船に乗ったらとんでもない事に!?
「おおおー!?気分はロデオっぽいかもー!」
魔界馬ダークホースの背に乗って揺られ、アリナは振り落とされないように踏ん張り、しっかりとザリーの腰にしがみついていた。
「ちょ、勇者!ひっつき過ぎ!」
ダークホースの主として操り、目的地まで運ぶザリーが自分の腰に抱きついて来るアリナを鬱陶しそうに、文句を言いながらも手綱は緩めない。
「騎士達の馬より速ぇけど、相変わらず荒っぽいぜ!」
「でもこれならすぐだよー!」
前のザリーと後ろのアリナに挟まれる形で乗るコリン、その腕の中でマルシャは抱えられている。
「にしても止めるったって、エノルム王国の軍がどんなもんか知らないけど!一体どうやって止めるのー!?」
「それについてはちゃーんと考えてるから大丈夫!」
馬上で風を受けながら、アリナがコリンへとエノルム王国の進軍をどうやって阻止するのか、気になって尋ねたがコリンには考えがあるらしい。
詳しい事は港町プエルトに着けば明らかになるだろう、ダークホースは目的地へと一直線に疾走。
港町プエルト
ベッラ帝国の城下町に負けず劣らずの大きな町、海沿いという事で新鮮な海の幸を使った飲食店があり、港のほうには大きな船がいくつか停泊しているのが見えた。
東の大陸への玄関口であり、此処から東の大陸行きの船が出ている。
「港町かぁ、こういう所は荒っぽい海の男とかそういうのがすっごい集って酒飲みまくりそうだよねー」
「何よそのイメージ」
町の手前まで到着すれば、ダークホースはザリーから労いを受けながら地面へと沈み去って行く。
海が近くにあり、潮風を受けるとアリナは港町に対して浮かぶイメージを語っていた。
豪快な酒飲みで荒っぽい船乗りの男達が集う、それがこういう異世界で彼女が抱くイメージである。
そんなアリナにザリーが呆れる中、コリンは辺りを見回していた。
「騒ぎになっていない辺りを見ると、まだ此処までエノルム王国が進軍して来るっていうのは知らなそうだね皆」
「だな、何の危機感も無く呑気に暮らしてる人間ばっかだぜ」
コリンとマルシャが会話を交わす、2人の視線の先には港町で多くの人々が行き来する活気溢れた町の姿。
進軍を知っていたら、こんな呑気に日常を過ごしてはいないはずなので、彼らがエノルム王国の進軍を知っている確率は低いと見ていいはずだ。
「向こうが攻めて来たら此処が戦場になっちゃうだろうし、多くの被害は免れそうに無いねー…」
「…」
それぞれが当たり前のように過ごす日常、これがもしエノルム王国の軍が此処まで進軍して来て争いになれば、日常は消えて地獄と化してしまうだろう。
普通に過ごす人々が泣き叫び、絶望する。今見ている活気に満ちた光景がそんな変化をしてしまうのは、コリンもアリナも見たいとは決して思わなかった。
避ける為にはなんとしても向こうの進軍を、その前に止める必要がある。
「で、何処行くのよ?」
すっかり同行する気のザリー、普段城で留守番の彼女はなんだかんだで外の世界を楽しんでいるようだ。
普段はサキュバスで、翼や尻尾が出た状態だが今は引っ込めている。
コリンと並べば同い年の人間の子供、という感じで魔族とはまず見られ難いだろう。
「勿論港だよ、彼が居ると思うからさ」
「あー、あいつ…何時の間にこっち来てたんだか」
何の事なのか、アリナだけが理解出来ておらず首を傾げる。
港に居るコリンの知り合いの元へ行くようで、ザリーもマルシャもそれが誰なのか知っている様子だった。
賑わう町中をコリン達一行が歩く姿は一般的な旅人であり、魔王や勇者と思う者など誰一人としていない。
おかげで目立つ事もなく、港に到着までそう時間はかからなかった。
港では船乗りらしき男達が荷物を船に運んだり降ろしたりと、忙しく働く姿が見える。
この中の誰かに用事がある訳ではない、コリンは真っ直ぐ停泊している大きな船へと向かう。
「や、お疲れ♪」
「!これは、魔王様。お疲れ様です!」
知り合いなのか、躊躇なくコリンは船乗りらしき男へ声を掛ける。
見た目は他の働いている船乗りと変わらぬ風貌をした男、人間のように見えるが、彼はコリンの姿を見れば勢い良く頭を下げていた。
「訳あって力が必要になってさ、乗せてくれる?」
「勿論です…ん?そっちの女は誰ですかい?」
船乗りの男はアリナの存在に気付き、そちらへと視線を向ける。
「あー、あたしはただの仲間です♪」
「はあ?」
「本当だよー、この人も乗せてね?」
「はっ!了解!」
アリナは勇者と此処で言う事なく、コリンの仲間だと笑顔で言い張って、それを男は訝しく見ていたがコリンの一声であっさりと同乗を許可する。
「船が出るぞー!!」
威勢の良い男の声が港に響き渡り、コリン達を乗せた船は港を離れて出航。
大海原を目指し、船は動き出した。
「まさか人間の方にも魔王軍の一員が居たなんてねぇ、それもこんなでっかい船の持ち主って」
甲板にて大型船による船旅を楽しむアリナ、魔王軍は魔族や魔物だけかと思っていたが、人まで居たのは意外だとビックリしている。
「ん?人間?」
「はあ?」
「何言ってんのよあんた」
人間が魔王軍というアリナの言葉に対して、魔王軍の者達がいずれも反応を見せていた。
人間なんか居たか?のような雰囲気だ。
「ええ?だってさっき船乗りの男の人が居たじゃん?」
「俺の事かぁ?」
そんなはずはないとアリナがさっきの男を思い浮かべ、話していると背後から噂をすればである。
「そうそう、お兄さんが人間だってー…」
男の声が聞こえ、アリナが振り返った時。
「これでも人間かぁ?」
声は先程聞いた物だが、風貌はガラリと変わっていた。
明らかに人ではない、その姿は頭から足に至るまで骨だけの状態だ。
「サプライズスケルトンー!?」
驚きながら後ろに後退りしまくりな、オーバーリアクションのアリナ。
流石に後ろから骨だけの者に声をかけられ、立っていれば誰でも驚くが、アリナの驚き方も独特だった。
「何か賑やかな嬢ちゃん来たなぁ」
「ザリーがデカくなったバージョンっぽくね?」
「ちょっと!あたしこうなんの!?こんな変わり者に!?」
他にも続々と男と同じ全身が骨、にも関わらず動いている者が甲板に続々と現れ、気付けば周囲は人型の骨で囲まれていた。
ザリーは知り合いのようで、骨達に向かって怒鳴っている。
「また変わった客人を連れて来たな、コリン坊ちゃん」
そこに骨達が道を開けるように左右へ移動、退かれた所にゆっくりと歩み寄って来る影があった。
黒いフードを被っており、マントのような状態で風によって揺れ動き、周囲と同じく全身が骨の状態。
違うのは目が人と同じようにあり、鋭い眼光の右目に左目は眼帯が付けられている。
他の骨と比べても明らかに威圧感があった。
「やあオッソ、元気そう…ていうのは不死の君には変かな?」
「ああ、俺達は病気や怪我と縁など無いから常に何時も通りだ」
コリンと親しく話す魔物、彼も魔王軍の一員。
スケルトンのオッソ、この船の船長を務めておりキャプテンオッソと呼ばれる実力者だ。
船は何時の間にか不気味な雰囲気漂う幽霊船へと変貌を遂げていく。
此処まで見ていただきありがとうございます。
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アリナ「幽霊船って、普通なら敵のダンジョンみたいな感じだけど…この場合は違うよね?味方っぽいし」
コリン「仲間だよー、海だったらオッソにお任せってぐらいに頼れるから♪」
アリナ「うーん、幽霊船やスケルトンが仲間なのはあまり馴染みがない…けど新鮮で何か良いかも?」




