレーゴルだとすぐに分かった。
「グレーゴルに多分だけど洗脳魔法の類をかけられたんだろうね、意のままに操って自らは女王の側近として裏からエノルム王国を支配する。そんな所かな」
場に居た訳ではないのでコリンの推測となるが、アマンダの記憶の最後がそれだとすると、グレーゴルはそこで女王の意識を奪って自らの都合の良い人形に変えたのだろう。
「洗脳魔法って、そんなんあるんだ?」
「あるよー。結構難易度は高いけど、魔族なら使えてもおかしくないからね」
魔族として生まれ育った者なら、優れた魔力を兼ね備えている者が大半なので、グレーゴルが洗脳魔法を使える事にコリンは不思議とは思わず、アリナへ説明していた。
「妾の知らん間に我がエノルム王国は侵略国となってしまっていたのか…!?」
アマンダ自身に帝国を滅ぼすつもり等無い、無論民を苦しめる税金も彼女がやった訳ではなく、グレーゴルのやった事だ。
どちらにしてもとんでもない事をしたと、アマンダは頭を抱えてしまう。
「だから今すぐ重い税金を終わりにして、侵略を止めてほしい」
まだ間に合う、苦悩するアマンダに元々頼もうとしていた事を改めてコリンが頼む。
「侵略を止めようにも今奴らがどれくらい進んで何処に居るのか分からん…今から速い馬車を用意したとて時間はかかってしまうだろう…!」
「そこは大丈夫♪」
不可能だと嘆くアマンダ、対してコリンだけでなくアリナまでもが揃って得意げに笑っていた。
「皆はちょっと待っててー、ちょっと行ってくる。アマンダ女王、僕と手を繋いでくれる?」
「む?何だこんな時に…こうか?」
コリンがアマンダへ右手を差し伸べると、アマンダは右手で彼の小さな手を握る。
コリンが移動魔法を使用すると、アマンダと共にこの場から姿を消していた。
「グレーゴルはともかくだ…あっちは何者なのか俺も分かんねぇ、カリーノは何か感じ取ったか?」
コリンが戻るまで、マルシャはグランという男について考える。
彼が何者なのか得体の知れない不気味さがあり、エルフとして魔力感知に優れるカリーノにも尋ねてみた。
感じる魔力によって種族は分かるはずだ。
「それが…魔力は感じ取れなかったんだ。つまり魔力を持ってない…」
「何?いや、あいつが姿を消したのはコリンと同じ移動魔法のはずだ。それで魔力無しはあり得ねぇ」
グランからは何の魔力も感じ取れ無かった、それは魔力が無いという事を意味するが、マルシャの見たグランがグレーゴルを連れて姿を消したのは確かにコリンの得意とする移動魔法だ。
カリーノは魔力を感じ取れなかったと言うが、何の魔力も無しで魔法が出来るケースはマルシャも心当たりが無い。
謎は残ったままである。
「ぐ…何のつもりだお前…!?」
周囲は緑豊かな自然、大木を背にグレーゴルはアリナの拳を受けたダメージが残る中で目の前の相手を見上げる。
そこには変わらず柔らかな笑みを見せるグランが立っている、彼らは知り合いや仲間同士ではない。
初対面だ。
「君が面白い力を持っている事が分かってね。あのまま彼らに潰されるのは惜しいなと思ったんだよ」
グランはしゃがんでグレーゴルと目線を合わせた。
「俺の理想の為にさ、協力してくれない?」
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アリナ「ううん、謎めいて来たー!これはあたし探偵の格好になった方が良いかな?そんでバーを行きつけにして良い酒の入ったグラスを傾けたり…!」
カリーノ「え、えーと…?」
マルシャ「まともに相手するな、疲れるだけだからよ」
アリナ「ってそうなったら行く先々で殺人事件のオンパレードじゃん!?それはそれで勇者としては問題かなぁ…」




