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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【終わり】の章

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166/204

133羽:森を燃やす者   ★精霊神官ちゃん 追加イラスト有り

あとがきに『精霊神官ちゃん』ファンアート及びイラストがあります。

あくまで書いた方のイメージです。

個人のイメージを大事にする方は閲覧ご注意ください



見慣れたはずの下界と森岸の境界線はすっかり形を変え、かくも無残な状態としてオレの目に飛び込んで来る



この目で実際に見て感じた事は“大森林が小さくなっている”という事だった



普通に考えたらなら、オレがこの森を離れた数か月間でここまで縮小するはずがない



森の民は大森林の樹木を大事に扱うので過剰な森林伐採はしない



また異常気象による森の風化もこの短期間で起こりえないだろう



なら何故森が小さくなっていたのか・・・



その理由は単純だった




“下界の兵士達が大森林に火を着け燃やしていたのであった”




もうすぐ日が昇る時間帯であったが、彼ら兵士達によって火を着けられた森は一晩中赤々と燃えていたのだろう



いや、その広大な規模から数日間・・・数週間は火をかけていたのかもしれない・・・



その炎は黒煙を立ち上らせ、樹木の焼けた不快な臭いを周囲に充満させ燃え続けていた



そしてその火所はオレの到着したここの一か所だけではない



見た感じでは下界と大森林の境目を取り囲むように火が着けられており、恐らくは多くの軍団によって森が取り囲まれているのだろう





(一体何がどうなっているんだ・・・オレたちが皇国に行っている間に何が起きたんだ!?)



表面上は冷静さを装うが、オレの内心はこの想定外の出来事に考えが追い付かない



(とにかく情報収集をしないと・・・)



オレは気配を消しながらその火を着けていた張本人たちの陣地の方へと向かう




・・・・・・・



目的の下界の兵士の陣地に潜入するのは思いのほか苦労をした



まだ暗い時間帯だというのに見張りの兵士が異様に多いのだ



不規則に陣地の周囲を不定期に見回る



しかも三人一組で見回り、互いの死角をカバーするように周囲を警戒している



陣地の周りにも通常の数倍の焚き木で明るく照らし、潜入者の身を隠す場所を無くしていた



この焚き木も恐らくは大森林の樹を伐採して燃やしているのだろう・・・そう考えると思わずコブシに力が入る



とにかく何者かの夜襲に対して徹底的に警戒をしていたのである




ここまで厳重な警戒態勢の陣地に忍び込むのは、幾ら隠密行動に優れた森の戦士たちでも骨が折れる作業だろう



それでも“覚醒”とやらで身体能力が更に向上したオレは細心の注意で陣地内を進む



陣内も見張りが哨戒しており気が抜けない



だが陣地の中心部に向かうにしたがって、そんな見張りの兵士たちの緊張感も薄れていく



今回は情報収集が目的だ・・・立ち話をしている兵士の背後に回り込みその内容に聞き耳を立てる




「こんな靜かな夜に警備の担当だと楽だな・・・」



「おい、気を抜くな・・・上に見つかったら減給どころでは済まないぞ。それにヤツ等は夜目も効く油断ならないヤツ等だ・・・」



「へいへい分かってら・・・夜目も効くとは正に愚獣のようなヤツ等だな・・・」




そんな見張りの兵士達の会話が聞こえてくる



(もう少し有力な情報が欲しいな・・・誰か一人さらって尋問するか・・・それともこの周囲の町村で聞き込みでもするか・・・)



その会話以外には国の女の話だの酒の話だの、他愛のない雑談しか情報がない



焦ったオレは場所を移動して更に情報を仕入れようとする




「敵だ!侵入者がいたぞ!待機兵は中央の陣幕に集まれ!」



突然そんな叫び声がオレの近くから上がる



有事に備えて甲冑を着こんで待機していた兵士達が、音を立てて近付いて来る



(しまった・・・見つかったか・・・)



オレは突然の出来ごとに身を構えるが、その兵士達はオレの側を通り過ぎ違う方向へと走り去って行く



・・・どうやら見つかったのは自分ではなく、違う何者かだったのだろう



本来なら臨戦態勢となったこの陣地は、早急に立ち去るのが賢い判断なのだろうが、とにかく情報が欲しいオレはその騒ぎの中心地へと身を隠し進むことにした




・・・・・・




この陣地のほぼ中央にある開けた広場を取り囲むように兵士たちが集まっていた




大盾と槍で武装した重歩兵たちが全面を固め、後方には弓を構えた弓隊の姿も見える



万全の包囲網だ



その円の中心にいたのは二人の向かい合う戦士だった



槍を両手に持った一方は、他の兵士より豪華な軍服を着こんでいる所を見ると指揮官クラスであろう



その槍を持った構えに一切の隙は無く、もう一方の侵入者をその槍先で徐々に追い詰めていた



もう一方の槍の攻撃を受けている男も決して弱い訳ではない



革鎧を着こみ軽装である事を最大に活用し、剣を構え致命傷にならない様にその紫電のように鋭い槍先に耐えていた



その受け流す動きは、厳しい鍛錬によって培われた動きそのものであり腕利きの戦士の証



だが今回は槍使いの方が数段上だった



見事な槍さばきで相手の体を崩すと、そのまま渾身の槍撃を繰り出す



「うぐっ」



何とか剣で受けて即死を免れたものの、軽装の戦士は傍目はためでも分かる程の致命傷を負ってしまった



辛うじて剣を持ち相手を威嚇いかくしていたが、その戦士の方に最早勝ち目はないだろう



(まずい・・・助けないと!)



その様子をこの陣地内のテントの屋根から気配を消し見ていたオレは、“助ける”という本能のままに弓矢を構え意識を集中する



心の中で風を集めるイメージを固める



「“風の爆矢”!」



初めて射る弓技だったが自分に撃てる確信はあった



何故ならこの技は実際に目にした事があり、そのイメージを覚えていたからだ



矢先に風を集め、標的に当たる瞬間にそれを空気の爆弾の様に炸裂させる



貫通力は低いが広範囲に渡る攻撃力を持つ技だ



(特に今回は広範囲に土煙を立たせて煙幕の様にする!)



オレの気合の声と共に、風の弾頭をまとった矢はその対峙する二人の戦いの中間に着弾した



二人の男はその異様な矢の気配を察し後方に飛び去る



激しい轟音ともに中心地はえぐれ、土煙が周囲に立ち上る



包囲していた兵士たちまでその土煙は広がり視界が悪くなっていた



(よし、今だ!)



矢を放つと同時に、身を隠していたオレはテントを飛び下りその中心地へと向かう



「敵襲だ!気をつけろ!」



突然の襲撃に警戒する兵士たちの間をすり抜け、包囲していた兵士の頭を踏み出しにし包囲網を飛び越える



目的は致命傷を受けていた軽装の戦士の救出



「安心しろ、助けに来たぞ!」



まだ土煙で視界が悪い中、オレは自分の“風の爆矢”の爆風を受けて更に意識を失いかけていた戦士の隣に立つ



少しやり過ぎてしまったようだ・・・



「お前は・・・一体・・・」



オレはその問いを無視し、意識を失った戦士の身体を強引に肩に担ぎ周囲を確認する



土煙はまだ晴れていない



包囲網と陣地の守りの薄い方向を目指し、オレは再び跳躍をして兵士たちの頭を踏み台にして進む



武装した筋肉隆々の戦士を担ぎ、そんな軽業師の様な芸当はこれまでは出来なかった



だが強化されたこの身体ならなんとか行ける



「どこかに逃げたぞ!逃がすな!」



突然の爆発と土煙に混乱する敵陣だが、状況を確認し行方をくらました負傷戦士を探そうとする



(残念だがここで摘まる訳にはいかない・・・)



・・・・・・



オレは負傷した戦士を担ぎ、人気のない逃走用ルートを全力で走り抜ける



もう少しでこの軍団の陣地を抜ける事が出来る



ここさえ抜けたなら朝闇に紛れて身を隠すことは容易い



(!?)



その刹那せつな、急に背筋が凍る様な気配を感じオレは咄嗟とっさに進行方向を変えソレを避ける



それまでオレがいた場所を、稲妻の様な鋭い槍先が突き抜け空を裂く



・・・空を切った槍先で空気が焦げる匂いがする



「ほお、よく今の一撃を避ける事が出来たな・・・お前も奴ら部族の仲間か?」



その声の持ち主はオレたちの退路を断つように、ゆっくりとテントの物陰からその姿を現す



身体は大きいが無駄な筋肉が付いておらず、ひと目で指揮官と分かる豪華な軍服を着こんでいた



その動きに一切の隙は無く、こちらが動いたらまた先ほどの電光石火の槍が飛んでくるだろう



(くっ、何て槍術だ・・・こんな鋭いのは今まで見た事がない・・・いや待てよ・・・)



オレにはその“槍さばき”に見覚えがあった



以前その人物が見せてくれた華麗で激しい槍術より更に鋭い技だが、その波打つクセがある槍技をオレは知っていた



実は・・・この陣地の兵士たちの武装や軍章を見た時から予想はしていた



そう“頭”では理解はしていたのだ



だがかつての仲間がこの様な処遇を行っている事を、オレは心の中で信じる事が出来ていなかった



更に物陰から出て来たその人物の顔立ちや身体つきは、自分の記憶の中の人物と似ているようで違和感がある




「ネロさん・・・なのか?」



ヴェルネア帝国皇帝の何番目かの実子であり皇子



『血の皇子』とも隣国に名高い槍の達人



ネロ・セウェルス・・・その人に似ている顔つきを見てオレは思わず声が出てしまった




精霊神官ちゃん

挿絵(By みてみん) 



デフォルメな精霊神官ちゃん

挿絵(By みてみん) 



精霊神官ちゃん ver2

挿絵(By みてみん)



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