迫り来る大国の巨大軍艦、SFじゃないよ!ファンタジーだよ!
「疲れた〜…!」
幽霊船の甲板にて、疲れた姿でザリーが座り込んでいる。
空からとはいえ広大な海を往復して回り、羽を動かし続けていたのだ。
サキュバスが空を飛ぶのも楽ではないらしい。
「お疲れー、プエルトで買って来たチョコレート食べる?」
「食べる!」
プエルトの町でコリンが密かに買っていた、手のひらサイズの船型チョコレート(ミルク味)を見せると、ザリーは奪い取り、かぶりつく。
「あ〜、甘い物マジ最高〜♡これ発明したの天才だわ〜」
口の中で広がる甘い味に癒され、ザリーは一気に幸せな気分となっていた。
「休憩の所を悪いが、偵察の結果はどうだった?」
「ん〜?巨大な戦艦が1つあって後はこの船ぐらいのが4隻程度あったわよ、夜に何か指揮官っぽい奴が偉そうに演説してて明日に備えろみたいな事言ってたし」
オッソから偵察の結果を聞かれると、ザリーはチョコを食べながら話す。
あの夜見た限りの光景、それを思い出しながら思っている事も遠慮なく言ったりと付け足しもいくつかあった。
「5隻…その中で主力の船が1隻か…」
ザリーの話に耳を傾け、オッソは腕を組み考える。
「こっちの船は1隻だけ、だよね?実は他に幽霊船いっぱいあるなんて事は」
「小型船はいくつかあるけど、これぐらいの船はオッソの持つこれだけだったと思うよ」
「敵の方が巨大で数が多いのはやっぱよくあるかぁ、ここでも例外じゃなかったー」
他に味方の船が無いかアリナは期待したが、魔王であるコリンが知る限り他の船は無い、援軍は無いだろう。
「まともに行ったら多分、戦艦の前に潰されて終るよね?」
「そりゃそうでしょ、見てきたけどバカでかい船よ?大砲とかいくつも付いていたっぽいし」
「わーお、剣と魔法の世界で近代的な兵器の登場〜」
「相変わらずよく分かんない事言ってるわねこの勇者は」
今乗っている幽霊船の性能について詳しくは知らないが、正面からぶつかれば勝ち目はかなり薄い。
それは実際に相手の戦艦を見てきたザリーが断言出来る。大勢の軍を運ぶだけでなく海上で遭遇した敵を倒す事を想定し、大砲を搭載していた。
元の世界で色々な戦艦をゲームで見てきたアリナにとって、容易に兵器を想像する事が出来る。
「これは戦だ、ルールなど無いし真っ向から敵を迎え撃つという事は誰もやらない。だから此処で出来る最適な手段は当然選ぶ」
幽霊船の船長オッソ、待ち受けるであろうエノルム王国との海上戦について説明が始まった。
「最適な手段、ていうと?」
「決まっているだろう、こちらの数が少なく相手が圧倒的に多いのならば…増やして惑わせてしまえばいい」
どんな手段で行くのか、コリンの問いに対してオッソが答えを出したのは攪乱戦法。
向こうが圧倒的な戦力を有するのならば、それに劣るこちらは当然正面からぶつかる事などしない。
「いやいや大将大将。数を増やすって簡単に言うけどさぁ、どうやってよ?」
「居るじゃないか、うってつけの者達が」
「ん?」
増やして惑わす詳細についてアリナが気になり、聞き出そうとすればオッソの視線はコリンとザリーに向けられていた。
作戦の要となるのは、このちびっ子コンビのようだ。
巨大な軍艦が海上を先頭で突き進み、後ろから4隻の船もついて行く。
エノルム王国自慢の戦艦はプエルトを目指し、進軍スピードを速めていた。
「うむ、何時乗ってもポセイドンの乗り心地は素晴らしいな!まるで我らが海の王者となった気分ではないか!」
「全くその通りでこざいますねガンド様!」
全身を黒い鎧に包む軍の司令官、ガンドはご満悦そうで専用の玉座に座って窓越しに映る海の景色を眺めていた。
それに副官の男が腰巾着のように、側で司令官の機嫌を取るよう務める。
「我が軍やポセイドンにかかればプエルトなどすぐに占領し、帝国が待ち構えていたとしても返り討ちに出来ますからね。この大軍ならば」
「当然だ、エノルム王国に加えて複数の同盟国も居る。帝国に魔王軍、なんだったら2つ纏めて我々が葬り去る事も可能だろう!」
「おお!世界の頂点に立つと同時に人々の脅威から救い英雄となる、素晴らしいですねぇ!」
彼らにとっては帝国と魔王軍が争い、どちらが勝とうが両方生き延びていようが関係無い。
エノルム王国が全てを片付けて国を手にするからだ。
それが自分達の上に立つ女王アマンダの望みであり、ガンド達は従い実行するのみ。
「ガンド司令官!前方に怪しげな船影が見えました!」
「何?」
戦艦の操縦席に座る兵の1人が目の前に見えた影を視界に捉え、迅速にガンドへ報告をしていた。
何事かと考える間もなく、もう一人の操縦席に座る兵が叫ぶ。
「船影がこちらに接近!…何だ?あのボロボロで怪しげな船は!?」
「魔物です!骸骨が乗っています!」
報告が続けてガンドの元へ届き、腰巾着な副官は情報を整理していた。
「あの怪しげな船は魔物達…こちらに来るという事は敵と見て間違い無いでしょう!」
「この世に未練を残す化け物達か、どうやら強者と弱者の区別もつかない程に理性を失っているらしい。よかろう…」
ガンドは重い腰を上げて立ち上がり、前方に見える敵と見える船へと向かって叫ぶ。
「ウォーミングアップだ、ポセイドンの力を見せつけろ!魔物達を海の藻屑にしてやれ!!」
「了解!砲弾準備!」
攻撃の指令をガンドが下し、操縦席の兵士がエンジン室へと伝令。
人力で大砲の筒に砲弾を込めるシステムだ。
発射準備は進み、戦艦の正面に付けられているメインウェポン、大型大砲の砲口は真っ直ぐ相手の船に向いていた。
「撃てぇー!!」
ガンドの発射合図と共に砲撃は放たれ、砲弾が一直線に飛んで行く。
凄まじい爆発音と共に、大きな水柱が立ち上がり、大砲の破壊力を物語っていた。
「ハハハ、やりましたな!一撃で終わりですよ!」
「当然の結果だ、いちいち騒ぐ事ではない」
「はっ、これは失礼を」
一撃で魔物の船を沈め、副官が高笑いするのに対してガンドは玉座に改めて腰掛ける。
丁度良いウォーミングアップとなり、船が再び動こうとした時。
「!?左前方に船を発見!」
「こちら右前方からも船が!骸骨の姿が見えます!」
「何だと!?」
片付けたかと思えば、操縦席の兵士達が次々と新たな敵の船を発見。
これにはガンドも驚く事態となった。
「新手か?小癪な…構わん!向かって来る魔物の船を全て沈めるのだ!」
「はっ!」
いくら来ようが軍艦ポセイドンの敵ではない、自分達には絶対的な力がある。
魔物の船が湧いて出ても怯まず、ガンドは撃退の指示を出して再び大砲は稼働していく。
他の4隻の船も付いている、自分達の勝利は揺らがないと信じていた。
コリン達の罠に陥っている事に気付かないまま…。
此処まで見ていただきありがとうございます。
海上戦はどうなっていくのか、先の展開が気になったり、この作品を応援したいとなったら作品ブックマークや☆マークをポチッと押して応援いただけると凄い嬉しいです。
コリン「軍艦って格好良いねー♪」
アリナ「おー、流石男の子。ああいうの心惹かれちゃうんだ?」
コリン「オッソ、幽霊船もあんな感じにはー…?」
オッソ「性に合わん、却下だ」




