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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【下界 フランケンの村】の章

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147/204

114羽:拳でスカウトに行く

主人公の情報内での地図です

今後話が進んでいく内に情報量が増えていきます

測量技術が発展途上なので正確さに欠ける地図になります



挿絵(By みてみん)



“暁の刃”はここ最近で勢力を伸ばしてきた盗賊団だ



自分たちを“盗賊”という意識はあまりなく、近隣の農村や行商隊を襲って金品や食料を拝借する程度の仕事だと思っている



元々は戦の略奪で廃村化した村人たちが、生きていく為に山の廃砦に住み着き武装したのが始まりだった



ヴェルネア帝国やイスラマ神聖皇国、ベール王国の脱走兵もいつの間にか加わり規模は拡大していった



戦力が増えるのは助かるが、規模が多くなると今度は食いぶちに困る



近隣の農村の多くは荒らされてもう奪う物すらない



また最近では行商人すらこの近辺を近付かなくなってしまった



(そろそろここも潮時か・・・・だが今更重税ばかりの農民に戻る事も出来そうにもないし・・・)



“暁の刃”の頭であり元農夫であった男はそんな事を考えていた




そんなある日それ起こった



その“暁の刃団”は今までにない恐怖と混乱の渦に巻き込まれていた



月が煌々と輝く満月の夜



根城する廃砦が何者かに襲撃されたのである



襲撃と言ってもそれは音も気配なく行われ、気付いた時には自分と数人の仲間しか戦力は残っていなかった



敵は音もなく忍び寄り、この暗い闇夜ですら何故か自由自在に動き回る



怪しげな体術で次々と仲間が倒されていく



頭である男は辛うじて自分の剣を抜き、目の前にいる男と向きっていた



敵は見た事も無いような鎧や衣装を身に着け、その表情は闇夜で読み取れない



「けっ、王国か皇国か分からねえが、舐めた真似したがって!生きて帰れると思うな!」



頭の男は目の前にいる敵に剣を向け精一杯の虚勢を張る



「王国と言いえば王国だけども・・・とにかく無駄な抵抗は止めて降参してください。命までは取りませんから」



敵は優しい語り口調で自分に投降を呼びかけてくる



自分達は同じ農民たちをなるべく殺さずに奪ってきたが、盗賊が捕まったら“打ち首”が常識だ



「うるせぇ!どうせ打ち首だ。死にやがれ!」



頭の男は自分の剣を上段に構え敵に斬りつける



相手はまで剣も抜いていない



(最後の意地を見せてやる!)



そう思った瞬間、目の男の視界から消え、男の意識は鈍い鈍器で殴られた様な感触と共に消えて行くのであった







「班長、こっちも終わったぞ。逃げた奴もいない。これでこの砦は制圧した」



副小隊長のイケメン剣士がオレに報告してくる



砦にいた野盗たちは全員縄縛りにされ、砦の中央広場に集められていた



多くの者は自分のたちの姿に怯え命乞いをし、また抵抗した者は先ほどの頭の男の様に当て身で気絶していた



「それにしても『魔獣喰い』。敵を殺さず全員生け捕りなんて、随分と面倒臭い事を指示したな」



森の重戦士『岩の矛』イワノフはその両手に数人の捕虜を抱えて戻って来た



全員素手で気絶させられていたが、岩石の様に巨大なこの男の拳に殴られたのは気の毒しか言えなかった



「よし、それじゃ、捕虜と戦利品を持って村に帰ろう」



『魔獣喰い』マジウス・ダンシャクことオレは部下に声を掛け、今宵の任務を終えたのである






赴任したフランケンの村の近隣を根城にしていた野盗団や山賊団を、最近オレたちはこんな感じで片っ端から制圧していた



最近は戦乱が続き、またこの近辺は国境地帯のグレーゾーンであったために結構な賊がはびこり問題になっていたのだ



賊達により近隣の村々や襲われ、行商人や旅人たちは荷物や路銀を奪われこの地域は荒れ果てていた



そこで今回フランケンの村の領主になった初仕事として“治安回復”を行っていたのである



賊の中には兵士や傭兵崩れが武装した危険な集団もいたが、今回の様に闇夜に紛れて忍び寄り無力化していく作業をオレたちは淡々とこなしていた



夜目や身体能力、隠密活動に優れた森の戦士達にとって拠点強襲はお手の物な作業であり、逆に先ほども『岩の矛』イワノフが言っていた様に生け捕りにするのに少し手間取った位だ



それなのに何で出来る限り賊を生け捕りにしたかというと・・・・






「それでは、今までの皆さんは今日で死にました。明日からはこの村で村民として働いてもらいます」



縄を解かれフランケンの村の広場に集められた今宵の獲物たちは、領主マジウス・ダンシャクにそう宣告されたのであった






「おはようございます。皆さん今日もご苦労様です!」



フランケンの村の周囲の開拓地を懸命に耕す村民に、領主マジウス・ダンシャクはさわやかに声を掛ける



「ひっ、す、すみません!真面目に働くので命だけはお助けを・・・」


「も、もう逃げたりしませんので、その魔弓をお仕舞いください・・・」



賊から新たに村民となった者たちは、マジウスの顔を見ると怯えた表情でこれまで以上に懸命に働く



「・・・・それにしても、この短期間でよくこんなにも多くの農奴を集めて来たものですね」



マジウスの後ろにいた領主補佐官の“妹騎士”クリステルは呆れた声で呟く



この村の近隣を根城とする山賊や野盗たちは治安を乱す存在であった



この地を統治していた以前の領主たちも何度か征伐を試みたが、根城を定期的に変え神出鬼没の賊達相手に手を焼いていたという



だが森から来た新領主とその仲間たちは、賊達の根城を短期間で全て発見し、闇夜に紛れて次々と壊滅していったのである



しかも、賊達を出来る限り無傷で降伏させ、この村の農奴として管理下に置いていたのであった



常識で考えるなら血の気の多い賊達が順々に農作業をするのは難しい事だ



彼らも冷徹で残忍な賊達であったが、襲撃された時に何かあったのだろうか・・・



今は殆どの者がこのように従順?な農民として働いていたのである



その中でも腕っ節の自信がある者は村の自警団として登用され、見ているのが気の毒な位な厳しい軍事訓練を毎日課せられていた



反抗的な者や逃亡・暴動を試みた者もいたが、次の日の朝にはその者達は消え、恐ろしい噂だけが村人たちに広がっていった



「あいつらは闇夜に紛れて暗い森の中に連れて行かれて、呪いの儀式の生贄にされたのでは・・・」



噂が噂を呼び賊達は次第に大人しくなっていった







不気味な恐怖で村人たちを押さえつける一方で、新しい領主は寛大な措置も多く取っていた



「えっ!人頭税、地税、教会税、結婚税、死亡税、竈税、粉挽き小屋使用税など、本当に何も“税”は取らないですか!?」



“妹騎士”クリステルは驚きを通り越し、飽きれた声で領主マジウスに再度確認する



前述の税金は領主がその領民に課す正当な権利だ



その税金により領内の公共事業や治安の維持を行う



税の大部分は領主自身の私腹を肥やす事が多いが、最低限の領地経営さえすれば王国もそこまではうるさくはない



国と貴族の暮らしはこうした重税により成り立っているのも事実なのである



「オレと森の民は自給自足だから“給料”なんていらないし、領内の公共事業も村人皆で行えばそんなにお金は掛からないはず。今開拓している畑を村の財源畑にしようと思うから、教会とかの維持金はそこから捻出しようと思っている。あっ、もちろんクリステルちゃんには給料は払うからご心配なく」



領主マジウスは真面目な顔でそう答えてくる



(公共工事や直轄農作業を村民全員で行うのは、そういう労働税もあるからいいけど、領主や兵士たちが無給っていうのは聞いた事がないわ・・・・この人は本気で領内経営をする気があるのかしら・・・)



“妹騎士”クリステルは得意げに説明してくる領主の内心が読めずに困惑していた



確かにこの非課税制度を継続出来たら、村人たちの暮らしは格段に楽になり発展もしていくだろう



(もしかして、トンデモナない任務を私は引き受けてしまったのでは・・・)



歴史あるグラニス家でエリートコースを歩んでいたクリステルは、短い期限で請け負ったこの補佐の任務に何ともいえない怖さと好奇心が湧いてきていた



(・・・それにしても、マジウス様が時々こっそり見ている“マル秘!手引書マニュアル”って何かしら・・・まあ、気にしない方がいいかもしれないわ・・・)




生真面目なクリステルは驚く事を諦め、新領主のこれからの指示に従う事にした








登場人物の主要キャラを簡単に説明します



【フランケンの村】

別名“大陸東部の火薬庫フランケン”



『魔獣喰い』マジウス・ダンシャク

森の弓戦士。男爵位を習得しフランケンの村の領主となる。極秘任務『フランケンの村を発展させ目立たせる』を遂行中。現代日本の14歳の記憶を持つが、そんな知識ははっきり言って何の役にも立たない例。現代知識“非”内政無双。



クリステル・デリス “妹騎士ちゃん”

ベール王国の女騎士。 “女騎士ちゃん”スザンナの実妹。武の道を諦め文官の道を選ぶ。生真面目な性格で近寄りがたい雰囲気を持つ。着やせタイプの姉は逆でややスレンダーな体型。左遷されたと思い込んでいた。



精霊神官ちゃん

マジウス・ダンシャクと共に下界の村に赴く。村人の間では“恐ろしい呪い師”と噂される。捕虜にした賊たちに怪しげな薬草を飲ませている。



イスラマ神聖皇国『聖女』エレナ

マジウス・ダンシャクと共に下界の村に赴く。彼女だけは有名な聖女である為に村人に受け入れられている。現在は無人となったフランケンの村の教会を整頓している。



重戦士『岩の矛』イワノフ

いつも通り『魔獣喰い』に付いて来た。怪力器用で村の修繕工事に大活躍。村人の間では“人間に化けた大鬼”と噂される。素手で加減するのは苦手。



副小隊長イケメン剣士、『荒き牛』、『坊ちゃん』

小隊の他の仲間と共にフランケンの村に赴任





【その他の地域】


獅子姫

森の大族長の娘で凄腕の剣士。現在は森の中に渋々残り、大族長の仮任に就いている




女戦士『黒豹の爪』

赤髪ガエルと共にヴェルネア帝都に向かった。



『赤髪』ガエル

女戦士『黒豹の爪』と共の帝都に向かい皇帝に謁見し、対魔作戦を進言する



『弓公子』アベル

ガエルに捕まり一緒に帝都に向かう。ガエルの代わりに宮廷工作を行う




研究軍師セリーナ

マデレーン王女と共にまずはベール王都に向かい“魔”に対する研究を行う



マデレーン王女

ベール王都に戻り父であるベール国王に進言する



『聖騎士』ヘルマン

マデレーン王女と共にベール国王に進言する





女騎士スザンナ

天然系姉騎士ちゃん。レオンハルトと共にグラニス領へ戻る。小さい頃から妹を可愛がる



グラニス侯爵レオンハルト

ようやく自領に戻る。片思いに現を抜かして仕事が溜まっていた。



白猫姫

獅子姫の姉で魔の森“大砦”の最高司令官。一年前に槍の“敵”に敗れ、未だに修業に出て行方不明。噂では下界にいるというが・・・・



白狼の尾

森の体で弓の達人。魔の森“大砦”の大隊長で主人公『魔獣喰い』の最近までの弓の師匠。今は白猫姫様と行方不明でどうやら一緒に修業(お守り)をしているらしい。



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