34羽:下界の洗礼
「おお、平野だ……」
目の前に広大な草原が広がる。
その先には眼上を被う深い枝葉はなく、陽の光が直に暖かく照らしてくる。
視界――――そして鼻孔が、違う世界からの変化で刺激される。
「匂いか……そうか、“森の香り”がこの先にはないのか……」
深い森の中は陽の光が地まで届きにくく、湿気を含んだ独特の香りがする。
木々に苔に花々の匂いと、十四年間も慣れ親しんだ森の香り。
それがこの先の草原にはなかった。
澄みわたる乾燥した風が彷徨っている。
これまで見たことがない世界が――――自由が、この先の平原の地にはあるのだ。
「城塞都市に領主城、王様に騎士団……本当に楽しみだな……ふふふ」
小さい声で、その単語たち口に出しただけでも心が躍る。
密かに恋い焦がれてきた念願の世界に、いよいよ自分が踏み入れることが出来るのだから。
「よし、じゃあ、一番乗りで行きますか~」
森と草原との境界線を越えて、大森林から偉大なる一歩を踏み込もうとする。
オレの真の冒険譚が、今こそ始まる。
――――だが、
「おい、待て《魔獣喰い》よ」
「班長…死ぬ気か……」
「……この人、大丈夫なの」
後方にいた屈強な仲間たちにオレは羽交い締めにされ、全力でその一歩を止められた。
「あっ、そうか――――このまま森から出たら死んじゃうのか」
感じんな、大事なことを思い出した。
《魔獣喰い》ことオレは、
森の外に出る前に一発即死で、この英雄譚を完結させるところだった。
危ない。
◇
「術をかける……」
森を出る正式な儀式が始まった。
純白の神官着の精霊神官が、皆に静かに語りかける。
精霊の杖を振りかざし精霊語を紡ぎ、呪印を切る。
その言葉や印の意味は分からない。
だが翡翠色の温かい光が、皆の身体を優しく包む。
その光を受け、彼女を中心に円状に控えていた森の戦士たちに緊張がはしる。
何しろ森の民がこの大森林を出てしまうと、“呪い”によち死に至るのである。
この“加護術”を受けて、何とか外の世界へ足を踏み入れることができるのだ。
『秘伝である“加護術”があれば、森の民でも下界へ出られる。じゃが、その効果時間には制限がある』
大村の最高大神官の婆さんの説明は、そんな感じだった。
精霊神官を同行させ、森からの加護を常に受けてさえいれば森の外に出られる。
ただし制限時間はある――ということだった。
(そういえば、《流れる風》オッサンも若い頃、仲間たちと下界に冒険に出たことがあるって言ってたな……その時もこんな感じだったんだろうな、たぶん)
普段は酒と美女に弱く、だらしないオレの師匠であった。それでも――――若い頃はこの森の危機や下界の争乱を救ったんだぜ!――――といつも自慢げに語っていた。
半分くらいは本当かどうか怪しい与太話だったけど。
(まっいっか……とにかく今回は神官ちゃんが一緒だから、嬉しいな……)
そう、今回はなんと――例の神官ちゃんが、この下界への任務へ同行してくれたのだった。
「終わった……“二つの月の間”、下界に出ていられる……」
どうやら術が終わったようだ。意外とあっさりだ。
精霊神官の少女は小さく呟き、ふうっ、と息を吐き出す。
相変わらず無表情だがその額には微かに汗が浮かび上がり、やや疲労の色が見える。
大神官の婆さんの話だとこの“加護術”は体力と精神力をかなり消費するのだという。この世界の“精霊の原理”をねじ曲げる術式だから、とかなんとか言っていた。
「……大丈夫」
オレの心配する視線に気付いたのか、神官ちゃんは平静さを装う。
苦労をグチや顔に出さない神官ちゃんは凄い。
そして今日も可愛い。
「“二つの月”ということは二か月、六十日間か。けっこう短い期間なんだね、出ていられるのも」
その期間内だけ、自分たちは森の外の世界を自由に行動できる。
だが任務を終えたら直ぐに森に戻る必要があるのだ。
「本当はもっと長い時間大丈夫……でも、今回はアナタがいるから」
オレのひとり言が聞こえたのだろう。
神官ちゃんが何か説明をしてくれる。なんとオレに話かけてきてくれた。
「そうなんだ――――ん?それってオレが何かの原因ってこと」
言葉足らずな説明をまとめると、まるで自分が要因で重荷になっているかの説明だった。
だがそれを聞こうにも、神官ちゃんはスタスタと行ってしまった。
「おい、《魔獣喰い》よ」
「い、痛っ――――あっ、《獅子姫》ちゃん」
ぼーっとした後頭部に、いつもの鞘突きが飛んできた。
「なにが“あっ、《獅子姫》ちゃん”じゃ……まったく。用意も済んだから、下界へ出発するぞ」
「あっ、そっか……それなら今度こそ、オレが最初の一歩を――――あっ!?」
潜在意識にある呪いへの緊張感のためか、森の戦士たちは誰も最初の一歩を踏み出せないでいた。オレは自分こそが歴史的な第一歩を踏み出したかった。
「ふふふ……我を誰だと思っていたのじゃ、《魔獣喰い》よ」
そうだ。
ここにも“精霊の呪い”を気にしない女の子がいた。
小悪魔な笑みを浮かべた《獅子姫》ちゃんに、オレは第一歩目の座を奪われてしまったのであった。
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遂に森を出た。
「森を出たら、直ぐに大きな町や城があるかと想像していたけど、草原が広がるだけなんだね……」
全員が無事に大森林を抜け出し、外で待っていた下界の騎士たちと合流した。
その後に森を出てしばらく歩くこと数刻。
変わり映えのしない景色に思わず感想を述べる。
森を出て少し進むも、いっこうに文明の兆しすら見えてこないのだ。
「“魔の森”――――大森林とベール王国との境目、その境界線に沿うようにして空白地帯の草原が南北に伸びています。ここもその一部であり、もう少し進めばグラニス伯爵領へと入ります」
「おお、そうだったんだね!いよいよだね」
森の民を先導する女騎士スザンナが、オレのひとり言に丁寧に説明をしてくれる。
ここはどこの国にも属さない空白地帯とはいえ、この先は自領であり安心できるのだろう。その表情にも余裕が出てきた。
「もう少し進んだ所に、“ザクソン”という小さな宿場村があります。この辺りだとそこが最初の集落ですね」
彼女の説明では、騎士たちが乗ってきた軍馬もその村の馬屋に預けているという。
まずはそれを引き取りに行き、それから目的地であるグラニス伯都に戻る計画だ。
「そっか、まずは村なんだね。早く大きな“街”を見てみたいな……」
「相変わらず班長の神経は図太いというか、のんきというか……」
「オレたち、緊張している」
オレの後方を歩くイケメン剣士と牛さんが、苦笑いを浮かべながら言葉を交わす。
だがすぐに真剣な表情に戻る。
雑談をしているのは先頭を歩く自分と女騎士スザンナちゃんだけだ。
それ以外の者たちは口数が少なく、表情も険しい。
牛さんの口数が少ないのは、いつものことだけど。
「緊張か……そう言われてみれば、みんな静かだね」
先頭を歩いていたオレは後ろを振り返り、今回の一行を確認する。
(こうして見るとけっこう大所帯だよな……)
今回の任務で下界に出た森の戦士たちは、総勢二十名ほどだ。
十人組“獅子姫隊”の面々に、精霊神官ちゃんと彼女専任の護衛戦士。
それに追加で増員された腕利きの森の戦士たちに補佐の者たちだ。
それ以外にも少年騎士レオンハルトとスザンナちゃん、生き残ったグラニスの騎士と従者たちだ。
森の戦士たちは鋭い目つきで周囲を警戒しつつ、生まれて初めて見る草原を興味深そうに観察している。
一方でグラニスの騎士たちは、これから政敵が治める伯都に戻り、それに対抗しなければいけないのだから、その内心は穏やかではないのであろう。
誰もが張り詰めた空気をまとっていた。
「あの果実、美味しそう……」
神官ちゃんが何かを呟いている。
内容は聞き取れないけど、恐らくは下界の風景に思いをはせているのだろう、きっと。
そんな神秘的な彼女であるが今日はいつもと違う。
純白の神官着の上に革製の胸当て防具を着込んでいたのだ。
そしてなんと、短めの短剣を腰に吊り下げ、その手には小盾と神官の杖を持ち歩いていた。
『自分の身は、守れるから……』
大村を出発するときにそう説明された。
何でも精霊神官は幼い頃から自衛のために、戦闘の訓練も受けていたというのだ。
危険な大森林の各地の村を巡礼で回り、自分たちの食糧は狩りで得る必要がある。
相変わらず表情が読めない神官ちゃん。その武装した勇ましい姿もこれまた感動的だ。
目に焼き付けておこう。
◇
「あっ、みんな見て畑があるよ」
妄想の世界へ旅立つ前に、オレは意識を再び前方に戻す。
そして風景が切り替わるのに気付く。
「あれは麦ですね。収穫はまだ後になりますが、恐らくはザクソンの集落の畑ですね」
「おお、遂に文明が……」
明らかに人手のかけてある畑が見え、オレも緊張してきた。
辺境の宿場村とはいえ、いよいよ下界の文明とご対面できるのだ。
「いや~楽しみだな――――ん?」
オレは“何か”を察知する。
言葉を止め、意識をその方向へ張り巡る。
足を止め後方にいる“獅子姫隊”の皆に、手信号で即座に合図をだす。
『異変アリ、警戒セヨ』
厳しい訓練をくぐり抜けてきた森の戦士たちは即座に反応してくれた。
指揮官である《獅子姫》を中心に円形の陣を組み、弓矢を構え周囲を警戒する。
「どうしたのじゃ、『魔獣喰い』よ」
「この先のから、何か嫌な感じが……殺気というか“死”の嫌な臭いっていうか――――あっ、人の悲鳴も聞こえる」
オレは周囲を警戒しながら、《獅子姫》ちゃんに報告をする。
「バカな、音など何にも聞こえぬぞ」
「確かにですね……」
大柄のグラニスの騎士は呆れた表情で尋ねてくる。その耳にはなにも異音が聞こえないのだから。
それは他の騎士たちも同じであろう。一応は警戒をしながらも不可思議な表情で、他の森の戦士たちに視線で確認する。
「自分たちでも無理だ。うちの班長の耳と鼻は特別なのだ、騎士殿」
距離が遠すぎて異変を感じられないのは、森の戦士であってもそれは同じであった。首を横にふり彼らに答える。
「ケッケッケ……“森鹿”に似た蹄の音――――これが“馬”とやらか。それが数頭分の駆ける音が聞こえまぜえぇ」
そんな中で自分の班にいた“大耳”だけは特別だった。
地面に耳をあて何かを聞き取っていた。
「この先には“ザクソンの宿場村”しかありませんが……」
オレが指し示す方向を怪訝な表情で見つめながら、女騎士スザンナは説明をしてくれる。
「ふむ、それなら斥候を出す。《魔獣喰い》よ。お主と下界に詳しいスザンナで先行し、確認してくるのじゃ」
「うん、分かった……じゃあ、急いで見てくるね」
せっかくの下界への旅だというのに、幸先が最悪な――――これは嫌な予感しかない。
オレとスザンナちゃんは気配を消し、見つからないように迂回しながら目的地を目指すのであった。
◇
「この距離だと君も見えるかな、スザンナちゃん……」
「はい、何とか……」
女騎士ちゃんの案内で、集落を一望できる小高い丘へとたどり着く。
目的地までの少し距離はあるが、ある程度は認識できる距離だ。
二人とも音の出る金属製の鎧や装飾品は身につけていないので、小声の会話くらいなら気付かれないだろう。向こうには。
「あっ……あれは……」
初めてみる異文化村の様子だ。
予想外なこともあるだろう。
だがその光景は明らかに異常だった。
尋常ではない様子。
「盗賊……山賊……そんな感じの連中か……襲っているのは」
オレの視線の先では
平時はのどかな宿場であったであろう村が、戦場に――――いや、一方的な略奪の場と化していたのだった。
◇ ◇
「なんていうこと……ザクソンの村が、賊に……」
女騎士スザンナは声を殺しながら、悲痛な声でそう呟く。
それは“辛い光景”であった。
だが彼女は幼い頃から騎士として、厳しい鍛錬を積んできたのだろう。
スザンナは無意識的な深呼吸で、強制的にその精神を落ち着かせていた。
辺境の小さな宿場村とはいえ、自領が無法者に襲われているのである。
その心中はもちろん穏やかではないであろう。
「やっぱり“賊”に襲われていた……」
彼女に隣で同じように気配を殺しながら《魔獣喰い》ことオレも、その光景に眉をひそめる。
「それにしても随分と大人数な賊だな……」
自分たちがいる場所は村から少し離れた小高い丘ということもあり、村の全容がよく見える。
目の前のあるザクソンは、それほど大きくない村だ。
そんな集落が、今は武装した集団の暴力によっって占拠されていたのである。
「左腕に“黒色の布”……奴らは“黒の死神団”という傭兵団まがいの野盗団です」
心を落ち着かせたスザンナが小声で説明してくれる。
その言葉の通り、賊の左腕にはみな同じように黒い布が巻かれていた。きっとそれが賊の仲間である印なのであろう。
質はあまり良くなさそうだが全員が剣や槍、胸当てなどで武装している。
更には馬に乗った者たちが何人かおり、コイツ等がある程度訓練された兵士崩れであることを表していた。
「どうやら、ザクソンが襲われて間もないかもしれません。村人たちが広場にまだ集められている最中ですし……」
怒りと悔しさを抑えながらスザンナが冷静に分析し、説明してくれる。
その言葉の通り、村の広場には老人や子供、女衆が一堂に集められていた。
みな肩身を寄せながら集まり震え、賊どもに脅されながら制圧されている。
「所々で倒れているのは……村人たちか……」
賊たちに抵抗したのだろうか。
村の入口や広場の周囲には、男たちの死体が何体か転がっていた。
なかには家の柱に貼り付けられている死体もあった。村人たちの抵抗する気を削ぐためなのであろう。酷いありさまだ。
「抵抗しなければ、命までは取らなねぇ。それ以外は根こそぎだがな」
「おい、あっちの納屋で、若い女共が隠れているのを見つけたみたいだぜ」
「そりゃ、またいつもの、お楽しみで順番だな……へっへっへ」
「そこ、こら声だ出すな!ぶっ殺すぞ!」
自分の耳だけに広場から賊どもの下品な声が聞こえる。
女性であるスザンナちゃんに聞こえていないのが、不幸中の幸いだ。
オレも正直なところ胸糞が悪い。
だが生きるか死ぬかの森での十四年間の暮らしが、心を強くしていたのかもしれない。自分でも怖いくらいに冷静だ。
賊たちは怯える村人を脅しながら下品な薄ら笑いで、村の家々から金目の物や食料を集めていた。荷台に積める分だけ略奪していくのであろう。
「スザンナちゃん、みんなの所に戻ろう。相手の数が多すぎるし、《獅子姫》ちゃんに報告しよう」
「はい……“魔獣喰い”殿……」
怒りの感情を無理やり抑えるスザンナちゃんを気づかいながら、オレはみんなの待つ集合場所へ戻ることにした。
◇
「……という事です、レオン様……」
“獅子姫隊”と下界の騎士の待つ人気の無い畑の農道に、オレとスザンナは戻った。
彼女は自分の荒ぶる感情を抑えながら、簡潔に自分の主に報告をおこなう。
「くっ、この急ぐ時に……」
「よりによって“黒の死神団”とはな。この辺境で最大規模の連中だ……」
報告を聞き終え、少年騎士レオンハルトと他の騎士たちは苦い表情を浮かべる。
その反応が先ほどの賊が勢力と驚異を物語っていた。
「レオンハルト様。ここは村を迂回して“伯都”に戻り、そこで部隊を編成してから賊を征伐するのが定石です」
「だがそれでは時間がかかる!その間に賊どもはザクソンの村を……そしてこの周辺の集落を根こそぎ略奪し、どこかへまた消え去るだろう!」
「ですが、傭兵団崩れの奴らの総数は二百を越えるとも」
「くっ、グラニスの騎士団を動かせたら一網打尽なのに……僕は無力だ……」
まだ若く感情を抑えられない少年レオンハルトを、周囲の騎士たちが説得し理で抑える。
そうでもしなければ、まだ若いこの領主嫡子は一人で斬り込み犬死してしまうだろう。
騎士の誇りである勇敢さと無謀を、はき違えてはいけないのだ。
「彼らの犠牲を、僕は決して忘れない……」
説得は無事に済んだようだ。
彼らの任務は伯都にいる領主妻――――つまりレオンハルトの母親の病を治し、お家騒動で荒れたこの領地を回復させることだ。
客観的に考えても、辺境の小さな村に過ぎないザクソンは迂回し、一刻でも早く目的地を目指した方がいい。
それは将来の統治者になる者としては、冷静で正解な判断なのだろう。
「くっ、だが、無力だ、僕は……」
「大義の為の辛抱であります、レオン様……」
だが説得する側のスザンナちゃんや他の騎士たちも、内心では悔しいのだろう。
厳しい表情で歯をくいしばり、大人として自分の感情を必死で抑えている。
“目的のために迂回決定”
普通に冷静に考えたら、その決断は大正解だ。
◇
――――そう“普通”考えたら。
「《魔獣喰い》よ、相手は何人じゃ?」
「武装した者は九十七人で、その内で弓持ちは十二、馬乗りは八だったよ、《獅子姫》ちゃん」
それまで無言で報告を聞いていた《獅子姫》は、静かにオレに尋ねてきた。
「腕利きは?」
「パッと見た感じだと……“大柄の騎士のオジさんと同じ”くらいの奴が三人で、“スザンナちゃんと同じ”くらいな奴が、一人だけかな。そいつが頭っぽかったし。あとは全員、“子供衆”ぐらいかな……」
「ふむ……」
オレの報告を聞き《獅子姫》はその口元を緩める。
(あーあ……やっぱり、“そう”なるよね……)
そして、オレは心の中で覚悟を決める。
何故なら、ここにいたからだ。
“普通”じゃない、剣姫さまが。
「おい、スザンナ。このグラニスでは強盗はどんな刑罰じゃ?」
「は、はい……強盗は問答無用で“打ち首”が決まりとなっていますが、“獅子姫”様……」
「ふむ、それは簡単で助かるのじゃ。では皆の者、行くぞ」
「「はっ!」」
《獅子姫》はくるりと後方を向き、控えていた森の戦士たちに号令をかける。
そしてその言葉を待っていましたと言わんばかりに、戦士たちは気合の返事だ。
「あの……“獅子姫”様。いったどちらに行かれるのですか……」
「ふん、そんなのは決まっておる、スザンナよ。“狩り”に行くのじゃ」
その光景に唖然とした女騎士は恐る恐る尋ねる。
「えっ……“狩り”って、まさか……」
「もちろん、その“まさか”じゃ。“黒の死神団”とやらを、ちょいと狩りに行くのじゃ」
まるで近所に散歩にでも行くかのように。
不敵な笑みと共に《獅子姫》はそう答えたのだった。




