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Blond's and X  作者: 川咲弐号
4章  運は俺の味方ってね
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35/37

3

     ◆ ◆ ◆ ◆


 ジェーン達が美大に行っている頃、キールもまた外に出掛けていた。

 真面目に捜査しているのかというと――


「『アイリスはいじめられてるんだ』」

「『みんな、アイリスの目が怖いんだ』」


 子どもの賑やかな声が、その場を満たしている。

 キールは、セント・ティルナ孤児院に来ていた。また遊びに来るという、子ども達との約束を果たす為だ。

 今日も孤児院の庭に三人でいる。子ども達――ジャックとクリスは、座るキールの前で芝居を見せている。

 演じ終わり二人がお辞儀をしたので、キール一人の拍手がその場に鳴る。


「兄ちゃん! どうだった?」

「ん~、なんかよく分からなかったけど、ちゃんと台詞は言えてたし良かったんじゃない」

「お兄さん、もしかして『ティアーズ・オブ・ラブ』知らないの?」

「人気の舞台劇だってのは知ってるけど、観た事ないし詳しくはないかな。分かるのも題名と簡単なあらすじと、あとはヒューマンドラマって事ぐらいで」

「兄ちゃん、そんな事も知らないのかよぉー」

「いやはや、面目ない……」


 キールが頬を掻いて苦笑するのを見て、ジャックは鼻高々と言わんばかりに胸を張り、クリスは「こほん」と可愛らしくもわざとらしい咳払いをする。


「いい? お兄さん。『ティアーズ・オブ・ラブ』っていうのは、メインキャラはクインス先生とお世話係のヴィオレッタ、それと三姉妹のホリーとアイリスとシーダ。ボクとジャックは、次女アイリスのクラスメイト役」

「本当は脇役じゃなくて、クインス先生役が良かったんだけどなぁー。でもジャンケンで負けちゃったし、決まったからには今の役を全力でやる!」

「おおぉ、なんか男らしいな! なかなか感心な心掛けじゃん」


 キールが手を叩くと、ジャックが「へっへ~ん」と鼻を擦る。

 だがクリスの方は表情を暗くする。


「……と思ってたんだけど、本当に劇をやるか分からないんだよ」

「なんで? さっきは教会で劇を披露するから練習見てくれって話だったから、俺の前で演じてみせたんじゃ?」

「そうなんだけど。まだ中止にするとはマザーにも言われてないし、だからボク達もやるつもりで練習を続けてるんだ。……だけど、アイリス役がいなくなっちゃったから」

「それもこれも、神隠しのせいだっ!」


 ジャックは大声を上げ、腹立たしげに地面を蹴った。

 キールは膝に肘を置き頬杖をついて、トントンと指を動かし頬を叩く。


「それって、キャサリンって子?」

「そう! あいつがいないと、折角みんなで頑張った劇なのに意味ないじゃん!」

「まぁ、あの子が孤児院を出る前の、最後の出し物だもんね。演目を『ティアーズ・オブ・ラブ』にしたのはマザーが好きだったのもあるけど、あの子にアイリスを演じて自信をつけて欲しかったみたいなんだ」

「あいつの事みんなは大事に思ってるって、あいつはもっと思い知るべきなんだっ!」


 ジャックが力強く拳を振り上げるのに、クリスも笑顔で頷く。


「ふーん。男女分け隔てなく仲良いんだ~。二人もキャサリンと友達なんだ?」


 キールはそう言って微笑ましげに見ていたが、ジャックとクリスはきょとんとして互いの顔を見る。


「友達とは違うよなぁ?」

「そうだね。友達とは思ってないね。だってボク達、家族だもんね」

「それもそっか。なるほど、家族ね~……――」


 ――と、キールは頷いていたのだが、はたと動きを止めて目を見開く。


「友達じゃない……。孤児院の子じゃない……」

「お兄さん?」


 頬杖の掌の中で何事か呟くキールに、不思議そうにクリスが声を掛けた直後――


「あああああぁぁぁああぁぁッッッ!?」


 叫び声と共に立ち上がった。

 頭を抱え驚愕の表情のキールは、誰に言うともなく声を荒げる。


「シット! アトリの言う通りだ! 俺の推理、間違ってたんじゃん! 俺、勘違いしてたってわけか! そういえば、ジェーンの友達も……それで気づくべきだった!」


 子ども二人が仰天と心配の目で見守る中、キールは一頻り思いの限りを吐き出すと、途端に静かになる。それから元の調子に戻り、子ども達に向き直り訊ねる。


「あのさ、もしかしてキャサリンって子――――」


 キールは子ども達と顔を寄せ合う。

 キールの話に耳を傾けていた二人は、同時に首を縦に振る。


「そう。だからあいつがアイリス役なんじゃん」

「それと普段は皆、あだ名で呼び合ってたりする?」

「うん。シスター達は普通に呼ぶけど、子ども同士はあだ名も多いよ」

「そのあだ名って、ひょっとすると――――」


 キールが言った事に、二人は確かに頷いた。

 それがキールの確信を強固なものにした。


     ◆ ◆ ◆ ◆

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