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大ベテランが語る魔王の過去、気になる事言いまくりですけど!?

「(う〜、ベッドに入ったのは良いけど…寝づらい!)」



 暗闇に包まれた船内、1つのベッドがある寝室でアリナは横になっていたが、中々夢の世界へ旅立つ事が出来ない。



 幽霊船という今の環境では無理もない話だろうが。



 眠れないのでアリナは火が灯されたロウソクを右手に持ち、部屋を出て行く。




「あ、お疲れで〜す…」



 暗い船内の通路を通れば、すれ違う骨だけの魔物達。何も知らなければ敵として対峙しただろうが、味方の今は軽く会釈し、通り過ぎるアリナ。



 船内から甲板へと出れば、そこに海を眺めながら酒瓶を左手に持つ者が見えた。



「やー船長さん、夜酒をお楽しみで?」



「勇者か…まあそんな所だ」



 駆け寄って来るアリナの気配に気付き、一瞬視線を向けるもオッソはすぐに海の方へと向き直る。



「しかしお前も変わった人間だ、魔王の敵という存在のはずなのにコリン達と共に同行して一緒になって王国を止めようとしているとはな…普通なら王国に協力して我々魔王軍を一網打尽にするだろう」



「うーん、何か状況的にエノルム王国って悪そうだし?攻め込んで踏み潰そうとしてる侵略者に加担するよりも、火事を消したり盗賊団や魔物達を懲らしめて改心させてるコリン君の方がよっぽど良い事してるからさぁ」



 立場としてアリナは勇者、コリンは魔王。



 魔王軍は本来なら討伐するべき敵だが、これまでの行いを見る限り倒すべき要素など無い。


 むしろ戦を仕掛けようとしているエノルム王国、そちらの方がアリナには勇者として倒すべき敵だと映って見えた。



 魔王を監視する、そういう役割で同行しているが何時の間にかコリンと共に立ち向かい戦う、その辺りで言えばアリナは変わり者と言えるだろう。



「コリンは弱いもの虐めが大嫌いでな、今でこそセオンは魔王の右腕と言われる程までになっているが昔は兄のゼオンが優れてるのに対して、落ちこぼれで何をやっても駄目だと虐げられていたものだ」



「へえー、あのイケメンが…意外だなぁ」



 容姿端麗にして魔王軍の参謀的存在、アリナの中でセオンはそんな印象だったが、オッソから聞かされた意外な過去に驚きを見せる。



「セオンを虐げる者達をコリンは全て残らず懲らしめた、それからだな。セオンが目覚ましい成長を見せて魔王の右腕にで上り詰めたのは」



「うんうん、虐め良くない、カッコ悪い、超ダサい、マジ最低、コリン君大正義だねぇー。そのおかげで1人のイケメンが誕生した訳だ」



 懐かしそうに振り返るオッソに対して、うんうんと相槌でアリナが返す。


 コリンの行いはとても魔王とは思えず、むしろ正義の味方じゃないかと思えた。




「正義…か、そう見えるのも見る者によって色々違って来る。例えばコリンの今王国を止めようとしている事が、帝国や多くの民を救う善行になる一方で阻止された王国や民にとって悪行だとすれば」



「悪行って、コリン君悪い事何もやってないでしょー?」



「だが全ての者からそう見えるとは限らん、その者にとっての正義が悪で逆もまた然り、人によっては色々違って来るのだ。それが正しいのか、間違ってるのか。コリンの善行も取り返しのつかない悪行になってしまうのかもしれない」



「(うーん、展開的に何かすっごいフラグっぽいなぁ)」



 オッソの言わんとしている事はアリナに何となく伝わっていた、何が正義で何が悪なのかは人によって色々変わる。


 良い事をしていたつもりが、実は人によっては悪い事だと。



 価値観は人によって千差万別、だから争いは無くならないのかもしれないと重く考えてしまう。


 元の世界で紛争についての嫌なニュースがアリナの中で過って来る。




「悪い癖だな、気の遠くなる程の年月を現世で過ごしたせいか…」



 人と争いについて、ふとそんな考えになってしまう。酒瓶を傾けて飲み干し、オッソは軽く笑った。



「多分世界中のエラーい人がすっごい議論を重ねても、明確な答え出ないっぽいけどー…あたしはあたしの意思でコリン君を助けますよ、彼が間違ってたらそん時はそん時、今考えてもキリがないからさ?」



 頭いったぁ、と言いたげに自らの頭を右手でさすりつつ、アリナはコリンに協力すると言い切っていた。



「お前はコリンを監視するのではないのか?」



「うん、監視しながら助けるからー」



「…無茶苦茶だな、俺の知る限り勇者でお前のような者は誰一人としていなかったと記憶している。むしろ…」



 監視する身でありながら、対象者を助けるという矛盾。それでもアリナはコリンと共に行き、戦う事に変わりは無い。



「むしろ?めっちゃ意味深なんだけど?」



「いや、忘れろ。何でもない、それより人間の身で長く夜風に当たるのも良くないだろう、戻った方が良い。見張りは俺と他の連中で充分だ」



「えー、何かありそうー」



 むしろの後が気になったが、オッソからそれを教えてもらう事は叶わずアリナは船内へと戻って行った。






「でっかぁ〜…」



 同じ頃、上空を自身の羽でパタパタと飛んでいたザリー。



 彼女は空から巨大な戦艦を見つけ、見下ろしている。




「諸君!明日はいよいよピアーチェ大陸へ向けて出航する!我がエノルム王国が誇る戦艦でまずは港町を占領!その後にベッラ帝国へ進軍を開始だ!」



「はっ!」



「各自最大限の力を発揮し、エノルム王国に!我らの偉大なるアマンダ女王陛下にこの戦の勝利をお届けするのだ!諸君、明日からの航海と戦いに備えてたっぷりと英気を養いたまえ!」



 軍を率いる指揮官らしき人物、周囲と比べて大柄で全身が鎧に包まれ、黒いマントをはためかせている。


 巨大な戦艦の前で声を大きく演説を行い、軍の士気を高めていたようだ。



 今宵はどうやら船には乗らず、港でエノルムの軍は休むらしい。




 それを見届けたザリーはUターンし、幽霊船のある方へと向かって再び飛んで行った。

此処まで見ていただきありがとうございます。


巨大な戦艦とどうなるか、この後の展開が気になる、この作品を応援したいとなったら作品ブックマークや☆のマークをポチッと押して応援いただけると凄い嬉しいです。


コリン「僕あんま出番無いなー…主人公僕だよね?密かにバトンタッチとかしてないよね?」


アリナ「してないと思うよ、出してない作者が力不足なだけで」


マルシャ「それは作者にとってすげぇ耳が痛いだろうよ」

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