始まり~大学3年生 No2~
すみません、少し長すぎてしまってだらけているように見えたので分割しました。
今後登場人物紹介しないといけませんね。
「教授、入ります。」
シゲはその場にいたのかと言わんばかりに向こう側から勢いよくドアを開けた。俺ら側に開くドアだったら怪我しているぞ。
「本当に連れてきてくれたんだ、さすが江田さんだ!約束通り評価は上げるよ。感謝するよ、ありがとう。」
なぜこんなに興奮してるんだ、と思って俺はじっと立っていたら今度はこっちに視線を向けてトーンが下がった声で話し始めた。
「やっと来たか、朝にメール送ったのに今来るとは、お前は俺を舐めてるな」
いつもこんな調子だ。女性の時にはトーンがひとつ上がるくせに男の場合にはこういう口調である。悪気はなく冗談っぽく言っているので俺も皮肉で返す。
「俺にとっては今が来るべきかなと思いまして、朝ですと授業があるのかと心配で来れませんでした。」
シゲは鼻で笑って、とりあえず入れよ、って言って俺と沙織が入ろうとしたが、ドアの境界線をまたぐと同時に
「江田さんはもう帰っていいよ、というか、三浦とサシで話したいんでね。」
沙織は、口を膨らませながら、はぁいってふてくされながら鷹士じゃあね、って言って来た道を戻って行った。
俺は挨拶をして研究室の中を見渡した。
俺は久々に研究室に来たが、正直これほどに汚くなっているとは思わなかった。
乱雑に置かれた参考書やら辞典、机の上には無数のプリントに飲みかけのコーヒー(プリントにコーヒーが少しかかっている)、黒板にはいくつかの公式やスケジュールが書いてある、テーブルの隣の棚に電気ポッドがあり、その隣にはカップラーメンやお茶など食料まである。段ボールが山積みにされていて肩がぶつかると、崩れそうだから気をつけて歩く。隅っこにはゴミ箱があるが、ごみであふれている。横にはパンパンになったゴミ袋が置いてある。こいつはここに生活しているみたいだ。
「よく来たな、とりあえず座って。」
客を迎える時に使うソファーやテーブルはすごくきれいにしてある。こういうところはしっかりしているって言うか、お客様には迷惑かけてないな、思ってしまう、ぃやかけてるかな。俺はソファーに座りながら言った。
「んで、用ってなんですか、俺は早く帰って後場をやらないといけないんですが。」
今日はオンライントレードをするつもりがないが、早く帰りたいので若干面倒くさい風に出されたお茶をすすりながら言った。俺は週3、4回オンライントレードしている。センスがあるのかバイトをする必要がないくらい儲かっている、というより普通の社会人より儲けはいいんじゃないか。
「相変わらずだな、聞きたいことがあるんだ。」
「なんですか?」
コホンと意味のない咳払いをしてシゲは言った。
「大学は楽しいか?」
「まぁ、やることはやりましたし、楽しい楽しくないかは別として退屈になりましたね。」
俺は熱いお茶をテーブルに置いて、テーブルの模様を見ながら言った。そうか、とシゲは想像していた通りの回答をされて考える素振りもなく言った。
「残りは俺に提出する卒論だけだろう、ならばその卒論を今までにないようなものを作ろうとは思わないか?」
は?と思い、シゲの目を見た。若干光っているように見える目は相当なことをたくらんでいる目だ、何たくらんでんだか。いつもこの目をする時は何を言っても意見を曲げず、その思っていることは、ほぼ確実に決行される。
「なんすか?くだらないことだったら怒りますよ?」
内心、ちょっと楽しみだったが、興味を示すと焦らしてくるのでそれが嫌なので興味がない風に示した。そのおかげでシゲはすんなり話した。
「高校に行かないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
俺は何を言っているかわからなかった。少し考えて、何だ、と思って心底つまらない風に
「俺が先生をやれってことか?」
と言った。そしたら、シゲは笑いながら言った。
「違う、生徒としてだ。」
ニヤッ、と笑いながら怪しく光っている目を見た。続けてシゲは
「最近の子供は何を考えているかわからねぇ、犯罪軽く考えている。俺は他人には迷惑かけることは許さん。その調査として生徒として潜入捜査してくれ。無論、あんたは生徒として精一杯楽しんでくれて構わない。お前は童顔だし、ヘマしなければ、ばれることもないだろう。」
さすがに俺は動揺した。
「ちょ、ちょっと待てよ。唐突過ぎて言いたいことがたくさんある。まず、そんなことして大丈夫かよ、教師にはばれるだろ。次に、俺は自分で言うのも何なんだが、城早大学奨学金もらっているから割と有名な気がする。次に・・・」
シゲが覆いかぶさるように言ってきた。
「三浦が思うすべての問題は解決してある。行く学校は校長に事情を話したら喜んで受け入れてくれた。次、お前の顔は東京じゃ知られているが、せいぜい関東までだ。つまり大阪ならば知ってるやつもいない。とりあえず、これは決定事項だから変えられん。見た目も問題ないし、成績も何も問題ない。夏休みに入ってから大阪に一人暮らしをしてくれ。早く行きたいならそれでもいい。家はもう既に契約済みだ、部屋が気に入らなければ変更もきく。お金の心配ならいらん、大学が全面バックアップするからな。詳しい話はまた連絡するから今日はもう帰っていいぞ。」
俺は何も言うことが無くなってしまった。というか、何も言う暇がなかった。
昼休み終了の合図のチャイムはもうとっくに鳴り終わっている。話す事が終わったらもう用はないと既に次の授業に行ってしまった。とりあえず、汚い研究室を出て授業も無いので、ため息をつきながら誰もいない長い廊下を外に向かって歩いた。
研究棟から外に出てきれいな木々の下で授業がないのか、ベンチで横になって昼寝をしている生徒や本を読んでいる生徒がちらほらいる。
昼休みと違い、静かな空気が流れていて確かにここでの昼寝は格別だろうなと思った。そうやってのんびり時間を過ごしている人を見ながら俺は最初ぶつぶつ何で俺が、と文句を言いながら歩いていたが駐車場の警備員に挨拶をして、自分の単車の前に立ち、キーを差し込んだ時にふっと思った。
もしかしたらこれは結構面白いことになるのかもしれない。自分が高校生になりきることで期間は短いが高校生活を送れる上に授業だって適当に受けてもすべてわかるし、自分にとってなにもデメリットが存在しない。しかも、一番うれしいのは今現在苦痛となっている『退屈』をしないということだ。そう思うと、だんだん楽しみになってきてしまう。
ヘルメットを被り単車に乗ってこれから起こる事に期待をして外に出て自然の多い大学を後にした。
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