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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【『魔獣喰い』18歳の女難】の章

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143/204

110羽:獅子姫は呟く   ★挿絵あり 獅子姫


あとがきに『獅子姫』ファンアート及びイラストがあります。

あくまで書いた方のイメージです。

個人のイメージを大事にする方は閲覧ご注意ください






「私は、あの者たちが羨ましい・・・」



獅子姫はポツリと呟く



後ろに控える騎士ヘルマンは口を挟まず、それを静かに聞いている



「正確に言うと、お前たち男衆が羨ましいのじゃ・・・」



獅子姫の視線の向こうには、上半身裸で素手の殴り合いの果てに地面に転がり、大声で笑いあっている森の戦士『魔獣喰い』と青年騎士レオンハルトがいる



最近ギクシャクしていたこの二人だったが、この決闘を経て何かを通じ合えたのだろう



(若さとは、いいモノだ・・・・)



彼らより年上のヘルマンの目にも、その光景は眩しくも映る



「男衆が、と言いますと?」



いつにもなく自分の多くを語る獅子姫にヘルマンは問いかける



「ヘルマン、私はな“男の戦士”に産まれたかったのじゃ・・・・もし男に産まれていたのなら、父上やお前たちの様に強靭な筋力と底なしの体力を手にし、私は今よりもっと強い戦士になれたのではと小さい頃思っていたのじゃ・・・」



獅子姫は引き締まりスラりとした自分の手足を眺めながらそう呟く



「それでも獅子姫様には人を越えた瞬発力と戦闘の才能がございます。それだけでは足りないのでしょうか?」



獅子姫の瞬発力は斬られた者が息絶えるまで、それに気付かない程の速さである



しかも膂力も下界の大人の以上であり、金属製の鎧ですらやすやすと切り裂く力がある



しかし、それはあくまでも一般的な大人に比べてであろう



“精霊の加護”がある森の男性戦士の力と瞬発力はそれこそ人を越えている



「それだけでは足りないのじゃよ・・・・私はもっと強くなり“兄上”を倒さなくてはいけないのだ」



そう呟く獅子姫の声には急に殺気が籠り、言葉尻が強くなる



「獅子姫様・・・・男には出来る事もあれば、出来ない事もあります・・・・そして、女性に出来る事もあれば、出来ない事もあります」



獅子姫の言葉を聞きヘルマンは静かに語る



「自分一人の力ではどうやっても届かない事もありますが、夢を持ってそれに果敢に挑戦する事は決して無駄ではありません」



いつも冷静な騎士ヘルマンは少しだけ熱く話す



「ほお、お前にしては随分と熱く語るな・・・・そんなお前には“夢”とやらはあるのか?」



ヘルマンの意外な言葉を聞き、少し冷静さを取り戻した獅子姫は口元に笑みを浮かべ意地悪く問いかける



「“夢”ですか・・・・恥ずかしい話ですが、こう見えても私はまだ“世界一の剣士”になる夢を持っております。数年前までは殆ど諦めていた夢でしたが、あなた様やあそこにいる『魔獣喰い』、帝国の『赤髪』ガエル殿たちを見ていたら、フツフツと熱いモノが溢れ出し、再び夢見るようになってしまいました」



騎士ヘルマンは自分の剣を抜き、目の前に構えその剣に魅入るように語る



「“世界一の剣士”か・・・・お前だったらいつかは届くのだろうな・・・・私はそんな称号はいらぬ・・・ただ一人倒せればいいのじゃ」



実際にベール王国の近衛騎士ヘルマンに勝てる者はそう多くはいないだろう



だがこの世界は広い



まだ名も知られていない戦士や剣士が世界中埋もれているのかもしれない



それは長い間この世界と関係を絶っていた森の戦士たちであり、各国にいる剣士たちでもあるのだ



「獅子姫様の望みも随分と茨の道かと存じ上げます。でもあなた様は一人ではありません・・・・あそこにいる彼らもいて、多くの仲間や部下に囲まれております。そして彼らは例外なくあなた様の為なら喜んで剣を振るうでしょう・・・・もちろんその時には私も馳せ参じますが」



ヘルマンも視線の先で、笑い合いながら立ち上がろうとする若者を見ながら獅子姫に言葉を伝える



「ああ、そうじゃったな・・・・これからは周りの皆の事をもう少し頼ってみるとするか・・・・それにして、お前はただ強者と剣を交えたいだけなのだろう?」



獅子姫はヘルマンの方を振り返り、再び意地悪そうに問いかける



「もちろんでございます。こう見えても私は三度の食事より戦いが好きなのでございます」



人々に“聖戦士”と敬われながらも、心の内に“狂戦士”としての一面も持つ騎士ヘルマンは真顔で答える



「そんな事は皆知っておったよ。戦場でのお前の顔は、窮屈な宮廷にいる時の何倍も生き生きしておるからの」



そう言いながら獅子姫は声を上げて笑い出す



「獅子姫様、笑い過ぎでございますよ。さあ、彼らもひと段落した様なのでこちらも城に戻りますか」



視線の先では『魔獣喰い』とレオンハルトが完全に立ち上がり、互いの肩を貸し合いながら城へと戻ろうとしていた



「それより、先程『岩の矛』の奴に強烈な一撃喰らわせておいたから、お前の方で宥めておいてくれ。その内怒り狂ってここまで追いかけて来そうだからな」



この二人に比べたら鈍重な『岩の矛』も、もうすぐここに駆け付けるだろう



「彼なら心配ないかと思います。済んだ事は気にしない性格ですから。“三度の飯より強い奴が好き”と言っていましたら」



ヘルマンは『岩の矛』が来そうな方向を眺めながら獅子姫に答える



「あー、何で私の周りの男共は、こうも年中戦いの事しか考えないバカばかりなのじゃ・・・・私はもう少し優雅に生きてみたいものじゃ」



一番好戦的な獅子姫がそう愚痴り、ヘルマンは思わず苦笑する



「そうですね・・・・今度“優雅な仲間”でも探しておきます。さあ、ではそろそろ行きますか」



そう言いながらヘルマン森の一本道を戻って行く



(本当にバカばかりじゃの・・・だが、悪くないな・・・・)


獅子姫はそう心の中で呟き城への帰路へつく



その顔に浮かぶのはトレードマークであるいつもの小悪魔的な笑みではない



柔らかな温かい笑みで表情を崩す







この章は(女性)人物が多く登場するので簡単に紹介します




『魔獣喰い』マジウス・ダンシャク

森の弓戦士。まさかのモテキ?到来で最近鼻の下が長くなる。知覚鋭敏で見えない気配などを掴む能力があるらしいが、男女関係については鈍感壊滅状態。秘技“タイマン友情”を習得した。



獅子姫

森の大族長の娘で凄腕の剣士。最近鼻の下が伸びた『魔獣喰い』を見てツンツンイライラする。色々と悩めるお年頃





重戦士『岩の矛』イワノフ

結婚して子供がいるので他の女に興味無し?近衛騎士ヘルマンの誘いで『魔獣喰い』とレオンハルトのタイマンに邪魔が入らない様に協力する。念願の獅子姫との勝負を煙に巻かれてプンプン。



近衛騎士ヘルマン

マデレーン王女に変な虫が付かないように全力で警護する。でも気を利かせる事もたまにする。いい奴だ。『魔獣喰い』とレオンハルトのタイマンに邪魔が入らない様に入口を塞ぎ若い戦士を返り討ちにする。笑顔で結構怖い事をする。若い頃の夢は“世界一の剣士になること”再燃中



グラニス侯爵レオンハルト

本来はグラニス家に戻らなくてはいけないのに、無理やり大村に来た。祭りを堪能中。マデレーン王女とマジウスの踊りを見てニンマリする。幼い頃から獅子姫に憧れ恋焦がれていた。何故かモテモテ?で獅子姫さえも気にしている『魔獣喰い』に嫉妬心を燃やしていた。ヘルマンの焚き付けでタイマン勝負を挑む。幼い頃は“交じり”の影響で情緒不安定。生まれ都市で悪がきとして大人を手を焼かせていた。




森の若手戦士達

昼飯が終わり訓練所に向かう時に森の大戦士『岩の矛』と下界の凄腕騎士ヘルマンに引き返す様に言われる


騎士ヘルマン「どうしても引き返してもらえないのですか?」


若手戦士A「“一矛千騎”『岩の矛』・・・“聖騎士”ヘルマン・・・あなたたち二人とやり合えるなんて、こんな幸運はもう二度とこないだろう。力づくでも行かせてもらう!」


ヘルマン「・・・・」



戦士『岩の矛』「まあ、ヘルマンの旦那。こういうヤツ等には口で言っても通じねえぞ。諦めて胸を貸してやりな」


若手戦士B.C.D「何だと・・・舐めるな!!」


騎士ヘルマン「やれやれ、本当は穏便に済ませたいですが・・・」






獅子姫(ベール王都ファッション)

挿絵(By みてみん) 

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