33-6:【閑話】女騎士スザンナ・デリス ★イラストあり
あとがきに『女騎士スザンナ』イラストがあります。
あくまで書いた方のイメージです。
個人のイメージを大事にする方は閲覧ご注意ください
《女騎士スザンナ・デリス 視点》
「では、皆のもの行くぞ。この森に巣食う蛮族どもの集落へ!」
「はっ!」
“呪われた森”と呼ぶ禁忌の森の中に、甲高い金属音と共に侵入して行く者たちがいる。騎士と従者を合わせた総勢二十名のほどの武装集団だ。
この大陸の三大国家のひとつであるベール王国。その上級貴族のひとつであり、南方に広大な領土を有するグラニス伯爵家騎士の一団であった。
“グラニス伯爵騎士団”
この大陸でも勇名知れた騎士団のひとつである。
今から百年ほど前は“グラニス傭兵団”とも呼ばれて、この地を治めていた時のベール王の元で獅子奮迅の活躍をした。
そこから最下級の男爵の爵位を受けて騎士の一員となる。更には敵国や蛮族と国境を介する南方の小領土を授けられた。
侵略してくる異国を迎撃し、逆に侵攻を繰り返すこと約七十年間。
次々と戦で功績を上げ三十年ほど前になると、上級貴族の一員である伯爵の爵位まで拝命していた。
『この成り上がりの傭兵風情が』
伝統あるベール王国の中には、未だにそう陰口を叩く貴族たちもいた。
だが占領によって得た広大な穀倉地帯からの豊富な財力と、ベール屈指のグラニス騎士団の存在が、公の場では完全に黙らせていた。
そんなグラニスの家紋を鎧の胸に刻んだ騎士たちが、似つかわしくない原生林の獣道をひたすら進んでいた。行軍というよりは探索隊といった方が正しかもしれない。
その中に私――――スザンナ・デリスも主の悲願を叶えるべく、未開の森へ住むといわれる蛮族の集落を目指すのだった。
・・・・・・・
「自分の荷くらいは僕が自ら持つ、スザンナ」
「ですがレオン様」
「くどいぞ」
この探索隊の発案者で我が主であるレオンハルト様はそう言い放ち、自分の背負い袋の奪い取り隊列の中団に戻る。
(こういう場合は下手に口答えをしたら、レオン様はヘソを曲げてしまう。従うしかないですね……)
レオンハルト様はまだ若い。
成人前の十代前半ということもあり、まだ精神的にも成熟していないとろこが多々ある
それでも伯爵家の嫡子と産まれて自覚が、幼い頃から受け付けられてきた。こんな背伸びの言動はしょっちゅうある。
レオンハルト様を幼少の頃から世話をしてきた私は、その扱いにもだいぶ慣れていた。
(それにしても、不気味な森……)
意識を周囲の薄暗い森へ戻す。
自分の前後には騎士と従者を合わせた二十名ほどの一行が、目的地である蛮族の集落を目指しながら寡黙に獣道を進んでいる。
口数が少ないのは慣れない森道を歩く疲れのせいだけではない。
この得体の知らない暗黒の森の恐ろしさが、そうさせているのだろう。
『“魔の森”には凶暴な獣の群れが闊歩し、人食い蛮族どもが根城を構えている』
『悪ぃ子は、“蛮族”がさらいに来るぞ!』
この大陸の東部に住む者なら、幼い頃に父母に戒め話としてこう脅されていただろう。実際のところ私もそう聞かされていた。自分の妹などは恐怖のあまりに、一人で厠に行けなくなったほどだ。
こういった地方の戒め話のほとんどは、作り話であり迷信だ。子どものしつけのための。
だがこの魔の森には実際に獣や蛮族がいるのだからタチが悪い。
「不気味だな……」
「ああ……」
数多の実戦を経験しているグラニス騎士ですらこの有り様だ。誰も恐怖心を口には出さないが、今も見えない敵と戦いながらこの任務に従っているのだ。
口が少々悪い同僚たちではあるが、今はこれが頼もしく感じる。
(でもやはり、この金属製の鎧では森道は辛いわね……)
薄暗い周囲を警戒しながら、私は後方の同僚をチラリと確認する。
日頃の厳しい訓練の成果もあって、根を上げている者はまだいない。
だがまだ若い従者の中には、その背負う荷の重さとぬかるむ森道に、険しい表情を浮かべる者も少なくない。
陽の射さない森の獣道はジメジメと湿り足が取られる。
簡易型の軽装騎士鎧とはいえ、これを着ての行軍は本当に体力を消耗していた。
「おい、猟師どもよ。本当にこの方向であっているのか!?その蛮族どもの集落は!」
「へ、へい、騎士様……仲間の一人がこの先で見たことがあると言っていましたぜぃ」
「ふん、支払った金の分は働くのだぞ!」
前方を進む一番大柄な同僚の騎士が、先導する猟師に怒鳴りちらす。
恐らくは未開の土地の行軍で不安が募り、つい言葉に出てしまったのだろう。頭に血が上りやすいのが欠点とはいえ、正義感の強い彼にしては珍しいことだ。
それほどまでにこの不気味な森は我々に精神的な圧迫感を与えているのだろう。
(それにしても、本当にこの道で合っているのかしら……)
私でさえ思わず不安を口に出してしまいそうになる。
先頭を行く猟師たちの案内で森の中を進んでいる。だが果たしてどちらの方角へ向かっているのかさえ、今の我々には分からなくなってきている。
「皆の者、不安はあるかもしれない。だがあと少し、この僕に力を貸してくれ!何としても“霊薬”を持ち帰ろう!」
「はっ!若様!」
隊列の中心を進むレオンハルト様が皆に激を飛ばす。この重い雰囲気を肌で感じ取ったのだろう。
その明るい表情と存在が、今や我々の足を進める糧となっていた。
『“魔の森”の蛮族に接触し “霊薬”を見つけ出し持ち帰る』
それが我々に与えられた任務であり、グラニス伯爵家を復興する使命だった。
・・・・・・・・
神経をすり減らしながら“魔の森”を行軍し、夜営しながらの三日目のことだった。
いっこうに変わり映えのしない森の中を、その日も口数少なく進んでいた。
原生林の中を警戒しながら進んでいた為に、実際にはそれほど距離は稼いではいなかっただろ。
だが、一歩ずつではあるが着実に目的地に向かっているいう希望だけが、一行の足を進めていた。
「騎士様……地形的にこの先は長くなりそうでぜぃ。ここいらで昼の休憩を挟みましょう」
「うむ、分かった。よし、この辺りで昼飯にしよう。従者たちは準備にかかれ」
「はっ、若様!」
生い茂る森の中で時間の感覚がつかめないが、老練な猟師の言葉と陽の角度から昼の休憩時間なのだろう。
「騎士様……ワシらはその辺で野鳥を狩ってきますぜぃ。その間はこの保存食でも食してお待ち下さい」
「うむ、ありがたい」
猟師たちの話では、どうやら先ほど丸々と肥えた野鳥を目にしたという。
先導役の猟師たちは野営地を離れ、森の中へ静かに消えて行った。
「ふう、今のところは順調だな、スザンナ」
「はい、レオン様。懸念していた凶暴な獣も現れず、まずはひと安心ですね」
獣道が開けた適当な段差に腰をかけ、温くなった皮袋の水を飲みながら皆で体を休める。
何が起こるか分からない魔の森で強行軍は危険だ。休める時に体力を回復させる。
猟師たちが戻って来るまで、貰った味気ない保存食で小腹を満たし休憩をとる。
「それにしても蛮族――――この森の原住民とやらは、本当にいるのだろうか。人が生活している痕跡すら見えやしない」
レオンハルト様は手つかずの原生林を眺めながらポツリと言葉をこぼす。
「記述によりますと彼ら原住民は外の世界を警戒し、奥地にその集落を構えていると書かれておりました。もうしばらく進めば必ず出会えましょう」
「だといいがな……」
最後は私だけに聞こえるように、レオンハルト様はポツリと呟く。
他の男の騎士や従者たちには聞かれないように――――幼いころからの世話係である私にだけ、こぼした少しの愚痴であった。
レオンハルト様はまだ若い。
あと数年もすれば、父上である現伯爵様のように立派な騎士となり、そして偉大な領主様になられるだろう。
まだ荒削りであるが剣術や座学などにもその才能の片鱗を見せている。
とにかく今は自分たちがこの命に代えて守りし、お仕えしていかないといけなのだ。
そう自分の心に再度誓う。
(ん?……おかしい……何かが変だわ……)
休憩をしながらふと思う。
私は“何か”――――異変に気付く。
これは直感といった方がいいだろうか。
とにかく何かがおかしいのだ。
(猟師たちが戻って来るのが遅すぎる。それに、この臭いは何?これは――――“血”の臭い!?)
私はハッと気付き立ち上がろうとする。警戒をしなければ。
だが一瞬、足元がふらつき思わず両足で踏ん張る。これは森の中の行軍の疲れからだろうか。
(いや、違う――――これは!?それにこの殺気は……)
これでも幼い頃から身体の鍛錬を欠かせたことはない。
金属鎧を着たまま何刻も駆け走り訓練にはげみ、自分の体力の限界は把握していた。
まだまだ余裕はあったはず。だが異常に身体が重いのだ
この身体を蝕むこのだるさの原因に覚えがあった。数年前に食い意地をはったときに食べた毒きのこ――――それで苦しんだ時の症状に似ている。
(くっ、遅効性の毒か何か……)
正体は分からないが、とにかく何かの“毒”を盛られたのだ。
それもあり獣臭を含んだこの殺気に気付くのが遅れたのだ。
「レオン様、皆さん!警戒して下さい!何かに囲まれています!」
私は腰の愛剣を抜き、皆に大声で叫ぶ。
「どうしたスザンナ――――うっ、身体が重い……なんだこれは……」
「むむむ……これは毒か――――くそったれぇ!」
決して冗談を口にしない私の声に、同僚たちは反応し立ち上がる。
だが自分と同じ様に毒を盛られているのだろう。その足取りはやはり重い。
若い従者の中には、自力で立ち上がることすらできない重傷者もいる。
「猛毒性ではありませんが、身体の動きを阻害する何かを皆さんが盛られています。それにこの周囲を何かの獣の集団に取り囲まれています」
状況を把握できない者たちに注意を促す。
あまり自分では公にしていないが、五感や危険察知の力は騎士団の中でも優れている方だ。
「スザンナ、どんな獣だ!?」
「申し訳ありませんそこまでは……」
「とにかく若様を中心に円陣を組むのじゃ!従者ども、槍と盾、あと弓矢をよこせ!」
相変わらず皆の身体と反応は重い。
だが鍛え上げられた騎士たちは、主であるレオンハルトを中心に円形の陣を組み、四方に対応できるようにする。
「はい、槍を――――あっ、弓の弦が切れている……」
「ああ、何ということだ、こっちも切れているぞ……」
騎士の装備を持ち運んでいた若い従者たちの悲痛な声が耳に入る。
どうやら持ち運んでいた弓の弦が、全て何者かに断ち切られていたらしい。
やはり何者かがこちらに気付かれないように、戦力をそぎ落としているのだ。
「ええい、弓は諦めろ!とにかく盾と槍で若様を守るのじゃ」
大柄の騎士が、混乱していた従者たちに激を飛ばす。熱くなりやすいのが短所でもある彼だが、こんな緊急時は頼もしい存在である。
「レオン様。来ました――――狼?……それにしては大きすぎる――――くっ、後方からも、皆さんお気をつけて!」
現れたのは“狼”であった。
薄暗い木々の木陰から、音も無くその獣は姿を続々と現す。
茶色の毛で全身を覆い、太い肢体でゆっくりとこちらに近づいてくる。
やはり狼の一種であろう。
だが、普通ではなかった。
これまで自分が見たことがある野生の狼よりも、一回りは確実に大きい。
銀色に輝く双眼でこちらをじっと睨み、その口元から鋭い犬歯を見せつけ、獲物を目前によだれを垂らしている。
「皆さん気を付けてください!普通の狼とは違います――――」
自分がそう叫ぶと同時にその狼たちは襲いかかってきた。
四方八方から容赦なく、エサである私たちに一斉に襲いかかってきたのであった。
・・・・・・・
どの位の時間が経ったのだろうか。
もはや陽の角度で、時を測る余裕すらない。
自分の目の前には多数の森の狼の死骸が転がっていた。
槍で脳天を突き刺され、剣で首を切り落とされている。
しかし、その横を見ると仲間の騎士や従者たちの無残な死体も目に入る。
首や足など鎧が弱い箇所を食い破られ絶命していた。
中にはまだ辛うじて息のある者もいた。
だが彼らを助けに行こうとすると、狡猾な狼たちはそこを狙って襲いかかってくる。
最初の短槍は半ばから既に折れ果て、私は剣と小型盾を懸命に振るい、残った狼たちの群れを牽制する。
「マリク、しっかりしろ――――くっ、この犬っころ共め!」
自分の左方を守っていた大柄の騎士の叫び声が耳に入る。
恐らくは彼の従者が襲われたのだろう。
助けに行きたいのは山々だが、こちらも前方の狼の群れを相手にしなければいけない。誰も余裕がないのだ。
「スザンナ――――僕のことは放って、君たちだけでも逃げるんだ!」
「レオン様、後ろに――――」
そう叫びながら、我が主の足元を狡猾に狙ってくる狼たちを迎えうつ。
レオンハルト様はまだ体力が身体についていっていない。生まれつきの"呪印”の悪影響もあったが、体力の消費が極端に悪い。
既に肩で息をしており両腕も上がらず、申し訳ないがもはや戦力外であろう。
レオンハルト様は若く優しい方だ。こんな所でその命を散らさせてなるものか。
(何としてもこの方だけでも逃がせれば……)
だが今となってはそれも不可能に近い。
足元の悪いこの森の中では、獣の方が何倍も機動力がある。
とっさの判断でこうして円形の陣を組んでいなければ、既に各個撃破され全滅していただろう。
(くっ、どうすれば……)
盛られた毒のせいか、身体の自由も段々と効かなくなってきた。
使い慣れたはずの剣と盾を持つ両腕も、鉛のように重くなっていた。
心臓も鍛冶場の炉のように熱く、このままでは焼き崩れんばかりに激しく鼓動している。
(――――このままでは)
このままでは自分たちが力果てる。冷静に分析した結果だ。
騎士たる者、どんな時でも決して諦めてはいけない。
だが同時に潔さも教えられてきた。
“その最期の時”を引き延ばす事しか出来ない今の自分に、もはや苛立ちすら浮かばない。
そんな自分たちの弱った様子を察したのだろうか。狼たちの手段はその包囲網を狭めてきた。
いよいよ“その時”が来てしまったようだ。
だがこの心の臓が止まるまで、レオンハルト様を守りこの剣を振るおう。
決して心だけは折れさせない。
その時だった。
「ゔぉおお!!」
怒声にも似た雄叫びが、突然自分の耳に飛び込んできた。まさに絶叫だ。
もしかしたら、冥界の使者が自分たちを迎えに来たのでは――――と本気に思った。
(あっ……)
だが次の瞬間に不可思議なことが起きた。
自分の目の前にいた五匹の狼の獣突然、絶命したのだ。
自然死ではない――――なぜならその脳天には見慣れない“矢”が直撃していたのだから。
(矢……誰が――――まさか)
獣たちが臆したその一瞬の隙を利用し、叫び声の方向を確認する。
その主は一人の“人”だった。冥界の使者ではない。
薄暗い森の中で顔までよく見えない。だがその二本の足で走り駆け両手で弓を射っていたからには、知性ある"人”であることは間違いないだろう。
「人――――蛮族……森の民」
その者は“人”でありながら異形であった。
全身を毛皮や羽で着飾り威圧的な雰囲気を醸し出す。顔には禍々(まがまが)しい文様の戦化粧を塗り、見る者に圧倒的な恐怖心を与えてくる。
(獣があっちに引き寄せられて……)
その異様な存在感に釣られたのか。
十数頭の狼たちが、その蛮族の命を奪おうと猛然と駆け出して行く。
その者は革鎧と弓矢だけの軽装であり、どう見ても獣のひと噛みで命を奪われるだろう。獣の注意を引き寄せたのは自殺行為にも思える。
「えっ――――同時に五匹を」
だが、それは一瞬だった。
その者は一度だけ弓を引いた。そして次の瞬間には五匹の狼を仕留めていた。
そして更に五匹追加だ。
どういう幻術を使ったのだろうか。信じられない光景だった。
自分とて騎士の端くれ。
弓術の鍛錬は積んできており、その理論を分かっていたつもりだ。
だがその者の弓の射り方は独特だった。
基本を全く無視している。だがその連射は正確無比であり強力絶大だ。
ベール王国で一番の弓の使い手であってもこうも正確に、更に高速で動く的を射ることは出来ないであろう。
(す、凄い……)
自分の置かれてい危険な状況を忘れ、思わずのその姿に見とれてしまう。
「ひぃいい……」
だがその時だ。
自分の右側を守る騎士仲間が狼の群れの猛攻に落ちた。
最初から最後まで一番の多くの獣を相手していた者だった。持たなかったのだ。
(四方の陣の一角が崩れてしまった……)
これはマズイ。持ち直していた心が再度折れそうになる。
「諦めるな――――必ず助けに行く。絶対にだぁ!」
その森の戦士が、こちらにそう叫んでくる。
自分たちを同じ言語だ――――それで、こちらを鼓舞してくれたのだ。
心を持ち直す。
「よし、いけます。最後まで気を、あっ――――」
油断していた訳ではない。もちろん慢心もなかった。
だが見逃してしまっていたのだ。
この群れの中でもひときわ大きな狼が、死角から回り込んでいた動きを。
狙われた箇所は崩れた一陣だ。
狼はそのまま勢いよく飛び跳ねた口を大きく開く。その鋭い牙の先には、息を切らし無防備なレオンハルトの白い首筋があった。
「レオン様ぁ!」
我が主を助けようと、私は向きを変えようとした。
だが、自分の目の前の狼たちはその隙を見逃すはずがない。自分も反射的にそちらを迎えうってしまう。
(くっ、間に合わない――――えっ、赤い獣――――?)
情けないことに、レオンハルト様の命がもうダメだと覚悟した。
その次の瞬間だった。
森の茂みから赤い獣――――いや、"赤毛のモノ”がこの戦場に飛び込んできた。
「ふん!」
そして一瞬で間合いを詰め、飛び掛かった獣を空中でその爪で――――いや、その手に持つ剣で斬り裂いたのだ。
「次じゃ」
そのモノは剣を持った少女であった。
少女はやや赤みのかかった長髪を結い上げていた。
格好から先ほどの弓士と同じこの森の民であろう。だが動きがまるで別次元だった。
息つく間もなく周囲にいた狼を次々と両断する。早すぎて動きそのものが目で追えない。
「“獅子姫”ちゃん!」
少し離れていた所で奮闘していた弓士が、こちら向かってそう叫ぶ。
“獅子姫”――――剣舞のように可憐で、烈火のごとく激しい剣技の戦乙女。
「“魔獣喰い”よ、随分と面白そうなことをしておるな……どれ、我われも交ぜるのじゃ」
その少女は――――“獅子姫”口元に不敵な笑みを浮かべ、そう呟くのであった。
・・・・・・・・
その後はあっけないほど簡単にことが終わった。
角笛の音と共に彼ら森の民の仲間が十人ほど更に現れ、残った狼たちを駆逐し追い払ってくれた。
「オレたちは仲間だ……」
最初の弓士は武装を解除し半裸になり、敵意がないことを自分たちに示してくれた。
「助けてくれて礼を言う。私の名は騎士スザンナ。あなたたち森の民を探してここまで来ました……」
自分もそれに応えて武装を解除して名乗る。今思えば無謀な行為であったが確信はあった。この人たちは敵意はないと。
「お、女の子だったんだ、君は……」
これが私と、森の勇者“魔獣喰い”様
そして“獅子姫”様たちとの運命の出会いであった。




