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暗い雰囲気の村で情報収集

 コリンがサイラードの馬、アリナがミディサの馬にそれぞれ同乗して平原を2頭が駆け抜ける。



 コリンはマルシャを落とさないように抱えながらも、馬が駆ける時に起こる風をその身で受けていた。



「気持ち良いー♪」



 黒髪を揺らしながら、風を受けて楽しむ余裕がコリンにはあった。



「落ちないように気をつけるんだぞ!落馬は大怪我に繋がるからな!」



 魔王である事を忘れて、サイラードは共に乗るコリンへ気をつけるように声をかけつつ、前方を注意して馬を走らせていた。



 サイラード、ミディサ共に愛馬と戦場を駆け抜けたりと、馬を操る技術に長けて馬と過ごした時も長い。


 彼らにとって平原を駆け抜けさせる事など朝飯前だ。



「村は後どれぐらいー!?」



「もう目と鼻の先だ!すぐに着く!」



 ミディサの馬に乗り、落ちないように後ろからミディサにしがみつくアリナは何時村に到着するか聞けば、もうすぐ到着するという答えがすぐ返ってくる。



 これが歩きならば野宿でもしなければ、着かなかったかもしれない。


 2人の馬のおかげで、予定よりもずっと早く村に到着しそうだ。




 途中でトラブルも特に無く、コリン達はスムーズにルスティカ村に着いた。



 ベッラの町よりも自然豊かな緑が村を覆っており、いくつかの大きな畑を抱える。


 それがルスティカ村だ。



 だが畑には何も無く、誰かが畑を耕している様子も無い。それだけでなく全体的に村の雰囲気が暗く見えていた。



「俺が代表して村長と話そう」



 まずは村の代表である村長の家を探す、そこでサイラードが代表して話す事を前もって決めておく。


 魔王としてのコリンを知らないとはいえ、いきなり知らない子供とあれこれ話すとは考えづらい。



 帝国騎士なら彼らも安心して話してくれるはずだと。




「失礼!ゴラス村長!」



「…なんじゃあ?」



 村の中で大きな家、それが村長の家でありサイラードは家のドアをノックする。



 ドアが開くと、そこから現れたのは白髪が交じった短い黒髪の男性。


 年齢は60代ぐらいといった所だろうか、陰気な雰囲気が漂っている。



「急な訪問で誠に申し訳無い、私はベッラ帝国白銀騎士団の小隊長を務めるサイラードと申す」



 自らの身分を名乗り、頭を丁寧に下げて騎士としての礼儀を示す。



「…そっちは?」



 ゴラスという年配の男は後ろに控えていた、コリンやアリナにミディサの姿に気づく。



「私の部下達です」



 魔王、勇者だと言ってしまえば余計なパニックが生まれそうなので、此処は自分の部下だと言ってサイラードは誤魔化す。



「帝国のお偉い騎士さんがわざわざ…まあいい、入んな」



 とりあえず話は聞いてくれるのか、ゴラスはサイラード達を家へと招き入れた。




 村長の家というだけあって室内は広く、コリン達4人を招き入れても窮屈さは感じない。


 家の中に入ると、50代ぐらいの茶髪の女性が頭を下げて挨拶する。


 ゴラスは「女房だ」と彼らに紹介した。



 改めて視線を合わせて向き合うと、サイラードは此処に来た目的についてゴラスへと伝える。



「我々が今日訪れたのは畑を荒らす魔物達についてです、作物を食い荒らされたと」



「それでようやく来てくれたって訳か、こっちは随分前から何とかしてくれって言ってきたんだけどな」



 ゴラスのサイラードを見る目は厳しいものだ、助けを求めていたがベッラ帝国は中々それに応じて来なかった、ならば当然信用は落ちてしまう。



「しかも来たのが…こんな少数で女子供ばかりと、白銀騎士団はそんなに人材不足だったか?」



 サイラードの後ろに居るコリンやアリナ、ミディサをそれぞれ見て、ゴラスはこんなメンバーで魔物を何とか出来る訳が無いと思った。



 騎士団となれば逞しく鍛えられた男達が来る、そう思っていたがどう見ても真逆の存在だ。



「どうせ無駄だ、無駄。儂らの為にわざわざ若い命を散らす必要も無い、そこまでして何とかしてもらおうとは思わん」



 もう何もかも諦めたかのように、ゴラスは深い溜息をついて椅子に腰掛ける。



 その姿を見てサイラードは何も言う事が出来なかった、あまり長居をしては彼や妻の居心地を悪くするだけだ。


 一言入れた後に、一行はこの場から去って家の前へと出て来た。



「すみません、あの人が…」



「いえ、奥方が謝る事ではありません。素早く駆けつけなかったこちらに責任があります、白銀騎士団を代表し謝罪します」



 ゴラスの妻が家の外へ出て来て、彼の態度について謝るとサイラードも騎士団の対応が遅かった事を謝罪する。


 その後ろに控える同じ騎士のミディサも頭を下げていた。



「夫にとって、畑で育てた作物は生きがいのようなもので…自分が育てた物を皆が食べて喜んでくれる、それがあんな無惨に食べ荒らされてすっかり落ち込んでしまったのです」



「そうだったんですか…」



 多くの農家が畑を耕し、育てる中に村長であるゴラスも自ら参加して畑を育て続けてきた。


 それが年老いた彼の生きがい、妻は間近で活き活きしたゴラスを見て来ている。



 だが日常を魔物に荒らされ、奪われた今は他人をあまり信用せず冷めた態度を取るようになってしまう。


 本来の夫はああいう感じではないのに、と妻はゴラスを心配している様子だ。



 これは絶対に解決しなければ、とサイラードはルスティカ村に巣食う厄介な魔物の討伐、必ず倒すと右拳を握り締めれば強く誓う。



「あのー、魔物達を目撃した人達とか居ますか?どんな奴なのか知りたいですから」



 そこに今まで静観していたアリナが口を開き、魔物の目撃者について尋ねる。



「それなら、村の自警団が見ているはずです。魔物の討伐に向かったのは良いですが敵わず命からがら逃げて来たので…」



 ルスティカ村にも守ってくれる存在があり、若者達による自警団が存在する。


 自分達で村を守る為に結成された者達だ。



 自警団が何処に居るのか、教えてもらえばコリン達は居場所へと向かう。




 自警団の住む家は村の入り口近くにあり、村長の家に次いで大きな建物と分かりやすい。



 サイラードはドアを軽くノックした。



 数秒ぐらいが経った後に、足音がドア越しで聞こえてくると開き、中から頭に包帯を巻いた黒髪の若い男の姿が見える。


 年は20代半ばぐらいといった所。



「…白銀の鎧、あんた白銀騎士団の奴か」



「いかにも、私は小隊長を務めるサイラードという者。君は自警団に所属する者で間違い無いかな?」



 サイラードの纏う鎧を見て帝国の騎士と、ひと目で分かり問いに対して小さく頷く。



「魔物を目撃したと聞いたが、是非それを我々に聞かせてほしいんだ」



「…」



 するとドアを開け、自警団の男は右へとずれる。


 入れと言っているのだろう、一行は自警団の建物へ入って行った。




 中に入ると、ドアを開けた男と同じく怪我をしており、頭や右腕に胸と包帯が巻かれた男が椅子に座っている。



「俺はアストン、ルスティカ自警団のリーダーだ。そっちはカゼル、奥のベッドで寝てるのがジェン」



 ドアを開けた男こと、リーダーのアストンがそれぞれ自己紹介、紹介されてカゼルの方は怪我をしていない左腕を軽く上げて挨拶。


 皆それぞれ怪我をしており、アストンが一番軽傷でジェンというベッドで横になっている男が最も重傷だった。



 此処でも魔王や勇者という身分を伏せて、コリン達はそれぞれ挨拶すれば本題へと入る。




「これでも俺達はそれなりに腕には自信あったんだ、村を襲う野盗とか捻じ伏せたりしたし。魔物も小型の奴なら行けると思っていた、実際畑を食い荒らしていたのはゴブリン、俺達でも倒せるだろうって」



 畑の作物を食い荒らした犯人は小型の鬼の魔物ゴブリン、魔物の中では弱い方であり、群れなければ自警団も充分に倒せる相手だ。


 しかしそれでは今の彼らの姿に説明がつかない。



「敵わなかった、という事は小型以上の魔物と遭遇したのか?」



 ミディサの問いに対して、アストンやカゼルは揃って頷く。




「オーガ、そいつと遭遇しちまったんだよ…!」



 その時の事を思い出したか、アストンは身を震わせた。



 コリンやマルシャは勿論、サイラードやミディサもオーガという名の魔物は知っている。




 大型モンスターで凶暴にして厄介な鬼の魔物、畑の作物を食い荒らす問題に思わぬ大物が絡もうとしていた。

此処まで見ていただきありがとうございます。


村の問題を解決出来るか、この先が気になったり、この作品を応援したいとなったらブックマーク、☆のマークをポチッと押して応援いただけると凄い嬉しいです。


アリナ「流石に雰囲気重いから軽快なトークは無理だったねぇ、そこはあたしも空気読んだ!」


マルシャ「答える余裕無ぇぐらいに陰気溢れた村だよな」


コリン「これは解決して皆笑ってもらわないとね、良ければ見てる人も応援よろしく♪」

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