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夕飯は量も感謝も特盛り!

「本当にありがとうございます!うちの娘を救っていただきまして!」



「あー、いや〜…」



 マルシャンの酒場に到着すると、コリンは酒場のマスターの男から両手を握り締められて感謝されていた。



 マスターがボロ泣きしながら礼を言う姿に、コリンも返す言葉に迷う。



 何故こうなったかと言えば、此処のマスターの娘がさらわれ、奴隷商人の所に囚えられていた所に一行が救い出したのだ。



 コリンやカリーノと変わらぬ背丈の娘が父親、母親の元へ帰って来た所にコリン達の事を伝え、そこに一行が夕飯の為に酒場を訪れて今に至る。



「娘が帰って来てくれたのはあんた達のおかげだよ!今日は好きなだけ食べてっておくれ!あ、酒は子供に飲ませられないから駄目だけどね!」



「あ、いいの?ゴチなりまーす♪」



 酒場の料理長を務めるマスターの妻で少女の母親も、コリン達に礼を言うと、アリナがお言葉に甘えてご馳走になる気満々で席に着く。



「僕は助けられた方だけど…食べてもいいのかな?」



「当たり前でしょー、お腹空いたなら食べなきゃ駄目だよー!」



 自分までご馳走になって良いのかと躊躇するカリーノに、コリンは一緒に座るように勧める。



 そこに酒場自慢の料理が並べられていく。



 大きな牛肉のステーキ、大皿に盛られた海老と玉子のピラフ等いずれも量が多い。



「わーお…デカ盛り自慢の店みたいだなぁ」



 元の世界でこういう超特盛り自慢の飯あったっけ、と思い出しながらアリナは一般の男性が何人かでシェアしなければ、食べ切れないであろう料理の数々を目にする。



「うちは量が自慢のゴローゾだ、今日は妻が何時も以上に張り切ったみたいだなぁ」



「むしろ張り切り過ぎかも〜」



 肉や米の香ばしく良い匂いが食欲を刺激する、美味しそうだがコリンは完食出来るかなと苦笑してしまう。


 食べる者達が集う酒場ゴローゾ、それがマルシャンを代表する店だ。



「まあ、腹壊さないようにな」



 コリンに一言注意しながら、マルシャは別皿で用意された猫用のライスにがっついていた。



「じゃ、いただきまーす…美味しいね〜♪」



 ビーフステーキをナイフとフォークで切り分け、一口サイズにして食べると大きなサイズとは思えない程に柔らかく、ジューシーで肉の旨味がコリンの味覚にしっかりと伝わって来た。



 これには食べる手が止まらず2切れ、3切れ目と続けて口に運び続ける。



「本当に美味しい…!」



 美味しさに目を輝かせたのはカリーノだった。



 牛肉に野菜をじっくり煮込んだビーフシチューに、柔らかなパンをつけて食せば人間の作る物が口に合ったようで、夢中になってかぶりつき気味で食を進めていた。



「港町のも美味かったけど、此処のピラフも美味いねー!最高〜♡」



 大皿のピラフを1人で完食しそうな勢いで、アリナはガツガツとスプーンでかきこんでいく。



「あー、僕にもピラフちょうだいー」



「ゴメンゴメン、それじゃそこのステーキ貰うねー」



 コリンが食べたがっていたので、アリナは別の小皿にピラフを取り分けて、コリンだけでなくカリーノにも分けてあげた。




 楽しい食事時間はあっという間に過ぎ去り、気付けばあれだけあった数々の料理を残さず完食する。



「お腹いっぱい〜」



「動けない…」



 満腹で席から動けない状態のコリンとカリーノ、マルシャは言わんこっちゃないとばかりに、呆れ気味で2人をテーブルの上から見ていた。



「ふぅ〜、腹八分目って所かな?ご馳走様でしたー♪」



 一方、2人と比べてアリナは余裕そうで満面の笑みを浮かべている。


 この中で1番食べたはずだが、まだ入る余力を残し、かなり大食いのようだ。




「いや、良い食べっぷりだった!あの量は大の男も残すぐらいのはずなんだけどな…全く驚かされるよ!」



 自分の料理を残さず全部食べてくれて、料理人として嬉しかったのか料理長は満足そうに笑った。



「今日は夜も遅い、うちで良ければ泊まってってくださいよ」



「え?そりゃありがたいですけどマスター、良いんですか?」



 そこにマスターから此処で泊まってってほしいと申し出があり、ご馳走になって宿泊までするのはアリナも悪い気がした。



「うちは酒場と宿屋、両方してるのさ!部屋は空いてるし問題無いよ!」



「まさかの商売二刀流と来ましたかぁ、じゃー…2人動けそうにないから今日は此処で泊まりで良いよね?」



 アリナの問いかけにコリンもカリーノも反対する様子は無い、夜も更けている上に満腹で動けない状態となっては考えるまでもないだろう。



「出来ればなるべく早くエノルム王国行きたかったけどなぁ〜」



「ん?エノルム…皆さんそこへ行くんですか?」



 早めに目的地に本当なら行きたかったと呟いたコリン、それにマスターが反応する。



「あそこは今の女王アマンダに代わってから滅茶苦茶ですよ、以前までは無かった高い税金がかかるようになったり、関所も建てて通行料を取るようになったりと…」



「あたしらはまだ良いけど、エノルムに住む人達は大変だろうねぇ…急にお金が凄くかかるようになって生活が苦しいはずだし…」



「…」



 エノルム王国がベッラ帝国に進軍を開始した今、その理由をコリンは分かっている。



 戦の為の金を作ろうと女王アマンダが企んだのだろう、おそらく女王という立場を利用して。



 これを止めなければ多くの被害、そして悲劇は免れない。




「エノルム王国にはやるべき事があるからね、どうしても行かなきゃいけないんだ」



 具体的な目的は彼らに明かさない、事情を明らかにしても混乱させてしまうだけだ。


 確固たる意志を込めてコリンがマスター達に伝えると、マスターはカウンターの戸棚から何かを取り出す。



「何か大事な目的があるみたいなので、これをどうぞ。エノルムに通じる関所を通る為の通行証です」



「通る度に通行料取られるのイヤだからわざわざ高い金出して手に入れたけどね」



 コリンに手渡された通行証、娘を助けた礼もあるがコリンの気持ちが伝わったのか夫婦はそれを託した。



「ありがとう、全部終わったら絶対返すから!」



 2人へと笑顔でお礼を言い、コリンは全て終わったら返しに来る事を固く約束。




 エノルム王国へ向かう準備が思わぬ形で整いつつ、一行はマルシャンで一泊して英気を養う。

此処まで見ていただきありがとうございます。


デカ盛りの飯が美味しそう!この作品を応援したいとなったら作品ブックマーク、☆のボタンをポチッと押して応援いただけると凄い嬉しいです。


カリーノ「美味しくて食べ過ぎちゃった…」


コリン「美味いよねー、港町では海の幸で今回は牛と」


マルシャ「まあ出された飯は良かったよな、あのおばさん良い腕してるぜ」


アリナ「異世界は美味しいご飯ばかりで良いねー!エノルム王国ではどんな食事が待ってるのか…いや、流石に目的は忘れないけど」

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