表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/40

鬼火 第6話

「……なんで、その工場を知っている?」


 拓哉は思わず足を止めた。


 携帯電話を握る手に、自然と力が入る。


 電話の向こうでは、克己が小さく笑った。


「業界じゃ、昔から有名なんだよ。」


「建った頃から、妙な噂が絶えない工場でな。」


「噂?」


「ああ。」


 克己は少し間を置いて続ける。


「夜になると、誰もいない場所で青白い火が揺れる。」


「その火を追いかけた者は、二度と戻ってこない……そんな話だ。」


 拓哉は苦笑した。


「怪談話か。」


「お前らしいな。」


「信じるかどうかは、お前次第だ。」


 克己の声が少しだけ真剣になる。


「だが、その工場だけは油断するな。」


「……嫌な予感がする。」


 そこで電話は切れた。


 拓哉は携帯電話をポケットへしまい、小さく息をつく。


「幽霊、か……。」


 もちろん信じてはいない。


 だが、これまでMファイルで経験してきた事件は、常識だけでは説明できないものばかりだった。


 その時だった。


 工場の奥から、鋭い叫び声が響く。


「火事だーっ!」


「誰か来てくれ!」


 拓哉は反射的に声のした方向へ駆け出した。


 資材置き場には工場の作業員たちが集まり、騒然となっていた。


 現場の中央では、木製パレットの脇に積まれていた資材が青白い炎を上げて燃えている。


 しかし周囲には、火種になるような機械も配線もない。


 作業員の一人が震える声で呟いた。


「誰も……火なんて点けていない。」


「なのに、突然燃え始めたんです……。」


 拓哉は燃え上がる炎を見つめた。


 その炎は、普通の炎とはどこか違っていた。


 一瞬だけ。


 青白い光が、まるで生き物のように揺らめいた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ