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幽霊船でディナーもいいものだ

「まずは客人、アリナと言ったか。我が船へようこそ」



「あ、どうもご丁寧に」



 甲板から船長室へと招かれたコリン達、そこで主のオッソが改めて初対面のアリナへ挨拶をする。



 船は一般的な客船から禍々しい雰囲気纏う船へと変貌し、彼らは幽霊船の真っ只中に居た。


 人前では船や乗組員共々本当の姿を隠し、人々の日常に溶け込んで過ごしていたのだ。



「お前の事は聞いている、変わり者の勇者だとセオンの小僧が言っていたからな」



「コリン君の事を坊ちゃんにセオンを小僧とか言って、すっごい実力者っぽいですねぇ」



 コリンやセオンと親しい感じがするオッソ、アリナは彼が魔王軍の中で相当上の立場に居るように思えた。



「僕が生まれる前から先代の魔王軍に居たからねー」



「へー…て事は900年以上前から!?めっちゃベテランの人じゃーん!」



 コリンが生まれる以前から魔王軍の一員、つまりオッソは確実に900年以上は在籍している計算になる。



 魔物達にとってはたいした年月ではないだろうが、随分と古株の魔王軍のようだ。



「本当に時が経つのは早いもんだ、赤子だったコリン坊ちゃんがもうこんな大きくなったんだからな。ザリー嬢ちゃんもあんな小さかったのに」



「あたしはもう大人のサキュバスよ、子供のコリンとは違うから」



 ふいっとそっぽ向いて自分と似た背丈のコリンより、大人だとザリーは言い張る。


 かなり子供だけどな、とアリナは笑いを堪えるのに必死だ。




「で、此処にわざわざ世間話をする為に魔王自ら船に乗り込んだ訳じゃあるまい?」



「まあね、…東の大国エノルムがベッラ帝国へと進軍を開始した事は知ってる?」



「何やら東の動きが最近活発化して来ているのは伝わったが、そういう事か。エノルム王国が…」



 此処までコリンが駆け付けた理由について話し、オッソは両腕を組んで納得したように頷いていた。



「そんでこいつは進軍して来る連中を止めてエノルム王国に乗り込もうとしてるって訳だ」



「ベッラ帝国の時といい、仮にも魔王なら玉座で構えればいいのに自分でズカズカ行っちゃうんだから。そんでセオン様振り回されるし!」



 マルシャの説明の後に、ザリーから不満が飛び出して彼女の顔は不機嫌へと代わっていく。


 それでセオンに中々会えなくて、イライラしているようだ。




「大体把握した、つまり俺達はこの海を渡って攻め込んで来るであろうエノルム王国…その大軍を止めれば良い訳か」



「結構大変な仕事になっちゃいそうだけど、行けるかな?」



「見くびってくれるなコリン坊ちゃん」



 目を閉じて話を整理していたオッソ、出来るかというコリンの問いに対して、閉じていた目を開きコリンの方へと向けた。



「このキャプテンオッソ、海上において常勝無敗という事を忘れたか?エノルム王国のひよっこ共などに遅れは取らん」



「相変わらず頼もしいねー♪」



 大国であるエノルム王国の兵、それをひよっこと切って捨てるオッソからは絶対的な自信が見えて、コリンは頼もしいと笑顔を彼に向ける。



「んで、具体的にどうすんの?そんだけの大国なら巨大な戦艦の一隻や二隻ぐらい用意しそうだし」



 頼もしそうな雰囲気のスケルトンに、アリナはどうやって進軍を止めるのか気になって尋ねる。


 相手は大国、巨大な船ぐらいはいくつも用意するだろうなと、彼女の中でイメージは膨らみ描かれていた。



「大軍となればそうだな、多くの兵を運ぶ為に大型の戦艦などは欠かせないだろう。ザリー」



「へ?」



 突然オッソから話を振られ、ザリーは気の抜けたような声を発した。



「敵を知れば百戦危うからずだ、お前の自慢の羽で飛んで向こうの様子を探って来てもらえるか?セオンの小僧も居たらそれを望むはずだぞ」



「!?そ、そうなの?」



「(あれ、何かこの子一気に扱いやすい感じしてきた?)」



 扱いを知り尽くしているようで、オッソはセオンの名を出して上手く絡め、ザリーに空からの偵察を頼む。


 これにアリナは扱いやすい子なのかもと、ザリーに対する認識が改まりつつある。




「しょうがないわね、この中で普通に空飛べんのはあたしぐらいだし、いっちょ行ってくるわ!セオン様の為に!」



 あくまでオッソに頼まれたからではない、セオンに貢献する為に動くだけ。


 自らに言い聞かせ、ザリーは部屋を出て外に出れば悪魔の羽を広げて暗闇に染まる空へ飛び立ち消えて行った。




「我々はこの海で過ごしていたが、今日まで変わった様子は無い。大型船が動くとなれば海の生物達も騒がしく、動きが活発化される物だが一切無いという事はエノルムの連中がまだ海上には来ていない証拠だ」



 オッソ達の船が海上に居たが、海で不自然な事は特に起きていない。


 地図の位置としては彼らがベッラ帝国に攻め込んで来るのであれば、空を飛ばない限り海を越えて来るしか方法は無かった。



「何時来るのか分からない、こっちはともかく生きているお前達は今の内にしっかり休んでおいた方が良いぞ」



「だな、そんな何時も警戒してたら持たねぇだろうし」



「じゃあ遠慮なく休ませてもらおうかなー」



 不死の身であるオッソ達は消耗の心配が無用、それに対してコリン達は休む必要がある身。


 オッソの好意に甘え、コリン達は幽霊船で英気を養う事となった。




「海上で取れたて新鮮な海の幸だぁ」



「おお、コック帽とか被って生きてる頃は名料理人だったんだねー」



「俺は元農家だぁ、料理好きでコック帽は気分の問題だぁよ」



「あ、そうですかー…」



 何時の間にか最初の頃はスケルトンに驚いていたが、アリナはすっかり慣れたようで、コック担当のスケルトンが振る舞う魚と海老の料理を堪能する。



 メニューは白身魚のムニエル、海老の炒め物だ。



「美味いねぇ〜♪海老がすっごいプリップリで魚も骨無くて食べやすいし!」



「骨だけになっちまったけど俺、骨抜きは得意中の得意だぁよ」



「流石ゼオンに鍛えられただけあるよー、美味しい♪」



「あ、道理で美味しいと思ったらそういう事」



 アリナと共にコリンも同じメニューを味わい、ナイフとフォークで魚や海老を切り分けて食す。


 魔王軍の料理長ゼオンの元でコックとして修行を積んでいたスケルトン、おかげで料理の腕は上がりコックを任されるまでに上達。



 不死の軍団で振る舞う機会は早々無いが。



「ん〜、流石アビッソフィッシュは良い味出ていて美味ぇや」



 マルシャにも白身魚が出され、美味しく味わっていた。この魚は密かな好物のようだ。




 一行は幽霊船にて一晩を過ごす。

此処まで見ていただきありがとうございます。


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アリナ「船上のレストランとか憧れたもんだけど、それが幽霊船で叶うとは思っていなかったな〜」


コリン「料理美味しいから僕は好きだねー」


マルシャ「俺もこの魚食えるならマジ推し」


アリナ「魔王も猫も高評価な幽霊船レストランとなっておりますー♪」

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