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誰も笑わない暗い世界、王国へ突入確定!

 馬車は関所を通り、エノルム王国を目指してコリン達を運んで前進。



 関所を通れば王国までは後少しだ。



 後はアマンダの所にどう行くか、それをコリンは考えている。



 エノルム王国に到着すればそれで終わりではない、侵攻して来る軍勢を止めてこの戦を終わらせなければならないのだ。



 その為には何としても女王に会う必要がある、コリンが考えを巡らせている間に馬車の動きは止まった



「通行証、俺が返しに行くけど良いのか?」



「自分達で返しに行くから良いよー、此処まで送ってくれてありがとう♪」



 馬車の手綱を握る男はマスターの友人、なので自分が返しに行った方が効率良いと考えたがコリンは自分で返しに行きたいと、申し出を丁重に断っておく。



 見送った後、改めて町の方に振り返ると大国とは思えぬ程に暗い雰囲気を漂わせている。



 人が歩く姿にも覇気が無く、希望を無くしたように皆が日常を過ごしていた。



 此処までの活気の無さは、解決前のルスティカ村を凌ぐかもしれない。



「めっちゃ暗いねー…解決前のルスティカ村を思い出すわ」



 アリナもこれには添える言葉も思い浮かばず、目の前の光景を眺めている。


 隣に居るカリーノも似たような反応だ。



「此処までなんて…」



 誰も笑っておらず、希望も何も持てない。



 おそらく国による重い税金のせいで、こうなってしまったのだろう。



 コリンの杖を持つ右手に力が入り、表情も何時もの笑顔は無く、厳しい表情となっていた。



「…そりゃ民にきっつい税金を課せばこうなるだろうよ、生活するのがやっとって奴らがどんどんと出て来ちまう」



 この惨状を目にしてマルシャは冷静、今の風景に至るのは当たり前だろうと驚きはしない。



 国が侵略する力を優先した結果だ。




 コリン達が行動しようと歩き出した時、1人の子供がフラフラとやってきて、コリンの胸にしがみついて来る。



「っと…君、どうかしたの?僕に用かな?」



 コリンやカリーノより背の低い子供、ぼさぼさの茶髪、か細い声で性別がどちらなのか判断が難しい。



「何か言ってるみたいだけど、トラブルに巻き込まれて逃げて来たとか!?」



 もしや事件等に巻き込まれて逃げて来たのかと、アリナはコリンにしがみつく子供の声を集中して聞く。




「…お腹…減った…食べ物…分けて…」



 子供は酷く空腹のようで、食べ物が欲しいと物乞いしていた。



 一行がその声を聞いた直後、新たに女性の姿が現れて子供を抱き寄せてコリンから引き離す。



「この子ったら駄目でしょ…!知らない人の所へ勝手に行ったら…すみません…」



 外見が30代程の母親、勝手に子供がコリン達の所に来て迷惑をかけたと思って母親は頭を下げて謝る。



「いや、えーと…その子お腹空いてるみたいですけど、ご飯食べてます?」



「…まともな物は子供も私も食べてません、僅かな食料と水でなんとかやってます…そうでなければ暮らしていけませんから…」



 子供を抱き寄せたまま、母親はアリナの問いに対して目を伏せて答えた。


 母親も空腹のようで声に力が感じられない。



 国の犠牲となった民、それを一行は目の当たりにしてしまう。




 カリーノが抱える袋、何かを言おうとコリンやアリナに視線を向けると2人は揃って頷く。



「あの、良ければどうぞ…凄いお腹いっぱいで余っちゃって…」



 マルシャンの町でマスターが持たせてくれたパンの入った袋、これをカリーノは母子に差し出していた。



「!あ…ありがとうございます…!」



「ありがとう…!」



 母子揃って深く感謝すると、カリーノから袋を受け取り2人は袋からパンを取り出し食べ始める。



「美味しい…お母さん美味しい…!」



「ええ、本当に…!」



 久しぶりのまともな食べ物、柔らかなパンを2人とも美味しさに感激して涙を見せる程だった。



 それだけ2人の生活が苦しい事を物語るに充分だ。




「稼いでくれる旦那さんとかはいないのかな?」



「夫は兵士の1人として…ベッラ帝国に侵攻する軍に加わり、今此処にはいません」



 パンを1個母親が食べ終えたタイミングで、アリナはこんな時に大黒柱は何をしてるのか気になり尋ねた。



 彼女の夫は軍に加わり、侵攻に参加していた。



 つまりオッソやザリー達が足止めしている軍勢、その中に居るのだろう。




「夫はこの戦いが終われば大金が兵士達に支払われて今より暮らしが楽になる、それで今回の戦に参加したのです…そうしなければ国に全て奪われてしまう…!」



 家族を守る為に自ら危険な戦地へ飛び込む、女王の望む事に協力するしか道は無かったので、男は参加を決意していた。



 パンを食べる子供の頭を母親は優しく撫でる。




「こいつは民だけじゃなく兵士の方も結構追い詰められてるのが多いかもな、それしかねぇから戦いに行っちまうって奴らが…」



「そんな事は許されない」



 兵士達も戦に参加しなければならない理由があり、侵略する者の中には戦いを望まない者も多く居るのかもしれない。


 マルシャの言葉を遮る形でコリンは強く言い切った。



「誰も笑えなくて、食べられなくて、苦しいばかり…こんなの絶対間違ってるよ」



 コリンが望むのは皆が笑ってのんびりまったり暮らす世界、だが今見えている世界はそれと真逆だ。



「うん、見てて気持ちの良い世界じゃないって事は確実。早めに済ませた方が良いよね」



 普段は陽気なアリナの表情も険しい、早くアマンダに会わなければ最悪、餓死する者が出て来たり暴動が起こってもおかしくない。



 パンの袋を持った母子は何度も礼を言いながら、一行と別れた。



「でも…会うにしても女王のような偉い人が、会って話を聞いてくれるのかな…?」



 アマンダは国のトップ、そんな相手と会って話をするのは簡単じゃないと思い、カリーノはコリンの方を見る。



「普通に行っても、門番から帰れと言われて門前払いで終わると思うよ」



「だとしたら…お前のやりそうな事はアレだ」



「アレ?」



 コリンがどんな方法でアマンダの所まで行こうとしてるのか、彼と長い付き合いのマルシャは分かっているようだった。



 アリナは次のコリンの言葉を待つ。




「強行突破で一気に女王の所へ行く」

此処まで見ていただきありがとうございます。


これからのコリン達の動きが気になる、この作品を応援したいとなったら作品ブックマーク、☆のボタンをポチッと押して応援いただけると凄い嬉しいです。


アリナ「あーもう、こういうの良くない!ホント良くない!これ絶対解決させなきゃ駄目なヤツ!」


カリーノ「この分だとあの母子だけじゃなく他にも居そう…」


マルシャ「だからあいつはグズグズしちまう作戦は取らず、一気に攻めようって手に出た訳だ」

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