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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【『魔獣喰い』18歳の女難】の章

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136/204

103羽:昔むかし 本当の話

頑丈な村の門を潜ると真っ直ぐ伸びた大通りが走り、それは小高い丘の上にある城まで続く


その大通りの両側は、この村の中でもひときわ華やかに賑わう



下界の街とは違い大商店や宿屋などはないが、それでも道端に設けられた露店では季節の果物や生鮮食料が並び、行き交う村人の空腹を刺激する



大森林の各地の村で作られ行商人によって運ばれた民芸品は、地域の特産物を使い細部まで細工をほどこし工芸に興味がある村の民の目を奪う



この屋台では大村で発行している硬貨も使えるが、村外の者の殆どは自分の獲って来た獣の肉や毛皮、特産品などと物々交換を行い欲しい物を手に入れる



最近では下界から持ち込まれた珍しい品物も人気で、特に女性用の装飾品や衣類などは、男性から意中の女性への贈り物として人気となっていた



その影響もあってか“大村”の大通りを歩く女性たちの装いは、数年前に比べて劇的に変化しており、元々オリエンタルな顔立ちと相まって賑やかな雰囲気を醸し出していた





また、屋台で売られている食べ物も変化がある



交易により下界から大量に穀物や香辛料が持ち込まれていた



それらを使った料理も屋台に登場しており、“麺類”や“発酵パン”、また“海”と呼ばれる信じられない位に大きな池で獲れた魚の保存食など、これまで森の中で食する事が出来ない物が人気を博していた



森の民は基本的には保守的な部族だが、一方で非常に合理的でもあり、効果的な物や先進的な物は積極的に取り入れる風習が拍車をかけていたのかもしない



そんな情勢もありこの大村の様子は小さい頃にオレが住んでいた頃に比べ、これまでにない位に賑やかになっていた






(随分と楽しそうな雰囲気になったんだな・・・・)



そんな事を考えながら『魔獣喰い』は、集まって来る人ごみに潰されないように城に向かっていた



その群衆の多くはオレの前を歩く『獅子姫』をはじめとする森の戦士団の英雄と、下界からはるばる来たベール王国のお姫様や近衛騎士、グラニス家の青年侯爵と護衛騎士、そして武国で知られるヴェルネア帝国の司令官の姿をひと目でも見ようという目的であった



「マジウス様、それにしても随分と活気がある“村”でございますね」



オレの右側をピタリと歩く聖女エレナは、初めて見る森の民の熱狂ぶりに少し戸惑いつつも感動していた



「前はこんなんじゃなくて、もう少し落ち着いていたんだけども・・・・下界からの物は色んな意味で刺激が強すぎたのかもしれないね。でもこの部族は一度認めた相手に対しては、直ぐに心を開く人たちばかりだから緊張しなくて大丈夫だよ」



つい先日まではお互いに剣を交わしていたヴェルネア帝国人やイスラマ神聖皇国人であろうとも、戦が終わればいがみ合いそこで終了だ



正面からぶつかり合った者同士、連帯感や理解感で何の遺恨も無く彼らは大歓迎している




「そうですか、それは安心しました。あと、後ででもいいのですが、精霊大神官様にもご挨拶をして色々とお話を聞いてみたいと思いますので、レティーナ様よろしくお願いします」



熱狂的で信仰心の強い聖女エレナは、森の中で広く信仰されている精霊について興味があり、レティーナなこと精霊神官ちゃんに道中も色々と聞いていた



(こうして話をしていると聖女様も本当に普通の女の子だよな・・・・あの時の戦場での豹変ぶりは幻だったのだろうか・・・・)




そう思いながらも聖女エレナの左手を見ると、布でグルグルに巻かれた鉄塊を軽々と手にしている



(アレは明らかにあの時の変形大剣だよな・・・いや、気にしないようにしよう)



今はこうしてわざわざ大村まで来てくれた大切なお客様だ




「・・・分かりました、一度お城にご挨拶に行った後、大神官様の所にご案内します」



少し間があり答えるのは、オレの左脇にこれまでにない位に密着して歩いている精霊神官ちゃんだ



オレの隣でピッタリ付いて来た聖女様にどこか対抗しているようでもあった



(どうしてこんな事になったのか・・・でも、そんなに密着したら胸の感触が腕に当たってしまって・・・)



左右から聖女様と神官ちゃんに挟まれた格好になっていたオレは、両腕に感じる柔らかい感触に鼻の下を伸ばし思わずデレデレしてしまう



(まさに天国・・・)




ガツッ



その幸せの時間も束の間、目の前にキラキラな星が飛び出すくらいの衝撃を、後頭部に突然食らう



「いてて・・・」



見るといつの間にか後ろに回り込んでいた獅子姫ちゃんが、刀の鞘で突きを食らわせてきたのだ



「鼻の下を長くして何をボーっとしているのじゃ。お前は私と一緒に父上に今回の事を報告すると言っていただろう」



怒りつつも少し戸惑っている様な表情で、獅子姫はオレの手を強く掴み城の方へと急ぎ足で進む



(ああ・・・オレの束の間の幸せが離れていく・・・)



後方に置いていかれる聖女様と神官ちゃんを横目に、オレはしつけの悪い飼い犬の様に獅子姫ちゃんに引っ張って行かれる



しかし、その手と手はしっかりと握られたままだ



(・・・・獅子姫ちゃん、剣ダコができて少しゴツゴツしているけど、柔らかくてしっとり感の手の温もりで気持ちがいいな・・・・)



見るように見たら、手を繋いで仲良く歩いている若い男女二人



まさに“デート”だ



(こうして二人で歩くのは久ぶりだな・・・・ここ一年位はお互いに離れた所にいたし・・・・)



久しぶりに間近でちゃんと見る獅子姫の横顔は、相変わらず健康的で美しい



適度に日焼けして所々露出している肌は、艶やかであり太陽の光を反射し眩しく輝いている



少し吊り上がった目は長いまつ毛におおわれ、まるで王宮貴婦人の様な気高さもある



胸はそんなに成長してはいないけど、細くくびれた腰とキュッと上がったヒップラインは絶妙なラインをかもし出しだす



(これでもう少し大人しければ最高の美女なんだが・・・・でもこの活発なところがまた彼女の人を惹きつけて止まない魅力なんだろうな・・・)




そんな事を考えながら、ついつい目線が胸元にいきまた顔が緩んでしまう



ゴフッ



その瞬間、今度はみぞおちに鞘が食い込む



(ああ・・・)



オレは若干意識を飛ばし朦朧もうろうとしながら城へと向かうのである






頑丈な“鉄木”の城壁に囲まれた城門を潜り、中庭を進み目的地である本丸へと進む



後ろの方では初めてここに来る『赤髪』ガエルや聖女エレナが、物珍しそうに城内を見渡す



やがて厳重な警備の中を過ぎ、いつもの応接室へと通されしばらく待つ



応接室の中には

『魔獣喰い』ことオレをはじめ、

獅子姫

神官ちゃん

女戦士『黒豹の爪』

研究軍師セリーナ

重戦士『岩の矛』


ベール王国マデレーン王女

近衛騎士ヘルマン


グラニス侯爵レオンハルト

女騎士スザンナ


ヴェルネア帝国司令官『赤髪』ガエル


イスラマ神聖皇国『聖女』エレナ

の大所帯だ



廊下に人の気配がして誰かが入って来る



部屋の中にいる全員に緊張が走る



予定通りにこれから入って来るのは、この大森林の全ての村を総べる王者であり、部族最強の戦士『獅子王』だからだ



応接室の扉が開き中に入って来る



(あれ・・・)



その姿を見てオレは思わず声を出しそうになった



中に入って来たのは以前の筋肉隆々な王ではなく、少しやせ細っていた『獅子王』だったからである







「・・・・」



何となく、部屋の中に気まずい沈黙が広がる





「それでは話を聞こうか・・・」



その沈黙を破ったのは、声量は少し小さくはなってはいたが、依然と変わらぬ威厳とハリのある声の『獅子王』本人だった



その声と共に話が始まる



まずはマデレーン王女が、このたびの戦でベール王国の窮地を救ってもらった多大なる支援に対する感謝を述べる




青年騎士レオンハルトも同じく感謝を述べ、グラニス侯爵の当主としてこれからも森の民との末長い協力体制を誓い合う




また『獅子王』に初めて謁見する『赤髪』ガエルは、これでの猪武者なイメージと違い、ヴェルネア帝国の正礼をもって挨拶をする



『聖女』エレナはイスラマ神聖皇国の一国民として、今回の戦の皇国側の経緯を説明した



そして、獅子姫と女戦士『黒豹の爪』、研究軍師セリーナ、重戦士『岩の矛』がそれぞれの視点で今回の戦の戦況を伝える



前の人に全てを言われ、オレの出番はなかった






「そうか・・・」




話を静かに聞いていた『獅子王』は少し目をつむり、決意したように語りだす




「皆の者、心して聞いてくれ・・・・」



意を決した『獅子王』語ってくれたのは次のような昔話だった




―――――――――――――――――――


遥か遥か大昔


この大陸に大きく多くの『魔』が湧いた


その強き『魔』は大陸中の民を恐怖に陥れ、人々は抵抗も虚しく『魔』に滅ぼされようとしていた


しかしその時


大陸中の各部族の勇者達が勇敢にも立ち上がり、力を合わせ『魔』に立ち向かう


森の民、山の民、海の民、風の民、地の民、そして下界の民


多くの戦士が命を失いながらも激しい戦いの末に、ついに『魔』を元の湧きい出てきた穴に封じ込める


その魔穴を封じ込めるように、“眠りと封印”を加護する精霊神によってこの大森林が誕生し、“森の戦士”はそこを守る為に大村と城を築く


精霊神は森の戦士たちに、少しずつ湧きい出る小さな『魔』に対抗するために『精霊の祝福』を与え、末長く森を守護するようにした



―――――――――――――――――――――



これは大森林の民なら子供の頃に嫌というほど気かされた昔話である



(なぜ今更こんな話を・・・・)



そう思うオレを心の中を察したのか、『獅子王』は話を続ける




この昔話は本当にあった実話なのだ、と



そして、長すぎる周期の中で“封印”の力が弱まった今、また『魔』が大陸中に溢れ出す『魔の刻』が起こり恐怖の支配する世界が訪れる、と



それは近々かもしれないし数年後になるかもしれない



対抗できるのは各部族・各国の戦士達であり選ばれた勇者であるのだ、と





『獅子王』の事は言葉少なく簡潔だった



しかし、それだけでこれから起こりうるだろう現実が、生半しく想像できた



(帝国やベール王国、皇国で“魔素”と“魔獣”と“敵”が現れたのはそれに関係しているのだろうか・・・これまでは小規模な出現だったけど、あれが本格的に大陸中に現れたら大混乱どころの騒ぎじゃなくなるな・・・)



オレは応接室の中で『獅子王』から聞かされた話を聞きながら、先日の騒ぎを思い出しゾツとする






「実はこの事は以前から『獅子王』様から調べるように頼まれていた事なのだ・・・・・私が今まで調べたところによると『魔の刻』は事前に防げるのだ」



獅子王の話が終わると森の研究軍師セリーナが静かに語りだす



「しかし、その防ぎ方は情報がまだ少ない為にまだ分からないのだ。大陸各地の国や教会が所有する秘蔵書を調べたら、何とか手掛かりが掴めると思うのだが・・・・」



セリーナはそう説明しながら応接室の中にいた一同の顔を見渡す




「その話が本当なら大変な事態です。セリーナ、もちろんベール王家は書物の解読をはじめ全面的に協力いたします」



ベール王国マデレーン王女が華やかな振る舞いをしながら、強い意志を持った瞳でセリーナに答える



少し前までは自由気ままでワガママな少女だったが、数々の経験を経て目の前にいるのは王国を代表する立派な要人だ







「オレのいる帝国の皇帝は、残念ながらそこまで全面的に協力は出来ないだろう。だが、オレんところのアベルや、皇子であるネロ殿下あたりはそういうのが得意だ。またあの“大盾野郎”とやれるならオレらも全面的に協力するぞ」



帝国の東西南北の四大軍のひとつを司る東部方面軍司令官のガエルは、獰猛でありながらも人懐っこい笑みを浮かべセリーナに言葉を返す



四方に敵を抱える帝国は確かにそれどころではないのだろう



ただそんな中でも、帝国の大貴族の御曹子である『弓公子』アベルや、皇帝の実子である槍の達人ネロ殿下の協力があるならば、帝国秘蔵品も閲覧する事なら可能だろう



まして帝国は“魔獣”の被害を受けており、その対応策は喉から手が出るほど欲しいだろう







「セリーナ様のご存じだと思いますが、皇国最大都市の“皇都”にある“大聖堂図書館”は大陸随一の書物量を誇ります。私も個人的に協力いたしますが、マリオ様ならセリーナ様の願いを断る事はないだしょう」



イスラマ神聖皇国で“聖女”と呼ばれた少女エレナは、慈悲を込めた笑みを浮かべ優しくセリーナに語り掛ける



大陸最大国家であり歴史ある皇国の“大聖堂図書館”といえば、この世界の歴史と知識が全て書物化されたと言われるほどの書物量だという



更にセリーナの実兄あり時期教皇候補のマリオが全面的に協力してくれるというなら、これ程力強い事はない



何しろ天才軍師セリーナをして、マリオの知識は規格外でずば抜けて優れているという




「皆さんご協力ありがとうなのだ。まずは各国で書物や公口伝を調べまとめて、定期的にどこかに代表が集まり具体的な今後の対応策を皆で協議していくのだ」





これまで森の中のたった一人で研究室に籠って対策を練っていた少女は、各国の要人の協力的な発言に普段は見せないような明るい笑顔を浮かべる





「さて、話は決まったようじゃの。それなら後は各人この大村をゆっくり堪能していってだされ。明後日からは大精霊祭りも始まるので美味い酒と料理を期待しておれ」



話の行方を見守っていた獅子姫は、父親である獅子王に目で合図しながら話をまとめる



(そうか、あれからもう一年経つのか・・・・)



オレは年に一度の年越しの時期に行われる森の祭り“大精霊祭”が、間近に近づいていた事を思い出す



(去年はこの中だと・・・・マデレーンちゃんと近衛騎士ヘルマンが来客として祭りに参加していたけど、今年は賑やかで楽しくなりそうだな)




普段は質素な生活をおくる森の民だが、年に一度のこの祭りの時は飲んで歌って騒ぐ楽園のような週間だ




酒の味が今一分からない『魔獣喰い』の唯一の楽しみは、もちろん屋台の“食”にある



(神官ちゃんに負けないように全種類を制覇しないと・・・)



先程まで世界の危機を心配していたが、食べ物の事を考えたらすぐこれである






こうして大村では、またもや下界からの来客を交えて祭りが始まるのであった







これまた人物が多く登場するので簡単に紹介します




『魔獣喰い』マジウス

森の弓戦士。まさかのモテキ?到来に鼻の下を長くする



獅子姫

森の大族長の娘で凄腕の剣士。デレデレする『魔獣喰い』を見てツンツンする



精霊神官ちゃん

突如現れた密着系の聖女様に対抗心?を燃やす



イスラマ神聖皇国『聖女』エレナ

『魔獣喰い』の洗脳波?浴びたせいか大森林まで付いて来る。歩く時ピッタリくっついてくる。でも危険な変形大剣も持ち歩く




女戦士『黒豹の爪』

森の腕利きの大剣使い。ニヤける『魔獣喰い』を見ていると(軟弱な・・・)と思う



研究軍師セリーナ

これまでぼっち研究をしていた寂しんぼ。『魔獣喰い』の事も研究している。




ベール王国マデレーン王女

普通に自分に接してくれる『魔獣喰い』に少し好意を持つ。友達なのか恋なのか自分でも分からない



女騎士スザンナ

強さと優しさを持つ『魔獣喰い』を尊敬する。前に自分の為に、狂戦士モードの聖女に立ち向かった姿に胸キュン。




重戦士『岩の矛』イワノフ

結婚して子供がいるので他の女に興味無し?



近衛騎士ヘルマン

マデレーン王女に変な虫が付かないように全力で警護する。恋愛については不明



グラニス侯爵レオンハルト

本来はグラニス家に戻らなくてはいけないのに、無理やり大村に来た。恋の目的あり?



ヴェルネア帝国司令官『赤髪』ガエル

結構女好き。でもそれより何倍も戦いが好き。つまり強い好みの女が好き







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