112羽:極秘任務を承る
新年になり二日目の朝
今日は昼食を取りながらオレはマジメな会議に参加している
大村の城の会議室には
・『魔獣喰い』ことオレ
・獅子姫ちゃん(二日酔い気味)
・神官ちゃん(二日酔い気味)
・女戦士『黒豹の爪』(二日酔い気味)
・研究軍師セリーナ
・重戦士『岩の矛』(ほんの少し二日酔い)
・ベール王国マデレーン王女(二日酔い気味)
・近衛騎士ヘルマン
・グラニス侯爵レオンハルト(やや二日酔い気味)
・女騎士スザンナ(二日酔い気味)
・ヴェルネア帝国司令官『赤髪』ガエル(ほんの少し二日酔い)
・イスラマ神聖皇国『聖女』エレナ(二日酔い気味)
と各国の来賓が勢揃い、森の戦士団の各団長(やや二日酔い気味)も参加している
・・・・というか殆ど連中が昨夜飲み過ぎで二日酔い状態で会議室は酒臭い
特に女子組が酷い
何でも明け方まで恋愛話で盛り上がり飲んでいたという
華やかに見える女子会だが・・・・恐ろしいや
とりあえず「鳥のさえずりが素敵ですね」と白々しく言いながらオレは会議室の窓を開けて換気する
風通しの悪い部屋:しかし何も起こらなかった
・・・オレは諦めて会議の席に戻る
会議は軍師セリーナと獅子姫が進行役となり話が進んでいく
この世界の民はアルコール分解能力も強いのか会議が進むにつれて皆酔いも醒める
議題は主に明日以降の各国各部族での対応が話し合われていた
“封印”の力が弱まった今、『魔』が大陸中に溢れ出す『魔の刻』が起こり恐怖の支配する世界が訪れるのを防ぐ対策だ
・各国各部族の古い文献を調べ『魔の刻』についての内容を見つけ、定期的に集まり情報共有する
・各国各部族の優秀な武人文人を広く集め『魔の刻』が起きた時に備える
・“敵”と呼ばれている集団の本拠地を見つけ出し、こちらから攻撃をしかけ壊滅する
話しをまとめるとこんな感じだ
今まではどちらかといえば“魔素”の出現や“敵”に対して受け身で対応していたが、これからは積極的にこちらから攻勢を仕掛けていく
その為には各国の連携が必須であり各王たちの説得が課題だ
ヴェルネア帝国は『赤髪』ガエルが面倒臭そうにこれを了承し、皇帝に対して色々な筋で進言するという
こう見えてもガエルは帝国の貴族であり名の知れた司令官である
また彼の副官である『弓公子』アベルは宮廷調略を得意とした大貴族で、恐らく殆ど彼に丸投げという話だ
(ネロ殿下がこれに協力してくれたらスムーズに行きそうだが・・・・)
オレは帝都で世話になった皇帝の実子であり凄腕の槍使いの人懐っこい顔を思い出す
一方、ベール王国に関してはマデレーン王女と近衛騎士ヘルマンが国王の説得を直接行うという事でこちらは安心だ
何しろマデレーンは今のベール王の実娘であり、騎士ヘルマンも『聖騎士』と呼ばれる程その人望実力とも王宮では影響力がある
特に莫大な国家予算を掛けて事業を行えという話ではない
王宮の古い文献を検証して対策を練るという話なのでこちらも順調にいくだろう
最後にイスラマ神聖皇国だがこちらは少し手強い
つい先日まで敵対していた国家という問題だけでなく、現在は亡くなった教皇の跡継ぎ紛争で皇都も分裂状態だという
今のところは研究軍師セリーナの実兄であるマリオが次期教皇の最有力候補だが、決定するまではもう少し時間が必要だ
この辺りは軍師セリーナと皇国の『聖女』エレナが手紙等でマリオに連絡し、事前準備をしておくという事になった
場合によっては皇国に一度、正式な使節団を送り友好関係を早急に結んでおきたいところだ
「・・・・・」
何故か成り行き上、会議に参加しているオレだが今回は結構ちゃんと内容を聞いている
何しろこの大陸の命運を賭けた作戦と戦いになるかもしれないのだ
一語一句聞き逃さない様に聞いているフリをする
まぁ、話が難しすぎて発言は一度もしていないが・・・
「・・・それではその事に関しては『魔獣喰い』マジウス、頼むのだ」
軍師セリーナちゃんが真剣な眼差しでオレの方を見て話を振って来る
「・・・・はい、喜んで、その任お受けいたします!」
オレは姿勢を正し皆にやる気のあるところを見せる
「おお、流石だ・・・」
「『魔獣喰い』もようやく一人前になったか・・・」
会議に参加していた者たちから感嘆の声が上がる
(ふっふっふ、オレもやる時はやるのだよ、皆の衆・・・・ところで“その事に関して”っていったい何の事だ?)
どうやらオレの集中力は所々途切れていたらしい
☆
会議も無事に終わり、この大村に来ていた各国の来賓たちの帰国の見送りをする
マデレーン王女と近衛騎士ヘルマンはベール王都へ
青年騎士レオンハルトと女騎士スザンナは自領であるグラニス領へ
『赤髪』ガエルは面倒臭そうにヴェルネア帝都へ帰国する
更には森の部族から軍師セリーナが文献研究の為にベール王都に付いて行き、女戦士で上級幹部の位“大隊長”である『黒豹の爪』はガエルに付いて帝都に使者として行く事になった
「いやじゃ、私も下界に行くのじゃ!」
と獅子姫も下界に無理やり行こうとしていていたが、今は獅子王様の代わりに大村の城に残り“大族長”の仮の任に着くと言う
獅子王様は先日見たとおりに少し体が弱っているという
詳しくは分からないが、これは病気やケガなどではなく避けられない運命だという話だ
直ぐに命に係わるとういう事ではないらしいが、暫くは精霊神官の館で療養していくという事だった
この着任はある意味で次の大族長が獅子姫ちゃんになる前段階なのであろう
獅子姫ちゃんの兄姉事情はよく知らないが、大砦にいた獅子姫の姉である“白猫姫”様は未だに武者修行中だ
何でも下界にいるようで、半年に一度位はこっそり大森林の端に戻り、同行している精霊神官の力の補充と加護の術のかけ直しをしているみたいだが、その後の下界での痕跡はさっぱり不明だという
元々ふらふらする性格の方だから心配ないが、そろそろ帰って来て欲しいものだ
(そういえば、獅子姫ちゃんたちには男の兄弟はいないのかな?聞いたこともないし見た事もないし・・・・まあ、今度ゆっくり聞いてみるか)
下界へ戻る準備も万端で後は出発するだけだ
下界に行く人たちは森の直轄領であるザクソンの街まで全員一緒で、更に戦士団も護衛として付くので道中危険はないだろう
オレはまた暫く会えないなる仲間たちに目線を送り、しばしの別れを惜しむ
「さぁ、班長。準備は出来たぞ。オレ達も行くぞ」
先日オレの小隊の副隊長に昇進したイケメン剣士がオレの旅の荷物を渡してくる
見るとイケメン剣士以外にも、オレの小隊の部下達が勢揃いして旅の準備を待機している
「今回のはあまり面白くなさそうな任務だが、お前と一緒ならまた何かがあるだろう。『魔獣喰い』頼むぞ」
重戦士『岩の矛』も長旅装備でオレの肩を叩いて挨拶してくる
『岩の矛』は本当は大砦の近衛戦士所属だった様な気がするけど最早関係ないの?
「マジウス様。下界の事でしたら旅慣れた私にご案内お任せ下さい」
聖女エレナがオレの左脇にピタリとくっ付いて来る
もちろんその手には、布で隠しきれない“大剣”という名の鉄塊を軽々と下げている
「『魔獣喰い』様。わたくし精霊術を更に高めましたので、前回より長い期間下界にいれますのでご安心を」
猫を被った言い方をしている精霊神官ちゃんが、右脇にくっ付いてきてその胸を無意識に寄せてくる
そしてその手に聖書っぽく持っているのは、明らかに例の恋愛小説だよね?
「・・・・・」
小隊の戦士とその他の人たちはオレの号令を待っている
沈黙と微妙な空気が流れる・・・・
「『魔獣喰い』、お主は下界の自分の領地に赴いて、そこで極秘任務をこなすのだ。詳しくはお前の副隊長に伝えてある」
事態をよく把握できていないオレを見かねて、軍師セリーナちゃんがオレの背後からボソボソと呟き教えてくれる
流石は付き合いが長い仲だ
「よし、皆の者出発だ!」
「おー!!」
オレの空元気な号令と共に小隊の皆は下界に向けて歩み始める
(極秘任務って何だろう・・・・まあ、いっか・・・)
こうしてオレは毎度の事ながらに事態に流れるまま、その激流に身を任せてしまうのであった
次回からいよいよ新章スタートです
こうご期待ください!!




