間に合うか!?黒い馬で目的地へひとっ走り!
「止めてもらう…いや、確かに向こうが矛を収めれば理想的ではあるが、残念ながらそう甘い相手ではないと思うぞ」
突然のコリンによる戦を止める発言、一瞬呆気に取られるもロードハルト。
回避出来るものなら誰だって争わず回避したいもの、だが実際そうなりはしないという現実。
いくらなんでも攻め込んで来ているエノルム王国側から、矛を収めるような事は停戦や和平を行わなければ無理だろう、そこに至るまでの交渉まであって簡単な事ではない。
「でもやらなきゃ多くの人が死んじゃうかもしれないよね?だったら、止めてもらう以外に無いじゃん」
「それは…そうだが」
エノルム王国に戦を止めてもらう、コリンはそう決めていて曲げない。
何が何でも止めてやる、強い意志がコリンの大きな瞳に宿っていた。
「コリン君、具体的にはどうするの?」
「進軍して来る相手を全部止めてそこから向こうの王国行って、国を制圧する」
「めっちゃ力技ー!」
細かい作戦やら何やら無し、帝国に迫る大軍を止めた上で向こうの王国に乗り込み、帝国と同じく制圧する。
力技なコリンにアリナは思わずツッコミを入れていた。
「でしたら急ぐのが良いかと、向こうは海を越えて東からやって来ますので」
「となると、こっちの大陸の港町から手始めに狙いそうだよなぁ。補給とかもしなきゃなんねぇだろうし」
「そうだ、白猫の癖に知恵が回るな相変わらず」
「喧嘩売ってんのかぁ!?」
マルシャとセオンの言い合いが起こりながらも、互いにエノルム王国がどう来るのか読んでいた。
「つまり、港町が攻め込まれてヤバいかもしれないから早めに行こうって事でOK?」
「そうなるねー、ちなみにそこは僕行った事無いから歩きになっちゃうよ」
「あれ…何か大幅に駆け付けるの遅れて港が既に攻め込まれて終わり、みたいな展開出て来た!?RPGと違って敵さん待ってくれるみたいなの無さそうだし!」
コリンの移動魔法は一度その場所に行った事のある場所、行っていない場所に移動するのは不可能。
彼らが港町に到着するまで、エノルム王国が進軍を止めてくれるのはまずあり得ないだろう。
アリナがこれはリアルタイムの方だしなぁ、と呟いたらセオンの方から口が開かれる。
「エノルム王国の軍が通るであろう場所は位置的に港町プエルト、此処を通る可能性が高いと思われます」
セオンは右手を壁へとかざせば、そこに大陸の地図が表示される。
地図を作り出す魔法、それをセオンが使い示していた。
今居るベッラ帝国から東に位置する大陸の海際、此処にある町がプエルトだ。
「やっぱ遠いなぁ、ルスティカ村以上にこれ距離あるよ」
アリナも地図で確認すると、馬を飛ばしてすぐ辿り着いたルスティカ村の時と違い、現在地のベッラ帝国からプエルトまでかなりの距離があるのが分かる。
「馬車で向かうにしても1日以上はかかるはずだ、間に合うにしてもギリギリのタイミングかもしれん…」
ロードハルトから到着する時間について教えられ、向こうの進軍スピード次第だが間に合うかどうか分からない。
1番速い馬でもすぐに辿り着く事は不可能だった。
「アリナ、戻ろう」
「え?戻るって…」
「魔王城に」
ドンゴを送り届けたばかりだが、再び魔王城に行く必要があるとアリナに告げるコリン。
「詳しい事は後で、じゃあ僕達行ってくるねー」
「お気をつけて」
セオンの綺麗なお辞儀で見送られながら、コリンはアリナと共にその場を後にする。
外へと出れば再びコリンは移動魔法を発動、とんぼ返りでベッラ帝国から魔王城に帰還する形となった。
「やあ、早めのただいま〜」
つい先程に顔を合わせたばかりだった門番のゴーレムへ、アリナはひらひらと手を振り挨拶。
巨城から古城へ変わって行く光景にも、気付けば慣れていた。
「んで魔王城に帰って来たけど、何で?」
「近いんだよ、此処ってプエルトまで。この魔王城から急いで迎えば半日もかからず到着すると思うからさ」
コリンもゴーレムと挨拶を交わしながら、魔王城に来た理由をアリナに説明。
この魔王城は位置的に帝国とプエルトの間に位置しており、移動魔法で辿り着ける最も近い場所が此処という事だった。
「魔王城を中継地点にするって、まあ中々無いだろうねー。なんというか贅沢な使い方…なのかな?」
知る限り魔王城を中継地点として利用する、そういったケースはアリナの中で聞いた事など無い。
普通なら物語の最終ステージ、そういうイメージがやはり強くなってくる。
魔王城に着き、此処が最短ルートだと分かればプエルトを目指して移動しなければならない。
コリン達が行動を開始しようとした時だった。
「魔力を感じたから、今度こそセオン様連れて帰って来るかと思えば…まーたコリンだけぇ?」
移動魔法の時に放出した魔力を感知し、外へと出ていたザリーと会う。
目当てのセオンがいない事に再びガッカリされていた。
「ザリー、良い所に会えたね♪」
これにコリンは救世主が現れた、という感じで明るい笑顔をザリーに向けて駆け寄る。
「な、何よ?私に何か用事?」
「うん、お願い!ダークホース出して!」
「はあ?」
ダークホースというのを出してほしい、両手を合わせてコリンはお願いするポーズをとってザリーに頼み込む。
「ダークホース…?」
「簡単に言や、ザリーが呼べて扱える召喚獣だな。コリンが呼んでるデーモンイーターとはまた違うヤツだ」
暗黒の馬、という意味なのはアリナにも分かる。マルシャから召喚獣だと説明を受けて彼らのやり取りを共に見守っていた。
「お願い!ね?ね?お土産にザリーの好きなチョコレートあげるからー」
「子供扱いすんじゃないわよ!お菓子で釣られると思ってんの!?とりあえず呼ぶけど!」
「(結局呼ぶんかーい)」
コリンが土産も付けると頼み込み、ザリーは怒りながらもチョコレートの魅力に負けたのか頼みを聞く。
それにアリナは内心で、ツッコミを入れずにはいられなかった。
「港町に行く為の移動ね、ったく…私の召喚獣をわざわざ馬車代わりなんて…」
ブツブツと文句を言いつつ、ザリーが召喚の為の準備へと入る。
召喚の為の詠唱に入り、目を出して精神を集中させるゼリー。
これにコリン達は門番のゴーレムのように黙り込む。
「我が声に応え、現れよ…魔界馬ダークホース!!」
次にザリーは閉じてた目を見開き、唱えると地面に黒く丸い穴が発生。
そこから射殺すような眼光を持つ、漆黒の馬が穴から上がって来るように現れて来た。
「我が主よ、何用だ?」
馬から発せられたのか、低い声が一行に聞こえる。
「ダークホース、私達を乗せて目的地まで連れてってほしいの。簡単過ぎる仕事で、わざわざあなたを呼んですっごい悪いけど」
「請け負った、責任を持って必ず送ろう。我が背に乗るが良い」
ザリーの頼みを聞いてダークホースは自らの背に乗る事を許可、プエルトまで乗せてくれるようだ。
「ほら、急ぐんでしょ。行くわよ」
「ありがとうー♪」
何時の間にか彼女も向かう気でいるのか、真っ先に主のザリーがダークホースの背に乗り込み、それにアリナやマルシャを抱えたコリンも続く。
「振り落とされても知らないからね、最短ルートでプエルトにGO!」
ザリーの合図と共に、ダークホースは後ろ足で力強く地面を蹴って、黒い弾丸と化して走り出す。
此処まで見ていただきありがとうございます。
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ザリー「あたしは何時になったらセオン様に会えるのよ!?コリン!あんたわざと会わせないようにしてんじゃないでしょうね!?」
コリン「してないよ〜!揺らさないで〜」
アリナ「これまでで1番賑やかなパーティーになりそうだねー、恋する乙女は激しい…!」
マルシャ「ピクニックとかじゃねぇからな?」




