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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【『魔獣喰い』18歳の女難】の章

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139/204

106羽:とある肉食系女子の場合


祭りも二日目の夜になる



いよいよ明日から新年という事もあり、昨夜に増して村人達も祭りで盛り上がっている



今日も大村の大広場では赤々とかがり火が焚かれ、その周りでは原始的な楽器の演奏に合わせて男女が歌い踊る



その最中、未婚の若い男たちは意中の女性を誘い、官能的に激しく踊りで愛情を表現する



また誘われた女性たちも、踊りによってそれに返答し、お互いに思いが通じたならば今宵は温かく愛が育まれるだろう



この森の部族の男女関係は、どちらかと言えば自由でありオープンな部分がある



一人の女性を一途に愛する者もいれば、力があり狩りで養える者は二人以上の妻を持つ



たまに魔獣狩りや激しい任務で一生独身の者もいるが、優秀な戦士や狩人は男女を問わずその力を後世に残すために、多くは妻や夫をめとり子を成していた



こうする事により優秀な戦士狩人の遺伝子が後世に残り、過酷な大森林の生活にも適応できる子供が生まれるとうサイクルが繰り返されてきたのだった



特に最近では、下界から交易により保存の効く穀物が大量に輸入され、出生数も爆発的に増加し、各村ではこれなでない位に賑わいが創造されていた



これまでは森の植物の採取や、獣を狩る事による不安定な状況でしか食糧を入手できづいた



森の民にとって安定した食料がいつでも手に入れるという事は非常に大きな改革であり、本能により子を宿したい女性達はこれまで以上に積極的に愛を育んでいるようだ




(まさに大森林中がラブラブ期に突入したみたいな感じだな・・・・)



そんな官能的に踊り狂う村人たちを見ながら、『魔獣喰い』ことオレは一人酒を飲んでいた



酒を飲むと言っても“ウワバミ”の如く飲んでも飲んでも酔わない体質のオレは、“酒を飲む雰囲気”に酔いながら祭りを楽しんでいる



昨夜とは違い、今宵のオレは下界からの来賓客の接待も休みであり、久しぶりに大精霊祭をゆっくり満喫しているのであった



(それにしても森の民の生活も、数年前からは想像も出来ない位に変わってきたな・・・・)




オレは大広場の賑やかな喧騒を心地よく聞きながら、大村の路地を進み感慨深い想いにふける



大昔からこの部族は、下界との接触を一切断ち切り“鎖国”の様に森の中だけで生活していたという



それが数代前からの大族長からは、森の山側に住む“山穴族”と交流を持ち金属武器革命を起こし、各地に砦を建設して組織的な軍団を設立し、天敵である魔獣に対して集団戦で勝利を収めてきた



更に先々代前の大族長の時代からは、大方針により“文字”と簡単な四則演算も各村で教育を徹底させ、大村では限定的に通貨も普及させたという



そして数年前には、ついに下界に直轄領を持ち交易と交流を始め、大森林の民はこれまでにない位に急速に発展してきている最中だ



それでも“森の精霊”を信仰しながら、自然と調和し丁度いいバランスで生活をしている



(少し前までは、オレも下界の文化の“毒”に侵されてこの部族の生活が悪く変化してしまわないか心配したけど、どうやら何とかなりそうだな・・・・)



新しい文化の取入れは決していい事ばかりではない



開国した江戸時代の日本や、インターネット文化の進出で古き良き風習が失われたアジアの国などを思い出しだす




(自分勝手かもしれないけど、この森の民はいつまでも“自分達らしさ”を失わないで居て欲しいな・・・・)



オレはそんな事を考えながらいつの間にか、大村の外れにある訓練場まで歩いていた



(・・・ここも懐かしいな・・・ん?)



そんな人気のない場所から何故か話し声が聞こえくる



オレは身構え意識を集中する








「こうして二人で相対するのはあの時以来振りか・・・」



銀髪の偉丈夫は低いがよく通る声で前の女戦士に語りかける



「ああそうだな・・・・祭りの会場から離れた所に、怪しい奴の気配あって来てみればお前とはな・・・」




短髪で露出した褐色の肌が輝く女戦士は、手に持つ大剣を冗談っぽくその銀髪の偉丈夫に向ける



「原始的で官能的・・・・確かに悪くない祭りだが、流石に二日連続となればオレも飽きてくる。あんなに美味そうなせんしたちが揃っているのに、我慢してお預けを喰らっていたら、溜まるもんも溜まっちまうぜ」



銀髪の偉丈夫『赤髪』ガエルはその手に持った大剣を眺め獰猛な笑みを浮かべる



「それについてはオレも同感だな・・・・祭りは嫌いではないが、こうやって哨戒の仕事をしていた方が緊張感あり性に合う・・・」



女戦士『黒豹の爪』もどこか嬉しそうに剣を強く握り笑みを浮かべる





「・・・・そういえば、あの時の決着がついていなかったな」



女戦士『黒豹の爪』は『赤髪』ガエルの目を真っ直ぐ見つめ問いかける



「・・・ああ、オレたち帝国が夜襲を受けた時のやつか・・・・確か、あん時はオレの前の大剣が折れて勝負がうやむやになったんだったな・・・」



ガエルは少し遠くを見つめ思い出しながら、現在自分の手に握られている新しい大剣“斬魔”に目を向ける



それはヴェルネア帝国の大貴族である『弓公子』アベルの実家から拝借した、由緒ある大剣あり宝刀であった



何でも書物によると遠い昔に“魔人”を斬り倒した名刀だとう話だったが、人間が使いこなすにはあまりにも大きく重過ぎる為に、公爵家の宝物庫に長い間保管されていたものだった



さすがのガエルも使いこなすのに最初は一苦労したが、激しい鍛錬の結果、今では何とか使う事が出来ていたが、使えば使うほど底が見えない面白い大剣であった



「前の剣とは違い今度のは途中で折れそうもないな・・・・」



『黒豹の爪』はガエルの手に握られている大剣を見つめ、獰猛な笑みを隠さずに見せ呟く



その女戦士の手に握られている大剣も、大森林の奥地に住む“山穴族”が掘りだした希少金属で作られた業物の剣であり、表面は象形文字が彫られ刀身が黒く輝いている



その大剣は“山穴族”の鍛冶師長が大隊長である彼女の為に作った渾身の作品で、金属より硬い魔獣の甲羅を貫き、甲冑まとった人馬を一撃で斬り裂く切れ味がある



「ああ、前回はオレのナマクラ剣のせいで中途半端に終わっちまったが、今回のは最後までお前を満足させられそうだ」



そう言いガエルは一歩間合いを踏み出す



ガエルは先程まで酒を飲んで祭りを堪能していた様だが、その熱気で身体から蒸気が溢れ出し、表面は湯気で蜃気楼のようにぼやけて見える



「ふふふ・・・・そうだな。前回はお預けをくらって、オレのここがうずいてしょうがないんだよ」



女戦士『黒豹の爪』は自分の下腹部に手を当て、隙の無い構えでガエルに一歩近付く



「・・・・」



両者の間に目に見えない闘気がぶつかり緊張感が走る



あと一歩・・・いやあと半歩でお互いの剣の間合いに入る



互いに一撃必殺の大剣使い



鎧を身につけていない今なら、かすりでもすれば勝負が決まるだろう



「・・・・・・」



お互いに無言で見つめ合う













「「ふっ、ふっはっは・・・・」」



二人のどちらともなく、突然笑い声が出てくる



それまでの緊張感は嘘の様に消え、急に場が和む



「さっきからあそこで覗いて奴がいるし、決着は今度二人きりで殺るか・・・・あいつが側で見ていると思うと、どうも調子がでねぇ」



『赤髪』ガエルは自分の大剣を手元に収め、誰もいないはずの暗闇に視線を向ける



「ああ、そうだな・・・あいつがいると、また丁度いいところで止められてお預け食らいそうだからな・・・・」



女戦士『黒豹の爪』も剣を戻し、深呼吸をして体の力を抜く



「それまでは、どこの馬の骨とも分からない奴や魔獣に殺られるんじゃねえぞ。お前の命も身体もオレが貰い受けるんだからな」



ガエルは先ほどのやり取りで満足したのか、柔らかい表情でその場を立ち去る



「それはオレのセリフだ。つまらない戦場で命を散らしても、オレは悲しんだりはしないからな・・・それからオレの体が欲しいなら命懸けで来い・・・逆に食い殺されるぞ」



『黒豹の爪』も嬉しそうな表情のまま、先程までの哨戒の任務に戻る








「・・・・ふー」




その様子を木陰から覗いていた『魔獣喰い』ことオレは、深呼吸して息を飲む



祭りを抜け出して大村の中を散歩していたら、静かな場所で男女の二人の密会に遭遇してしまった



帝国の司令官『赤髪』ガエルと森の女戦士『黒豹の爪』というまさかの組み合わせに驚いてしまった



お互いに真剣な眼差しで目と目で見つめ合い、語り合いながら歩み寄る姿にオレはドキドキしながら思わず見入ってしまった



(よく聞き取れなかったけど、最後の方には“身体が欲しいなら”みたいな事も言いあっていたし・・・・やっぱり年上は進んでいるんだな・・・)



元々戦場の敵同士で出会った二人だが、和平協定を結んだ障害も無くよく考えるとお似合いだ


お互いに腕利きの大剣使いであり、三度の飯より戦いが好きそうだ



(『黒豹の爪』ちゃんは自分より強い男が好みだと前に言っていたから、これはもしかしたら国境を越えたビックカップルの誕生か!?)




そんな能天気な事を考えながら、オレは人気の無くなった道に戻り散歩を続ける



耳を澄ますと大広場の方からは祭りの喧騒が聞こえ、今宵はまだまだ盛り上がりそうだ



(そういえば、緊張したらまた腹が空いてきたぞ・・・・)



腹が鳴り空腹を思い出したオレは暗闇の中を、屋台のある大広場へと戻るのであった








この章は(女性)人物が多く登場するので簡単に紹介します




『魔獣喰い』マジウス・ダンシャク

森の弓戦士。まさかのモテキ?到来で最近鼻の下が長くなる。知覚鋭敏で見えない気配などを掴む能力があるらしいが、男女関係については壊滅状態。



獅子姫

森の大族長の娘で凄腕の剣士。最近鼻の下が伸びた『魔獣喰い』を見てツンツンイライラする。



精霊神官ちゃん

突如現れた密着系の聖女様に対抗心?を燃やす。と思っていたら親友のマデレーン姫に一歩先を行かれる。自分の“小説読みたい欲”により習得した秘術を使い世界を救う?普段は表情を変えない無表情系だが内心は乙女チック。今宵は屋台料理の差し入れを食べながら療養中。



イスラマ神聖皇国『聖女』エレナ

『魔獣喰い』の洗脳波?浴びたせいか大森林まで付いて来る。無意識の密着っ子。祭りでも変形大剣も持ち歩く。酒は飲まない、そして変身するので飲ませてはいけない系。みんな気をつけて。




女戦士『黒豹の爪』

森の腕利きの大剣使い。大砦にまだ帰らず大村で哨戒任務をこなしながら祭りを満喫中。家系的に酒は強い方だがそんなに好きではない。自分より強い男が好きで、実は情熱的な女性、蟷螂雌もビックリだ。



研究軍師セリーナ

これまでぼっち研究をしていた寂しんぼ。『魔獣喰い』の事も研究している。秘術を使い『敵』の本拠地を探し殲滅をもくろむ。無意識なのに手を繋ぎ合う『魔獣喰い』と神官ちゃんを見てイガイガする。そろそろ本気を出す。




ベール王国マデレーン王女

普通に自分に接してくれる『魔獣喰い』に少し好意を持つ。友達なのか好意なのか自分でも分からない。ベール王国の第二以下の王女は、国内の侯爵以上に嫁ぐ事が可能な制度を思い出し画策する事を決意。フライング気味。2日目以降は大人しくする?




女騎士スザンナ

強さと優しさを持つ『魔獣喰い』を尊敬する。前に自分の為にマジウスが狂戦士モードの聖女に立ち向かう姿は胸キュン。騎士仲間にはモテるが恋愛には天然鈍感系。




重戦士『岩の矛』イワノフ

結婚して子供がいるので他の女に興味無し?二日酔いも朝には全回復している。



近衛騎士ヘルマン

マデレーン王女に変な虫が付かないように全力で警護する。でも気を利かせる事もたまにする。いい奴だ。酒はそんなに飲まない、そして変身するので大量に飲ませない方がいい方。



グラニス侯爵レオンハルト

本来はグラニス家に戻らなくてはいけないのに、無理やり大村に来た。祭りを堪能中。マデレーン王女とマジウスの踊りを見てニンマリする。結構な大酒飲み。二日酔いもすぐ回復。



ヴェルネア帝国司令官『赤髪』ガエル

結構女好き。でもそれより何倍も戦いが好き。つまり強い好みの女が好き。祭りは嫌いではないが飽きてきた。森の戦士で強そうな奴を物色中。かなりの大酒飲みだが『魔獣喰い』に負け一目置く。ただ強い女が好きな訳ではなさそうで、戦闘スタイルが噛み合う女性を好きそうだ。


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