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鬼火 第7話

 拓哉と綾乃が資材置き場へ駆けつけると、現場はすでに規制線で囲まれ、

 鑑識による調査が始まっていた。


 白衣姿の茉里は、防護手袋をはめたまま、焼け焦げた資材を慎重に採取している。


「茉里。」


 拓哉が声を掛けると、茉里は振り返った。


「今日は早いじゃない。」


「そっちこそ。」


 拓哉は焼け跡へ視線を向ける。


「どうだ?」


「放火の可能性はあるか?」


 茉里は焦げ跡を見つめたまま、静かに首を横へ振った。


「今の段階では断定できない。」


「でも……普通の放火とも少し違う。」


「違う?」


 綾乃が聞き返す。


 茉里は地面を指差した。


「可燃性の液体を撒いた痕跡は見つからない。」


「着火装置らしいものもない。」


「それなのに、この一点だけが異常な高温で焼かれているの。」


 拓哉はしゃがみ込み、黒く変色したコンクリートへ目を向けた。


 焼けた範囲は驚くほど狭い。


 まるで、炎がそこだけを狙ったかのようだった。


「前の現場と同じだな……。」


 拓哉は小さく呟く。


 脳裏には、克己の言葉がよみがえっていた。


 ――青白い火を見たら、気を付けろ。


 拓哉は無意識に工場の奥へ視線を向ける。


 昼間だというのに、建物の奥だけが妙に薄暗く見えた。


 綾乃は茉里へ尋ねる。


「詳しい鑑識結果は、いつ頃わかりますか?」


 茉里は採取した試料をケースへしまいながら答えた。


「早くても明日の夕方ね。」


「ただ、この現場……少し気になることがある。」


「気になること?」


「焼け跡から、ごく微量だけど通常の火災ではほとんど検出されない金属粒子が見つかっているの。」


「まだ断定はできないけど、前の現場でも同じものが検出されていたら、

 この事件は全部つながるかもしれない。」


 拓哉は静かに立ち上がった。


「……科学か。」


 それとも――。


 彼の頭の中では、克己が語った"鬼火"の噂と、茉里が示した科学的な異常が、

 一つの線になり始めていた。

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