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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【下界 グラニス伯爵領】の章

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35・2羽:挟撃





「へっへっへ……見ろよ、女はかなりの上玉だぜぇ!」


「でめぇには貸しがあっただろうがぁ、順番はまもれよ!」


「おい、お前ら早く片付けろ。こいつら以外にも侵入者はいる」


「この人数差ですぜぇ、隊長。すぐに終わらせますぜぃ」


 薄汚れた男たちは、その手に持つ刃物をちらつかせながら下品な笑みで雑談している。

 傭兵団と自称する、“黒の死神団”の野盗たちだ。


 獲物と彼らの戦力差は三倍以上あり、その中には女や子供が二人も混じっているのだ。

 武装しているとはいえ、まともに相手になる大人の騎士は二人だけ。


 こちらを舐めて賊たちが余裕の態度もうなずける。





「スザンナちゃんと、少年騎士君は前の奴らを!他の騎士のオジさんたちは後ろを!」


「は、はい“魔獣喰マジウスい”殿」

「お、“オジさん”だと!?くっ、若のことは頼むぞ、スザンナ卿!」


 そんななか《魔獣喰い》ことオレは、他の四人に指示を出す。


 蛮族の少年である自分に戦闘指示を出され、騎士たちも一瞬だけ迷っていた。

 だが、彼らも歴戦のグラニスの騎士である。


 この場の状況を瞬時に理解し、前方と後方に戦力を分ける。




「“魔獣喰マジウスい”殿、また屋根の上に弓兵が!」


「させるか!」


 相手の奇襲により戦場が動く。


だが女騎士スザンナの声にオレは即座に反応する。

 頭上から自分たちを狙っていた賊の一人を、自分の短弓で射り返す。


(気づけなかったか……やっぱり、“感覚”が少し鈍くなっているのか、オレは)


 先ほどと同じこの近距離で、殺気を放つ者を感知できなかった。それはいつもの森の中ではあり得ないことだ。

 下界……いや、この戦場と化した村の中に入ってから、自分の感知の能力は明らかに低下している。例えるなら身体の表面を薄い霧が被うような感じだ。


 勘の鋭いスザンナがいなければ危ういところだった。

 この原因が解明さるまでは、彼女に頼るのも仕方がない。


 少し冷静になり先ほどの屋根の上をチラリと見る。


(今の弓兵は即死だろうな、恐らくは……)


 相手の動脈と喉の器官を、鋭い矢で一刺しにした。

 生きているはずはないだろう。


(初めて“人の命”を奪った……)


 少しだけ胸がチクリとする。

 前世の日本での十四年間はもちろん、異世界に転生してから十四年間を合わせても、初めての経験だった。


 だが不思議なことに鼓動が少し早くなっただけで、罪悪感や恐怖感は湧いてこない。

 むしろ、この戦を前に高揚感すらも溢れてきた。


(これも“精霊の加護”の一種だというのか……でも、今は余計なことで迷わずに有りがたい)


 屋根を上の狙撃者を仕留めたオレは、戦況を再確認する。


(挟み撃ちか……)


 この場所は村の狭い裏路地。


 左右には木製の建物が並行して立ち並び、横に逃げ場はない。

 そこに前後から十数名の武装した賊に囲まれ、挟撃された状況である。


(地形的にも、前の女騎士ちゃんと、後ろのオジサンたちは少しの間なら持ちこたえられそうだ……)


 進行方向の前方には、今回の騎士の中で一番の腕利きである女騎士スザンナと、少年騎士レオンハルト。そして後方では大柄の騎士のオジサンと、もう一人の若い騎士が奮戦していた。


 この裏路地は狭く、武器を並んで振るうには二人が限界であり、少人数であるこちらが持ちこたえるのには逆に有利であった。


 更にグラニス騎士たちは森の民の頑丈な革鎧と、騎士盾と剣で武装している。

 対人戦であるならば、厳しい鍛錬を積んできた彼らを抜くは容易ではないであろう。


(よしっ――――それならオレはここで固定射撃だ)


 スッと息を吸い、荒ぶる自分の心を落ち着かせる。


 ぶつかり合う甲高い金属音と、下品な怒声の雑音を自分の耳から消す。意識と視界だけ集中して、感覚を槍先のように鋭敏にする。

 これならいける。



「いち……にっ!」


 自分に言い聞かすように、いつもの自分の狩りの律動リズムを取り戻すかのように。

声を吐き出し、それと共に二本の矢を連続で射る。


 まずは前方で少年騎士とスザンナの相対していた二人の賊の顔面に。矢は目標の頭の骨を簡単に貫き、その命を奪う。


「“魔獣喰マジウスい”!ぼ、僕たちも一緒に殺す気か!?」

「レオン様。この状況です。“魔獣喰マジウスい”殿の腕を信じましょう」


 レオンハルトの悲痛な叫びが飛んでくる。

 何しろ矢鳴と共にそのほおのすぐ脇を、剛矢が通り過ぎたのだ。生きた心地はしなかったであろう。


「みんなにはあたらないから大丈夫だから。たぶん……」


 最後の言葉は小声だ。


 だが、自分の視界や矢を射る感覚の方には衰えはなく、その言葉に偽りはなく済みそうだ。


「さん……しい……ごお!」


 次は後方で苦戦していたグラニス騎士たちの援護射撃を行う。


 先ほどと同じように、三本の矢は騎士の顔の隙間をくぐり抜け、その前方の賊たちの顔面を貫き命を奪う。


「ば、ばかな……この乱戦で弓矢を使ってきやがるだと……」


「こちらも討ち返せぇ!」

「無理です仲間にあたりなますぜぃ、隊長ぉ」


 取り囲んでいるはずの賊たちは、混乱しはじめる。


 少人数の相手だと侮っていたにも関わらず、その前後の壁を未だに抜けず。なおかつ神業のような弓術で、瞬時にして五人もの仲間を失ったのだ。


 未だに戦力差はあるとはいえ、前衛の農民あがりの賊は既に逃げ腰だ。


「よし、みんな行けるぞ!」


 みんなを勇気付けるために、オレは激励の言葉を叫ぶ。このままならこの囲みを突破できそうだ。

 






「ん?――――くっ……しまった」


 気分が高揚し、戦況を覆し油断をしていた訳ではない。


子供ガキが調子に乗っているんじゃねえよ!」


 オレの頭上から、黒い影と共に怒声が鳴り落ちる。


 裏路地の建物の屋根の上から忍び寄ってきた賊の一人が、飛び下り剣を振り降ろしきたのだった。だいぶ回復したとはいい、オレの危険感知能力がまだ鈍っていた。


(弓矢で反撃を――――)


 いや、間に合わない。


(横に回避をして距離をとり、弓で反撃を――――)


 いや、この配置ではスザンナちゃんたちが、その無防備な背後をこの斬り込んできた男にとられてしまう。そうなると挟撃に合う彼女の命は無事では済まないであろう。


 この状況を打開する行動の選択に、瞬時として迫られる。判断の失敗の対価は、仲間の命で支払われるのだ。


「くっ、させるかぁあ!」


 そして、それはとっさのことだった。

 悩む間もなく自然と己の肢体が動いた。


 森の民に転生し幼いころから、日々の鍛錬で同じ動作を単調に繰り返してきた。そんな自分の右腕が反応したのだろうか。



・・・・・



(あ……あれ……?)


 気付くとその屋根から飛び掛かってきた男は、オレの足元で動かなくなっていた。地面に血を垂れ流し息絶えている。


(オレが……)


 足元から自分の右手に視線を移す。

 いつの間にか自分の手に握られていた“手斧”、血で濡れた斧の刃先が視界に入る。


(この手で斬り殺したのか……)


 また少しだけ胸がチクリとする。

 先ほどは弓矢で間接的に、そして今度は直接この手で人の命を奪ったのだ。


 だが、不思議と、そして特に負の感情は今のところ湧いてこない。


 さっきもそうだったが、今の自分は驚くほど冷静だった。


 幼いころから狩りを強いられ、糧として獣の命を頂戴してきた森の民。


 だが成人とはいえ、自分はまだ十四歳の少年である。


 更には平和な日本での記憶もまだあり、心の中ではどこにでもいるはずの中学生だったと自覚していたはずだ。他の森の民とは違うと。


(どうしたんだろう……オレ。でも感傷に浸るのは、全てが終わってからにしよう……今はみんなで生き残るために足掻くんだ)


 オレは迷いを消し、取り囲む前後の賊へ再び弓を引き絞る。


 更には自分の弓に警戒した相手の裏をかき、建物の屋根に飛び乗り頭上から容赦なく矢を喰らわせる。


 その行為に驚愕する仲間の声と、悲痛な叫びを上げる相手の声を打ち消すように無心で矢を射る。









 “森の精霊の加護”による“精神安定と高揚”


 当時のオレはそう考えることにしていた。

 

 この時の自分の冷静な心を。




 そして、気付いてはいなかったか。


 精霊の加護の“真実と真意”を。





  ◇   ◇ 




「信じられん腕前だな……弓矢でこれだけの数の賊を射殺すとはな」


「い、いや~、皆さんが前衛で相手を抑えていてくれたからですよ……」


 自分たちを取り囲んだ野盗団を返り討ちにした。


 賊の死体から矢の回収を手伝う騎士たちから、そんな驚きの声が上がる。

 それに対し《魔獣喰い》ことオレは、下を向き控えめな回答で言葉を濁す。


 オレはまだ年端もいかない森の民の少年であり、あまり目立つのもいろいろと面倒だ。

 自分の性分かもしれないが、何事も謙虚が一番であろう。


「それより“魔獣喰マジウスい”!さっきは僕たちを“盾役”として使ったのだな?それなら先にそう説明しておけ」


 戦闘が終わり興奮状態の少年騎士レオンハルトがじろりとにらんでくる。


「まあ、盾役というか……オレって弓しか使えないから、荒事は苦手でだしさ……」


「ふん、その口でよく言うな」


 オレが手斧で倒した賊の死体にレオンハルトは視線をおくり、ぶつぶつとまた愚痴ってくる。

 恐らくはさっきの乱戦で、オレが少年騎士くんの顔すれすれで敵を狙い撃ちしたことを根に持っているのだろう。

 

 愚痴は聞こえないふりをしておこう。


「それにしても、騎士の皆さんや少年騎士くんも見事な腕前だったね」

「ふん、当たり前だ。僕らグラニスの騎士は、人が相手なら誰にも引けを取らない」


 少年騎士くんを少しよいしょする。

 それに気分を良くしたのだろう。レオンハルトは顔についた返り血を拭きながら表情を緩める。


(お世辞で言ったけども、実際に騎士たちの剣技は見事だったな……)


 最初は前衛で盾役となり、多勢である賊どもの猛攻を防いでいた騎士たちであった。


 だが、オレの矢が相手を仕留め、相手の士気が少し下がってからは圧巻だった。

 剣と盾を巧みに使い相手の体を崩し、ひるんだ隙に強引に相手の脳天を騎士剣で叩き割り、急所を斬り裂く。


 華やかさは無いが、理論的に相手を無力化する実戦剣であった。


 それは森の戦士の戦い方とは全く違っていた。だが“人”が相手なら実に効果的であり圧倒的な戦闘術であった。


(それにこの少年騎士くんも、何気に強くなってないか?) 


 気分を良くしたレオンハルトに視線を移す。

 先ほどの乱戦では、自分より少し歳下のこの少年騎士も大活躍していた。


 オレが確認できただけでも三人の賊を切り倒していた。

 恐らくは農民上がりで、素人に毛が生えた程度の剣技した持たない相手だった。


 とはいえ相手は少年騎士より、頭二つは大きい武装した大人である。

 それをこのレオンハルトは正面から打ち倒したのであった。


(生まれた時から身体に刻まれていた“制約の極印”が解かれて、元々の力が覚醒したのかな……)


 少年騎士くんはいろいろ訳あり君だ。


(でも、こいつは将来強くなりそうだな……追い抜かれないようにオレも頑張らないとな……)


 年下に実力を抜かれるのはマズイ。

 オレも精進を欠かせないようにしないといけない。


「さて……ここももう大丈夫みたいだから、《獅子姫》ちゃんたちに早く追い付こう」


「だから、お前がし切るな、《魔獣喰い》」


 少年騎士くんの声を聞こえないふりだ。

 オレとグラニス騎士たちは仲間に合流するために、宿場村の裏道を広場へ向かい進むのだった。




・・・・・・・・



「これは……」


「ええ、既に大半は制圧し終えていますね」


「この数の賊を彼らだけで制圧したのか……森の戦士は……」


 何とかたどり着いた広場での戦いは、すでに終焉を迎えていた。


 土を踏み固められた広場には数多あまたの賊の死体が転がり、血と砂煙の臭いが入り交じり鼻につく。


 先ほどの自分たちの裏路地も激戦であったが、この場に比べたら可愛いものかもしれない。


 それほどまでに一方的な惨殺が――――いや、“狩り”が森の戦士たちによって行われていたのだ。



「ひっ、逃げろ!化け物だ……」


「おい、置いていくな……」


 その獲物となった者たちは悲鳴を上げて、腰を半分抜かしながら逃げ出している。


「おい、お前ら逃げるんじゃねぇ。ぶっ殺すぞ!」


 野盗“黒の死神団”の頭であろう男は、馬上から怒声を部下に放つ。

 だがもはや、その声に従う者はいない。


 つい数刻前まで男の手足となっていた手下たちはもういない。

 自分を見捨て散り散りに逃げ去るから、息絶え物言わぬ屍になっているかのどちらかだった。


(これは、本当に凄いな……まさかここまで一方的だとは……)


 広場の光景に、同じ森の民であるオレも思わず言葉を失う。


 先に偵察したときの戦力は“獅子姫隊”は二十名程度に対して、相手は百名近い武装集団だったはずである。


 それが今や生き残っている賊は数名ほど。

 オレとグラニスの騎士たちが待ち伏せに合い少し遅れている間に、ここまで鎮圧していたのであった。


「賊の将よ……最期に“名”ぐらいは聞いてやるのじゃ」


 広場の中央にいた赤髪の少女は、黒光りした剣先を向け馬上の男に問いかける。


 この森の戦士団の隊長であり、森の王の愛娘である《獅子姫》だ。


 少女はいつもと違うオーラを身にまとっていた。

 手に持たれた刃には多量の血に濡れていたが、その身体に返り血は一切浴びていない。


 恐らくは神速の体捌きで鬼神のごとき活躍だったのだろ。

 その目は鋭く怪しく光を発していたが、ほとんど息も切らしていない。

 《獅子姫》ちゃんも初の対人実戦だったはずなのに流石だ。


「ちっ化け物め!誰がてめぇらみたいな薄汚い野郎に名乗るか!」


 相手はそう吐き捨てる。

 そして手綱を引き、目の前の女剣士に馬ごと突撃を食らわせようとする。


 見た感じ鍛えられた巨大な軍馬である。

 その超重量の突撃をまともに喰らったのなら、細身である女剣士など簡単に吹き飛ぶだろう。

 また左右に大きく避けても、有利な馬上から槍で突き刺す――――そんな構えだ。


 素人丸出しの先ほどまで賊の手下とは明らかに違う。

 この男は明らかに正規の訓練を受けた兵士の戦い方であった。


「《獅子姫》ちゃん危ない!」


 その光景に思わずオレは叫び、自分の弓矢を構える。

 いくら《獅子姫》とはいえ、初めて相対する騎兵との戦いの経験はもちろんない。助けないと。


「手出し無用じゃ!ふん、名乗ることも出来ぬとは、戦を汚す無粋者め!」


 だが、《獅子姫》は冷静だった。


 そして彼女は圧倒的であった。


 眼前に迫っていた荒々しい軍馬の突進を寸前でかわし


 なおかつ相手の槍が繰り出されるのよりも早く


 そして、賊の鎧ごと一刀で相手を切り裂いたのであった。




・・・・・・・





 戦いが終わった。

 

 いや、一方的な“狩り”か。


「ひっ、い、命だけはお助け……」


 頭領を失った“黒の死神団”の残党は投降し、村人たちが用意した荒縄で縛りつけられ広場に集められた。


 そして多くの者は命乞いをしている。


「もうダメだ……オレたちは、このまま食われちまうんだ……ああ神さま……」

「母ちゃん……まだ、死にたくないよぉ……」


 涙を流し、天を仰ぎ諦めている者も多い。

 乱戦が終わり少しだけ冷静になったのだろう。

 そしてオレたち森の民の格好を確認し、その正体に気付いだのだろう。


返り血を浴びた戦化粧で鬼のような蛮族に、自分たちが襲われ捕えられたということに。


 そして更に想像したのだろう。


 “人食い蛮族”にこれから生きたまま捕食されるのだと。


「…………」


 中には恐怖のあまり気を失い、失禁している者もいる。

 

 女騎士スザンナの説明では、この地方の者は幼い頃から戒めとして“森の人食い蛮族”の恐ろしい話を聞かされているという。


『悪い子は魔の森に住む人食い蛮族来て、食べられちゃうぞ』


 そんな感じの話らしい。

 今それを実際に目にし、仲間の多くが惨殺されたなら信じるのも仕方がないだろう。


 だが、誤解もここまでくると申し訳なってくる。

 オレたちはどんなに飢えても“人”は食べないのに。


 獣の生肉は好物だけど。






「ふん、《魔獣喰い》か……少し来るのが遅かったの。賊の頭はわれが打ち取ったぞ」


 広場を観察し、周囲を警戒しながら《獅子姫》の側に歩み寄る。

 

 そんなオレに対して彼女は、少し勝ち誇った顔を向けてくる。


「遅れてごめんね。オレたちも途中で待ち伏せにあっちゃってさ……」


「ふん、今回はわれの勝ちじゃな」


 更にドヤ顔を向けてくる。

 激しい戦闘のすぐ後だというのに、彼女は息切れ一つもしていない。


 だが素肌が見えるところは少し汗ばみ、その顔も赤らめ興奮し艶やかだ。流れる汗さえその身を飾る宝石のようだ。


(《獅子姫》ちゃんは、やっぱりかっこよくて……可愛いな……)


 不謹慎かもしれないが、心の中で思わずそう呟く。

 戦いを圧倒的な武をもって終わらせたその姿は、戦乙女のように神々しくまた美しい。



 視線を合わせるだけでも少し恥ずかしい。


「それより、これから先はどうしよう……この村と野盗は……」


 気まずくなり彼女から目を逸らし、広場に視線を戻す。


 捕まっていた村人はグラニスの騎士の手により全員解放された。

 村人にも何名かの犠牲者は出ていたが、早期解放により被害は少ない方だという。

 あのまま見過ごしていたら、もっと惨い惨劇が繰り広げられたのだろう。


 そういえば“獅子姫隊”の皆は全員無事であった。

 誰ひとり欠けることなくほぼ無傷である。

その身が赤く染まっていたのは返り血をであろう。仲間ではあるが見た目はかなり怖い。


 グラニスの騎士たちがオレたちに同行していなければ、きっと彼ら村人も賊と同じように命乞いをしていたのかもしれない。何しろ蛮族だしな。



「獣と違いコイツ等は食えもしない。だが苦労した狩りに“成果”は必要じゃ」


 投降した賊を見つめながら《獅子姫》は呟く。


 そして、その口元には少し笑みが浮かんでいる。


「成果って……それってまさか……」


 この表情……これは何かを企んでいる時の悪い顔だ、《獅子姫》ちゃんは。嫌な予感がする。






「これよりコイツ等の根城を襲い、“成果”を頂くのだ《魔獣喰い》よ」



 オレの悪い予想はよく当たるのであった。








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