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鬼火 第9話

「その仮説を証明できるか?」


 拓哉の一言に、綾乃は言葉を失った。


「それは……。」


 頭の中では理屈は組み立てられている。


 だが、それを裏付ける証拠がない。


「……すみません。」


 綾乃は悔しそうに俯いた。


 部屋に重い沈黙が流れる。


 その時だった。


「その話、少し面白そうね。」


 聞き慣れた女性の声が部屋の入口から響いた。


 拓哉と綾乃が振り向く。


 そこには白衣姿の茉里が立っていた。


「茉里?」


 拓哉が驚いたように声を上げる。


 茉里は資料の入った封筒を軽く持ち上げながら微笑んだ。


「科学警察研究所から直行よ。」


「鑑識結果を整理していたら、ちょっと気になることが見つかったの。」


 そう言って部屋へ入り、机の上へ数枚の資料を広げる。


 拓哉は腕を組んだ。


「わざわざ来るなんて珍しいな。」


「何かわかったのか?」


 茉里は首を横に振る。


「まだ決定的な証拠じゃない。」


「でも、一つの仮説なら立てられる。」


 綾乃は顔を上げた。


「仮説……ですか?」


 茉里は頷く。


「さっき廊下で聞こえちゃったんだけど。」


「あなたの"高周波"という考え方。」


「私は十分に検証する価値があると思う。」


 綾乃は思わず目を見開いた。


「本当ですか?」


「ええ。」


「もちろん、現時点では推測にすぎない。」


「でも、鑑識結果と照らし合わせると、説明できる点がいくつかあるの。」


 拓哉は興味深そうに資料へ目を落とす。


「続けてくれ。」


 茉里は焼損データのページを開きながら静かに言った。


「もし私の考えが正しければ、この事件は"火"を調べても解決しない。」


「調べるべきなのは、炎を生み出した"見えないエネルギー"よ。」


 その言葉に、部屋の空気が静まり返った。

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