表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【下界 イスラマ神聖皇都】の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

160/204

127羽:白狼  ☆地図有り

主人公の情報内での地図です

今後話が進んでいく内に情報量が増えていきます

測量技術が発展途上なので都合上正確さに欠ける地図になります



挿絵(By みてみん)




小高い丘から見える眼下の草原は、いくさによる喧騒により埋め尽くされている



小規模部隊同士の小競り合いと言っていいいくさであったが、明らかにこちらの友軍が押されていた



密集隊形で足の遅い長槍歩兵を中心とした友軍に対し、敵軍は機動力のある軽弓騎兵でこちらを翻弄ほんろうしている



巧みな綱さばきで馬群を操り、こちらの長槍の届かない微妙な距離から弓矢を射り一撃離脱でまた距離を取る



こちらも破壊力があるいしゆみ隊の矢で対抗するが、機動力があり変幻自在に陣形を変える敵軍に効果は薄かった



戦況を変える為にこちらが後退すると、今度は烈火のごとく押し寄せ友軍の陣形の弱い横っ腹を突撃で切り裂きまた距離を取る



その動きはまるで野生動物の群れの様に意思疎通がとられており、高所から見ているとその凄さがよく分かる



あの規模の騎兵隊が流動的に動ける敵兵の練度の高さもそうだが、敵の指揮官の能力が相当に高い




「こうやって直接見ると本当に厄介な相手だな・・・」



そんな事をオレの隣で呟いているのは友軍の総大将イスラマ神聖皇国の新教皇マリオ・アリスタである



敵の動きを見る為の威力偵察部隊ではあるがこのままでは全滅だ



こちらの被害が大きくなる前に友軍に撤退の合図を出しこの戦場を一度閉める



撤退に見せかけて敵を待ち伏せする罠に誘導する作戦もあったが、それも見事に敵に看破され軽弓騎兵は戦場を去って行く



「そうですね・・・確かに厄介ですね・・・」



そう呟く『魔獣喰い』マジウスことオレだったが、オレがそんな事を言うのは敵の指揮官が自分の知った顔だったからである








自分の治めるフランケンの村から森の研究軍師セリーナに付き添い、イスラマ神聖皇国の首都である皇都に到着したオレは、道中護衛の任務を終えて後はゆっくり皇都観光でして帰国しようと考えていた



最近は戦に“魔の敵”にと連戦続きだった




たまにはゆっくりした時間も必要だろう



そんな中に突然舞い込んで来たのは、北方部族である“北馬族”の皇国北部への侵攻の知らせであった



“北馬族”の侵攻軍の規模は毎回そんなに大きくなく、ある程度の略奪を行い皇国が本気で軍を動かすと彼らは自国である北草原に戻る



皇国北部の被害は確かにあるがそこまで神経質になる問題ではないという



だが、今回の侵攻は一味違っていた



敵の司令官が“白猫鬼”という最近頭角を現した強者の女戦士だという事だ



その女戦士は身の丈を超える大戦斧を自在に操り、皇国兵を恐怖のどん底に落とし入れ“斧女帝”や“斧の悪魔”などと恐れていた



軽弓騎兵が中心で攻城戦が苦手な彼ら“北馬族”の中であって、その“白猫鬼”は城攻めや砦落としも得意としており、ここ一年だけで結構な数の城塞が彼女によって被害を受けていた



またその直接部下である“白狼”と呼ばれる武将は弓矢と指揮の達人で、変幻自在の軍略で皇国軍を翻弄ほんろうするという



先ほどの見事な攻防を繰り広げていたのはその“白狼”の方であろう



そんな皇都で噂される情報から推測されたある仮定を確かめに為に、ぶらり休暇を強制的に中止となったオレはこの戦場にその確認をしに来たのであった



「それでマジウス君・・・我が愛しの妹セリーナの推測は当たっていたのかな?」



この戦場を一時撤退し後方に移動する最中、騎上から新教皇マリオがオレに聞いてくる



その目は隙の無い真剣な眼差しで嘘をついても全て見透かすだろう強い力がある



「そうですね・・・遠目ですが多分あの指揮官はオレの上官であり弓の師匠でもある『白狼の尾』だと思います・・・・そしてそうなると“白猫鬼”は間違いなく森の部族の姫でもある『白猫姫』様だと思います・・・」



オレは冷静に事実だけを分析しマリオにその推測を告げる



オレたちの滞在国を侵攻して来た司令官が、自分の上官であり部族の姫であるという事実はかなりまずい



この事を皇国で知っているのは今の所マリオと秘書騎士エマだけだが、何となく嫌な空気はオレの周りに流れている



「・・・そうかそれなら話は簡単だ。マジウス君、君がその二人の同胞を説得して敵軍を離脱させてくれないか」



そうお願いしてきたマリオの表情は表向きは人懐っこい笑顔だったが、その口元はニヤリと笑みをこぼし悪い顔をしていた




「・・・そうですね、何とかやってみます」



今回“魔”に対する協力を得るために、色々と世話になっていたマリオと皇国に対して無下に断る事は出来ない



渋々ながらオレは了承の返事する







善は急げ、早速行動を起こす



今回侵攻して来た“北馬族”の本軍が、今のところ根城にしている北部の街への侵入を試みた



今回の潜入はオレと『岩の矛』イワノフを含めた森の戦士たち、あとマリオ直属の諜報部隊“草”の案内人が街まで先導してくれる



闇夜と遮蔽物に身を隠しながらここまで来たが、道中の街道沿いには“北馬族”の見張りの兵が等間隔に配置されており、こちらの軍の動きを逐一見張っていた



少しでも軍を動かし奇襲を掛けようものなら、即座に本隊へ合図を出し迎撃なり撤退なりの対応をするのだろう



基本的にこの下界の戦では、卑怯ひきょう行為である夜襲は行わないのが通例らしいが、新教皇である知略神マリオの事を彼らなりに研究していたのかもしれない



潜入活動しながらその情報網と警戒性に感心をする



今回は少人数でしかも夜目が効き隠密行動に優れた森の戦士だけという事もあり、難なく敵の根城の街へ侵入を成功する





深夜という事もあり、占領されていた街の住人たちは寝静まりかえっている



“北馬族”はこの城壁に囲まれた街を中心に、周囲の町村を略奪しまくり頃合いを見て全軍退却していくという



これまでの経験上、彼らに逆らわなければ住民たちは無意味に殺される事は少ないらしい



水と土地の関係で農耕に不向きな北の草原に住む彼らにとって、この豊かな地域は貴重な農作物の搾取さくしゅの対象なのである



街の住民たちは彼らが一日でも早くここを立ち去る事を、声を殺して静かに願っているのだ





所々にいた夜警見張りの目を盗み、オレたちは独特の形の陣幕が張られているこの街の大広場へと近づく



今のところ順調だが、例え馬を降りていたとしても彼らのその剣槍や弓矢の腕前は侮れない



自分たちもそうだが、自然と共存したくましく生きている部族の身体能力は常識を超えている時がある



注意しながら篝火かがりびの炊かれた一番大きな陣幕の裏側へと忍び込む



(たぶんこのテントの中に“白猫鬼”・・・“白猫姫”様がいるはずだ・・・後は何とか直接話をして連れて帰らないとな・・・)




ヒュッ



油断をしていた訳ではない



その矢は殺気も音も無くオレに鋭く襲いかかってきた



素早く身をかわし何とかその矢を回避するが、想定していたとはいえ想像以上に恐ろしい矢線である



オレも弓術には少し自信はあるが、これ程まで鋭い矢を射る者をそう多くは知らない



「『白狼の尾』・・・師匠・・・」



未だその射手は姿を見せなかったが確信はあった・・・



オレは彼に聞こえるように呟く



“白猫姫”様の側にはいつもこの男が影の様の控え、その身を守っている



どんな腕利きが闇夜に紛れ忍び込もうとしても、必ずその男が侵入者に鉄槌を下す事も知っていた



それは忠誠心という言葉を越え崇拝にも近い



そして、一年ぶりに見るその弓術だが自称弟子であるオレが見忘れはずがない・・・



・・・・・・



「おや、怪しい気配と人影があったから来てみれば・・・気のせいか聞き覚えのある声だね・・・」



射ったすぐ後にいつの間に場所を移動していたのだろう



先ほどの射線上とは違う物陰からその声と長身の人影がゆっくり出て来る



その手にはよく使い込まれた短弓と矢を構えられ、こちらをいつでも射ぬく準備をしているのが見える



「やっぱり・・・“白狼”って師匠だったんですね・・・・」



オレは顔が見える所まで来た我が師匠の姿を確認する



大森林でも有数の目を持つ師匠にも、オレの顔と姿はハッキリと認識できているはずだ



だが師匠はその弓矢の構えを解かずにこちらを警戒している



「師匠・・・師匠と“白猫姫”様を迎えに来ました・・・一緒に帰りましょう」



オレは他の敵兵に気付かれない様に小声で呟く



どんな事情があるか分からないが、人違いでなければ必ず一緒に帰ってくれると信じていた



「『魔獣喰い』・・・残念だけど今は一緒に帰る事は出来ないね・・・」



そう言いながらも師匠の目はどこか寂しそうだ



「何で!?一体どうしてですか?」



オレは思わず声を荒げてしまう



「それは・・・私の口からは何とも言えない・・・そうだな・・・明日戦場で会った時にでもゆっくりコレで語り合おう・・・」



そう言いながら師匠はオレに鋭い矢を射ってきた



だが今度のは避ける必要はない



オレのほおをかすめて後方の建物の壁に突き刺さる



ワザと外すのは構えで分かっていた



「中隊長・・・まずいです・・・敵兵がこちらに向かって来ます」



周囲を見張っていた部下がオレに危険を知らせてくれる



「・・・くそっ、師匠、オレは連れ戻すのを絶対に諦めませんからね!」



わざわざ迎えに来たのになぜ一緒に帰らないのだ



親しい者に裏切られた気分になったオレは、思わず感情的にそう叫びその場を撤退する



「ああ・・・分かった・・・じゃあ、明日な・・・」



そう言うと『白狼の尾』は右手をひらひらさせその場を立ち去って行く



(くそっ・・・くそっ・・・一体どうして・・・何かあったのか・・・)



たった一年間だけ離れたいたのに何があったというのだ



そんな疑問と猜疑心さいぎしんかられながら、オレは敵の陣地を離れ闇夜に消えて行くのであった・・・






この章の登場人物を簡単に説明します




《皇都行きご一行様》


『魔獣喰い』マジウス・ダンシャク

森の弓戦士。男爵位を習得しフランケンの村の領主となる。優秀な部下に恵まれ最近はやる事がない。研究軍師セリーナの護衛として部下と共に皇都に向かう。安全で簡単な任務(予定)。




精霊神官ちゃん

マジウス・ダンシャクと共に下界の村に赴く。医者兼“砂糖工房”監督。豪華な馬車に乗り悠悠自適な旅に便乗中。皇都での買い物と買い食いを夢見ていた。潜入には行かずに本陣にて留守。



重戦士『岩の矛』イワノフ

いつも通り『魔獣喰い』に付いて来た。鈍重なイメージがあるが隠密行動も結構できる。



研究軍師セリーナ

森の研究軍師でありイスラマ神聖皇国のお姫様。今回は戦場に行かずに図書館にて研究中



イスラマ神聖皇国『聖女』エレナ

マジウス・ダンシャクと共に下界の村に赴く。フランケンの村の教会の司祭は皇国から派遣された者に任せてマジウスの旅に同行する。皇国では偉い人になる。北の戦場には行かずに皇都の大聖堂で留守番





“レイアお嬢様”レイア・ケルガー

大陸最大商会“ケルガー商会”の令嬢。大陸東部の最高責任者。趣味の悪いフリフリのドレスや扇を愛用する。見た目はアレだが商人としての能力は高い。巻き髪。皇都に着いてまずは自分の商館に行く。



“居合のダテツ”ダテツ

レイアお嬢様の専属護衛の一人。故郷である“ニの国”は大陸の西北に浮かぶ小さな島国。

長らく鎖国の政策をとってきた小国で独自の文化が花開いており、風光明媚な四季豊かな土地らしい。今は単身海を渡り、縁がって今はレイアお嬢様に仕えている。“大陸七剣王”の一人




《イスラマ神聖皇国》



新教皇マリオ

ライバルたちを蹴落とし無事に新教皇に就任した。前回のベール王国への無理な大遠征の後始末が日々翻弄されながら皇国に改革を起こすべく邁進する。『魔獣喰い』と同じく転生者。極度のシスコン。



《北馬族》


白猫姫

大森林の部族の姫様。獅子姫の実姉で魔の森“大砦”の最高司令官。一年前に槍使いの“敵”に敗れ、修業に出て以来行方不明だった。何と放牧民族の“北馬族”にいるという噂が



白狼の尾

森の戦士で弓の達人。魔の森“大砦”の大隊長で『魔獣喰い』の弓の師匠。のんびりした性格と口調だが『白猫姫』に出会う前は荒んだ戦士だった。今は白猫姫様と行方不明でどうやら一緒に修業(お守り)をしているらしいという情報だった。何故か“北馬族”の武将としている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ