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キールは、下着は穿いていてなんぼという変態性を持ち、明るく陽気で一見軽いように見えても、その実ナンパなどした事がない人間である。
だが今回ばかりは、
「ヘイ! お嬢~さん。こんなところで何してるのかな? 暇なら俺と付き合ってくれない?」
へらへらと締りのない笑顔で女の子に声を掛けていた。
女の子――それも十歳にも満たないかもしれないその少女は、セント・ティルナ孤児院の近くの路地にいた。以前と同じ、亜麻色のミディアムヘアの上にフードと、不釣り合いな大きいサングラス、という姿で。
少女はキールを無視する事も出来なかったようで、フードの端を掴み引き下ろすようにし、伏し目がちになる。
「……暇じゃないです。お兄さんに付き合ってられないです」
素っ気ない少女の態度に、キールは頬を掻く。
「あれま、振られちゃった。まぁそう冷たい事言わずに、君には是非とも同行してもらいたいな――ケイト・クィルターさん?」
「っ!?」
少女は心底驚いたという表情を浮かべ、サングラス越しでも分かるぐらいキールを凝視する。その眼差しが不安げなのも伝わってくる。
キールはその不安を和らげる為か、いつもの調子で明るく言う。
「その鞄、ちゃんと手元に戻ってきたんだ。ここに置いておけば取りに戻ってくるかなとは思ってたんだけど、他の人に持ってかれないかちょっと心配だったんだよな~」
少女が持つ鞄を指差すキールに、鞄を抱き締めるように引き寄せ、少女は身を縮める。
「なんで――」
「なんで君の名前が分かったのかって事かな? 悪いけど、鞄の中身を入れ直すついでに、少し物色させてもらったんでね。鞄の中に着替え以外に、食料なんだろうお菓子ばっか入ってたのと、お菓子の空き箱に隠すようにそこそこの額のお金が入ってたの見て、もしかしてって思ったってわけだ」
キールは腰を落とし、少女と目線を合わせる。
「改めまして、俺はアトラント民間総合相談所所長のキール・マンティス。君の事はクィルターさんから聞いて探していたんだ」
「……帰れって事ですか?」
「いや?」
あっけらかんとした否定の言葉に、少女が呆然としているのが気配で分かる。連れ帰らされると思っていたようで、キールの対応が余程意外だったらしい。
キールは曲げていた膝を伸ばし立つと、腰を捻ったり逸らせたり動かし始める。そして体操の間の雑談であるかのように軽く言う。
「俺はクィルターさんから、『ケイトって娘さんを見つけて欲しい』って依頼を受けたけど、その契約の中に『娘を連れて帰って欲しい』って項目は含まれてないからね。一応、クィルターさんが心配してるって事だけは分かって欲しいけど。帰るかどうかは君の自由ってわけだ」
「まだ……帰りません。あの人の元には……」
「まぁ、それならそれでいいんじゃない? 俺も強引にするつもりはないから――あ、でもついて来て欲しい用件はあるかな」
「?」
不思議そうにキールを見上げ、少女――ケイト・クィルターは小首を傾げた。
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