大軍を華麗に飛び越え東の大陸へ、何か怪しいのおらん?
「うん、上手く行ってるねぇ」
「当たり前でしょ、あたしが魔法をかけてやったんだから」
大型軍艦が闇雲に砲撃を繰り出している所を、遠くの安全な位置から双眼鏡でアリナは見届けていた。
隣ではザリーがドヤ顔でチョコレートを頬張り、存分に褒美を味わっている最中だ。
「イルゾーネがよーく効いてるねあれ、今の彼らは僕らの船の無数の幻を見てるはずだよ」
エノルムの軍勢があの状況に陥ったのは、コリンとザリーが2人で協力して、辺りの海一帯にイルゾーネという幻覚魔法を広範囲に唱えたおかげだ。
共に優れた魔力を誇る2人だからこそ、あれ程の規模の軍艦を惑わす事に成功していた。
「作戦成功だ、これで連中の弾や船の燃料も無くなり進軍不可能に追い込む事が出来るだろう」
「流石オッソ、ありがとうー♪」
「私の協力無しじゃ出来てなかったんだから感謝なさい!」
「勿論ザリーにも感謝してるよ、今度はチョコレートパフェでも奢ってあげよっか♪」
戦術に長けたオッソのおかげで争わずして、巨大な軍艦を止める事に成功。
再び港へ引き返し、補給するのにも一苦労で進軍をすぐに再開するのは不可能だろう。
オッソだけでなく、偵察で動いたり共に魔法を唱えてくれた、ザリーの活躍もコリンは忘れていなかった。
「だからチョコレートで餌付けしようとすんじゃないわよ!奢ってもらうけど!」
「(奢られるんだなぁ)」
ザリーの姿を見てアリナは微笑ましく思えて、つい笑ってしまう。
「足止め成功したんならのんびりしてる時間は無ぇぞ、さっさと向こうの本拠地乗り込もうぜ」
「なら小型船を使え、俺達は連中を見張っておく。何か動きがあったらザリーを向かわせる」
「ホント悪魔使いが荒いんだからー!」
今が前に進む時、マルシャの言葉を聞けばオッソは幽霊船にある小型船を使えとコリン達に託す。
「ありがとう2人とも、頼んだよ」
エノルム王国の軍艦はオッソとザリーが見張ってくれるので、安心して先に進める。
コリンは改めて2人に笑顔を向けて感謝した。
帝国の進軍を止めるのも目的の一つだが、一番は女王アマンダの所へ向かい侵略を止めてもらう事。
それをしない限り戦に終わりは来ないだろう。
「何故だ!?何発も砲撃しているはずなのに何故敵が無数に湧いてくるのだ!?」
「わわ、分かりません!魔物の軍勢がこれ程の数だとは…!?」
何度も魔物の船を沈めようと砲撃を繰り返し、続けているが相手は未だ健在。
これにはガンドも副官も困惑してしまう。
4隻の船も同様に惑わされ、ありもしない敵の船へと向かって砲撃を放ち続けている。
弾の数に燃料は確実に減り続け、船が無力化されるのも時間の問題だろう。
彼らが幻惑の魔法にかかっている事に気づく様子は無く、コリン達が乗る小型船は悠々とエノルムの軍勢を越えて、東の大陸を目指して前進していた。
西のピアーチェ大陸から東にあるグロース大陸へ、オッソの手下であるスケルトンが操縦する船の上でコリン、アリナ、マルシャはそれぞれ東の大陸があるだろう方向を見据える。
「東の大陸かぁ、そっちはあたし行ってないから楽しみでもあるんだよね♪」
「観光に行くんじゃねぇんだぞ」
主にピアーチェ大陸を巡ってひたすら戦い、大抵の敵を無双する程にレベルを上げていたアリナ、未知の大陸で冒険心を刺激されているようだ。
旅行気分かこいつ、と本来自分達の監視役なはずの女勇者をマルシャがじぃっと見る。
「僕も話に聞いてるだけで行ってないからなぁ、確かエノルム王国はグロース大陸の中央付近に位置していて…上陸から結構遠いねこれ」
地図で東のグロース大陸にあるエノルム王国、その位置を思い出しながらコリンが話すと、上陸出来てもすぐには辿り着かない距離というのが分かった。
「このまま行きゃ港町ファーレンに到着だ、そっからどうするかは…現地で考えるしかねぇよな。歩き、または馬車…大体そんな所だろ」
「うん、行った事無いから魔法は無理だから移動手段はそれぐらいだと思う」
風を受けながらコリンは、自らの肩に乗るマルシャとこれからについて話し合う。
一度も行った事が無い場所の為、コリンの移動魔法が発動する事は不可能、なので移動について考える必要があった。
「馬車かぁ〜、東だといくら取られんのかな?酷かったら悪〜いボッタクリとかあったりするからねー」
「ボッタクリって何?」
「普通ならこれぐらいの金で済むはずが沢山の金を要求して力づくで奪い取る悪い事だよ、大きな町とか特にありそうだし」
初めて聞いた単語に興味を持ったコリンにアリナは説明。
最初は現金を要求せず、自分達を運んでいる途中かまたは目的地に付いてから法外な請求をしてくる、馬車でボッタクリをやるならそんな可能性が考えられた。
「凄く悪い事じゃん、ボッタクリって!」
「そうそう、帝国じゃ遭遇しなかったけど気をつけようねー」
2人が話している間に小型船は東の大陸へ近づいて来た、スケルトンの乗る船でそのまま上陸したら目立つので、此処はプエルトで会った時のように人間へと化けておく。
潮風が一行を歓迎するように吹くと、港に小型船は停泊してコリンとアリナは船を降りる。
「助かったよー、オッソによろしくー♪」
船乗りに化けたスケルトンへと満面の笑みを見せながら手を振り、彼が操縦する小型船は幽霊船に戻る為、再び動き出す。
帰る手段はコリンの移動魔法があるので、船が無くても問題無い。
「とりあえずお腹空いたから酒場行って何か食べようか?」
「良いね、丁度ご飯時だし行こう行こうー」
「呑気なもんだなぁ」
腹の方は大変正直であり、アリナの腹は食事を欲している。コリンも何か食べたいと思っていたので丁度良いタイミング。
マルシャがぼやく中、2人は食事出来る場所を目指す。
「…おい」
「おう」
その2人を遠くから複数の人物達が見ており、コリンとアリナの後を追いかけて行った。
東のグロース大陸に着いて早々、一行に怪しい影が迫る…。
此処まで見ていただきありがとうございます。
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アリナ「さあー、こういう港町だと海の幸かなぁ?寿司…は流石に無いだろうけど」
コリン「海沿いだと魚のフライとかエビが美味しいよー♪」
アリナ「あ、絶対美味い!これは食べ歩きも良いかもねー!」
マルシャ「グルメ旅なってんじゃねーか、これそんな話じゃねぇからな?」




