魔王の決意、良い雰囲気ブチ壊されて勇者はご立腹!?
「え〜、オーガってあの鬼のオーガで間違い無いかな?おっそろしい形相してブンブン棍棒を振り回したりしての」
この中で唯一オーガを知らないアリナ、それが元の世界で鬼と呼ばれる存在なのは知っているが、此処においてのオーガという魔物は把握していない。
「お嬢さん、オーガを知らないのは珍しいぞ。どんなに恐ろしいのかなんて、子供だって知っている」
椅子に座ったままカゼルは、アリナに物珍しそうな目を向けていた。
「小型の鬼の魔物、ゴブリンを束ねる親玉で性格は凶暴、敵とみなした相手には容赦しない。自警団の皆が負った傷がこれぐらいで済んだのが奇跡なぐらいだよ」
「うーん、イメージ通りのモンスターっぽいね」
自警団それぞれの怪我の具合を見ながら、コリンがアリナへと説明。
「ゴブリン達もいたのか?」
「ああ、かなり多かった…騎士団ぐらいに多いんじゃないかってぐらいに」
「オーガだけでも手強いというのに、そんな多くのゴブリンまで居るとは」
子分のゴブリンも居たのかと、サイラードがアストンへ聞けば答えはYESだ。
オーガだけでなくゴブリンの群れまて居るとなれば厄介と、ミディサは腕を組んで険しい表情を浮かべる。
「くそ!深追いしていなかったらオーガに目をつけられずに済んだのに!」
アストンは頭を抱えて、過去の自分達の行動を後悔し始めていた。
ゴブリンの偵察もあり、オーガ達が何時村を襲撃して来てもおかしくない。
恐ろしい鬼に目を付けられた村、全体的に村の雰囲気が暗かったのはオーガの脅威に晒されているせいだ。
「でも、その時は自警団として村を守ろうと戦った訳でしょ?充分に立派だと思うよ」
コリンはアストン達が自警団としての役割を果たし、勇敢だと思い彼らを見て笑いかける。
「ありがとうよ…けど、最期は無惨にやられちまうのに変わり無ぇ」
「今からでも、あんたら逃げた方が良い。騎士団数人ぐらいじゃオーガやゴブリン達に太刀打ちは不可能だ」
苦笑しながらコリンに礼を言うアストン、カゼルの方はまだ間に合うから逃げろと忠告。
「馬鹿な!村の危機に騎士が背を向けて逃げる訳にはいかない!」
逃げるという選択肢はサイラードに無く、残って村や民を守ると強く言い切っていた。
「今から帝国に戻り援軍を要請する余裕はおそらく無い、ならば我々だけで戦うのみだ」
守る一択、それはミディサも同じであり彼女もこの場に残むて戦う事を決意する。
国や民を守る為に自らが剣や盾となる、それが騎士としての誇りだ。
「俺達は残るが2人は…」
サイラードはコリンやアリナにどうする、と尋ねようと彼らに振り返れば気づいてしまう。
忽然と姿を消している事に。
「おいおい、途中で抜けて大丈夫かよ?」
「とりあえず畑とかそういうの見たり村を回っておいた方が良いと思ってさ、情報は多い方が良いじゃん?」
一足先に自警団の建物から出て来たコリンとアリナ、マルシャが此処で口を開き、会話を交わす中でコリンは村の中を見回しながら歩く。
「ココココ…」
「ブー」
「モ〜」
畑だけではない、ニワトリに豚に牛と一通り飼育する農家の家もあり、彼らはこの危機を何となく察しているのか、鳴き声にあまり元気が無いように感じられた。
「襲われたらこの辺りも食べられるだろうなぁ…鶏の唐揚げにチャーシューにサーロインステーキになったり…あ、妄想だけで美味しそう」
これらの生き物を見て、元の世界の美味い飯をアリナは思い出せば、思わずゴクッと喉を鳴らす。
「お前の方が食べそうじゃねぇのか?」
牛辺りを見ているアリナが腹を空かした肉食獣に見えて、マルシャは一言入れておく。
「皆〜、ご飯だよ〜」
そこに女の子の声がして、飼っている動物達に餌を用意する。
牛の餌である多くの干し草を重そうに持つと、それをアリナがひょいっと軽く持ってあげた。
「あ、お姉さんありがとうございます…!」
暗めの赤髪長髪の女の子、背丈はコリンと同じの幼い彼女はアリナに満面の笑みでお礼を言う。
「これぐらい良いから良いから!(あ〜、可愛い幼い女の子が健気に動物達の世話する姿はいいね〜♡そりゃ助けるっての!)」
微笑み返すアリナだが、内面では盛り上がりエキサイト状態であり、それを押し隠しながら牛達の前に乾草を置いていった。
「鳴き声、元気無さそうだったけどご飯はしっかり食べるね?えーと…」
「あたしクレア、皆よく食べるんだよー」
餌を食べる動物達をコリンと共に見守るクレアと名乗る女の子、彼らに声をかけながら笑いかけていた。
少女の動物を心から愛する気持ち、それが隣に立つコリンに伝わって来る。
「お父さんやお母さんとか、どうしてるのかな?」
「2人とも畑を荒らされた日から元気無いの、だからあたしがこの子達のお世話してるんだ」
あれだけの騒ぎだ、子供もそれは知っていておかしくはない。
どうやら両親は村がオーガに狙われていると知らされ、それで動物達の世話をする気力を奪われる程に絶望したのだろう。
「村が襲われるかもしれないけど、だからってお腹空かせたままは駄目だから」
「(あ、知ってるんだ…それでもご飯上げたりして、マジ偉い!これを踏み潰そうとしてるゴブリン&オーガめぇ、ガチしばく!)」
クレアが健気で偉い、尊いと感じたアリナは村を襲撃しようとしている魔物達を全部叩き潰してやろうと、内心のアリナが拳を突き出しまくって張り切る。
「襲わせないよ」
「え?」
コリンの口から出た言葉に、クレアが視線を向けると笑みを消して真面目な顔つきで動物達を見る彼が居た。
「この村を明るく笑わせる、絶対に」
希望を持たず諦めてしまった村、ゴラスや他の村人達はいずれも暗く、唯一クレアがその暗い村を明るく照らしてくれる、ルスティカ村の太陽のような存在だ。
その太陽を、希望の持てない村や人を魔物が勝手に潰すのは許されない。
暗いこの村を明るい場所に変える、コリンの表情にそんな決意が見えていた。
「良いねぇコリン君、正義のヒーローって感じで格好良いよ!お姉さんも全力でサポート勿論しちゃうから♪」
魔王である彼を正義の味方と言って、アリナは右手親指を立てて笑いかける。
コリンだけでなくアリナも、ルスティカ村を魔物達の好きにさせる気など全く無い。
「ありがと…」
それにコリンがお礼を言おうとした時だった。
「ま、魔物だー!魔物達が向かって来たぞー!!」
悲鳴のような村人の大声が聞こえて来る、魔物達が襲来したらしい。
「今お礼受け取ろうとしたのに!空気読めやクソ魔物ー!!」
コリンからお礼の言葉が聞こえ、雰囲気をブチ壊されたアリナは怒り心頭で叫ぶ。
此処まで見ていただきありがとうございます。
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マルシャ「雰囲気ブチ壊されて勇者ご立腹みてーだな」
アリナ「当たり前!主人公とヒロインの良い感じシーンでしょ、どう見ても!」
マルシャ「何処にヒロインいんだよ」
アリナ「あたしあたし!勇者でヒロイン!アンダスターン!?」
コリン「喧嘩してる場合じゃないって〜」




