同行する者に隠し事をせず正直に魔王は話す
「…」
玉座に腰掛け、扇を広げる黒髪の女性。
大胆に胸元を開けたドレスは、どんな男でも魅了する。
女の色気とカリスマ性を兼ね備えた女王、アマンダは静かに前を見据えていた。
「早ければ既に我が兵はベッラ帝国に到着している頃、そうだな?」
「はっ、何の障害も無ければ予定通りに。帝国、または魔王軍に体制を立て直させる隙を与えない為に迅速な進軍をさせております」
女王の前に跪く重装の騎士、アマンダに対して饒舌に答える。
「フフフ、見えるな…ベッラを制圧し、妾が世界を支配する女王に君臨する姿が」
兵や金を集め、武器も集めて来た。
絶好のタイミングで戦を仕掛け、自分達が勝利を手にして自分が世界の頂点に立つ姿を想像するアマンダ、口元を隠した扇越しでニヤリと笑みを浮かべていた。
自分や国が上に立つ為に守るべき民に多大な負担をかけ、欲望のままに動く妖艶な美女を止められる者は、東のグロース大陸にいない。
想像する女王の傍らにはフードを纏った人物が控え、そのアマンダの姿を無言で眺める…。
翌朝、マスターがエノルム行きの馬車を手配してくれて、コリン達は礼を言うと馬車へ乗り込んで目的地を目指す。
「パンも沢山貰ったりと、あの人達良い人だったなぁ〜♪」
親切な宿屋と酒場の一家と交流し、心が暖かくなったコリンがゴトゴトと揺れる馬車の中でパンの入った袋を抱えて座る。
「通行証も借りたし、また立ち寄る理由出来たから絶対ゴローゾに行く時はあたしも同行だよー?ステーキやピラフまた食べたいから!」
そのコリンの右隣に座るアリナ、世話になった酒場に行く時は自分も同行と決め込み、昨日の食事が相当お気に入りになったらしい。
向かい側では昨日から同行しているカリーノの姿もあって、彼の頭には黒いキャスケットがかぶせられている。
エルフの証である尖った耳を隠す為の物だ。
「あの、聞いてもいいかな?昨日のコリンとマスターの話を聞いて気になって…」
「ん?カリーノ何か聞きたい事あるならどうぞー」
なにか聞きたそうなカリーノの様子に気付き、コリンは彼へ笑顔を向けていた。
「コリン達は…エノルム王国に一体何をしに行くの?」
エノルム王国でやりたい事があってどうしても行かないといけない、昨日のコリンの言葉が気になってカリーノはそれを知りたいと思って、彼へと問う。
「(あ、これ話し辛いヤツだね。コリン君が本当は人間じゃなくて魔王とか戦を止める為とか、相当頭こんがらがりそう)」
同行するアリナはコリンの正体、目的を当然知っている。
にわかには信じられない話で、無関係のカリーノがこれを聞いたらどんな反応をするのか。
アリナの視線がカリーノからコリンの方を向いていた。
「あ、僕実は魔族で魔王やってるんだ」
「(えー!あっさり言っちゃうんだそこ!?)」
慎重に話を切り出すのかと思えば、コリンは自分の正体をすぐカリーノに伝えており、内心でアリナはオーバーなリアクションをする。
「魔族…魔王…」
「そうだよー、皆がのんびりまったり暮らせる世界を目指して動いてるの♪」
無邪気な笑みでコリンは隠さず自分の目的を話し、カリーノの方は魔王と聞いて多少驚きを見せるも、大きな反応は無い。
「魔族なのは、なんとなく…分かってたよ。魔力の感じとかで…」
「流石エルフだな、魔力の感知に優れてやがる」
「魔力感知ってエルフそういうの得意なんだ?」
カリーノが魔力を感じ取れる事に、コリンの傍らに座るマルシャは納得している様子。
この世界でのエルフについてアリナは疎いので、勉強も兼ねてそれが得意なのかと尋ねる。
「うん、魔力を兼ね備えている人が近くに居たらそれが人間だったり魔族だったりエルフ…とかは大体分かるよ」
「だからあの時カリーノの姿を見て、これバレたなぁって思ったねー」
牢屋で囚われたカリーノと会った時、既に魔力を感じ取ってコリンを魔族と分かっていた、流石に魔王とまでは分からなかったので、知った時に若干の驚きを見せたのだろう。
「今こうしてエノルム王国を目指してるのは、王国の軍勢によるベッラ帝国への侵攻を止める為だよ」
「え、侵攻…!戦が始まるの…!?」
コリンがエノルム王国を目指す理由を話すと、カリーノの表情が強張ってくる。
呑気に聞ける穏やかな話ではない。
「ああ、エノルム王国から侵攻してる軍は俺らの仲間が食い止めてるけど何時まで持つか分からねぇ。向こうが止まってる間に俺らは親玉の所に向かうって訳だ」
話の続きをマルシャが引き継いで説明、王国に行くのは戦を止める為だと言われたカリーノ、これに驚きは隠せなかった。
「ちなみに言うと、あたしはその魔王を監視する勇者…って言ってもこの称号は帝国内で言われてるぐらいでこの東の大陸には効力無いっぽいけどねぇ〜」
そこへアリナもさらっと自分について教え、軽く笑い飛ばす。
「という感じだけど、それでも来る?」
改めてコリンはカリーノに同行するのかどうか尋ねた。
此処からの選択は彼の自由、何も強制などしない。
「色々ビックリしたけど…他人事じゃないと思う、戦が段々拡大していったら僕の住む里やお姉ちゃん達が危なくなるかもしれないよね…」
今の所はエルフの里が巻き込まれているかどうかは分からない、だが戦が長引き拡大してしまうと巻き込まれる可能性は高まる。
「このまま僕も同行したい、出来る事があるのかは分からないけど」
カリーノは自ら同行を改めて申し出る、コリンは断る事なく彼の同行を満面の笑みで歓迎した。
「何かしなきゃとか思わなくていいよー、カリーノは全部終わったら里にちゃんと送ってくから」
「うん…よろしく」
目的を一通りカリーノに伝えてる間、馬車は関所へと迫って来た。
「はい、通行証。これで通行料いらないんだっけ?」
「ああ、…確認した、お前ら通って良いぞ」
酒場のマスターから託された通行証、コリンは一旦馬車から降りて関所の門番として立つ兵士へと見せる。
これを確認すると兵士は一行の通行を許可した。
「はぁ…ちょっと前は関所とか無かったのに、通る皆にイヤな顔されて…やってられないぜ…」
コリンが馬車に再び乗る際、兵士から不満のような言葉が呟かれる。
皆がアマンダのやり方に賛成している訳ではない、文句を言いながらも逆らえず働き続ける者も居た。
これを聞いたコリンは今の侵攻を止めるだけじゃ完全に解決しない、エノルム王国を変えなければ何も前に進まないと思い、アマンダに会う決意を固めていく…。
此処まで見ていただきありがとうございます。
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アリナ「美少年をパーティーから外すなんてあり得ないし!健気な良い子ショタを1人にさせるのはお姉さん許しませんよー!」
マルシャ「また1人盛り上がってんなぁ」
コリン「カリーノが一緒に来てくれる事そんな嬉しかったんだねー」
カリーノ「僕そこまで期待されるような力は持ってないけど…」




